「私は天に帰る/美しいこの世での遠足が終わる時/天に帰って美しかったよ、と言うつもりだ…」(千祥炳『帰天』最終節)
誰もが来たところに帰る。富める者も貧しき者も、賢い者も愚かな者も、遠足を終えて帰る。千祥炳(チョン・サンビョン)詩人のように、美しかったと言えれば充分だ。死は胸が痛み恐ろしくつらいことだが、結局残った人々の役割だ。
高齢化時代を迎えて、人生をよく終える“ウェル・ダイイング”に対する関心が高まった。落ち着いて人生を省察し、整理すべきことを整理して、自身が死んだ後の処理まであらかじめ選択しておくことだ。身のまわりをきれいに整理して、遺影や葬儀の方式を自分で選び、死後に親族や知人に送る手紙をあらかじめ作成しておいたりもする。
土葬か火葬かの選択は、死を控えて本人が選択可能な代表的な葬儀手続きだ。土の墓に残るのか、納骨壷に残るのか、はたまたひと株の木に残るのか。
火葬はすでに主流になって久しい。保健福祉部の資料によれば、1994年には20.5%に過ぎなかった火葬率が、2004年に49.2%となり半分近くに増え、2016年には82.7%を占めた。火葬が普遍化して、奉安堂(納骨堂)や、樹木葬などの自然葬方式や施設も多様化した。特にこのような施設が亡くなった人だけのための空間から、残った人々に配慮する方向に変わっている点が目を引く。従来の奉安堂・樹木葬施設は、故人の安息のための施設という点に重点を置いていて、訪問客のための配慮は少なかった。重くて怖くて居心地悪く思われた追慕空間が、旅立った人を記憶し、気楽に休み、傷を癒やすための休息・治癒(ヒーリング)空間に変わっているわけだ。
3月23日、京畿道城南市(ソンナムシ)盆唐区(ブンダング)野塔洞(ヤタプドン)の松坡(ソンパ)公園にある「奉安堂ホーム」を訪ねた。盆唐メモリアルパーク(旧南ソウル公園墓地)内に最近新しく生まれた奉安堂施設だ。マンション団地を縮小したような12個の巨大な円形の塔が異彩を放つ。エレベーターが設置されたタワー型奉安堂だ。本館2階のロビーは、高級ホテルのロビーや、伝統的なカフェの雰囲気だ。さらに目を引くのは、丸い本棚に陳列された本と、どことなく奥ゆかしい装飾だ。あたかも図書館や広い書斎にいるような雰囲気だ。昨年末、非営利財団法人「松坡公園」が披露した奉安堂“ホーム”だ。
「世界初の書斎型奉安施設です。従来の奉安堂の固い雰囲気、画一化された形式から抜け出して、遺族にとって気楽で身近な雰囲気になるよう考えて作られた施設です」(松坡公園ノ・サンミョン課長)
本棚型奉安檀(安置棚)には「空から風の中で」などのタイトルがついた厚い本が並んでいる。革装洋書形態の遺骨箱と遺品箱だ。従来の奉安堂の“ガラスの壁の中の遺骨壷”とは異なる形式だ。故人の生涯を一冊の本で表そうという意味だという。故人一位ごとに二冊の本、つまり遺骨箱と遺品箱が提供される。遺品箱には故人の写真、故人の手垢のついたメガネ・ペン・携帯電話・指輪などの遺品と、故人が生前に残した文、故人に伝えたい手紙を書いて入れるようにした。鍵は遺族たちが保管して、訪ねてくればいつでも開けてみることができる。
本館建物には無料のカフェが用意されている。茶を受け取り各所に配置されたテーブル・椅子に座り、心静かに故人の記憶をたどれるようにした。カバン・ワイン・楽器が展示された小さな店のような陳列台もある。訪問客のために、常に展示物を変えて披露する。
故人を迎える施設が、後に残った人のための休息場所に変わる姿は、最近急速に普及している樹木葬林でも見ることができる。
木の下に故人の遺骨を埋める樹木葬は、遺骨を埋めて芝で覆う芝葬、花畑で飾る草や花の模様の花草葬、岩の下に埋める岩葬などと共に自然葬に分類される。1993年スイスで始まり、世界各地に急速に広がっている。名札の他には石造物や立て札などのものを無くすなど最小化する。遺骨箱も土で作ったり(土器)、木や不織布で作って時間の経過で故人と共に土に返るようにするエコロジカルな葬儀法だ。全国の自然葬施設は、2011年の37カ所から2016年には106カ所に、5年間で3倍近く急増した。
樹木葬に対する認識も変わった。2014年高麗大学産学研究団の調査によれば、韓国国民が葬儀の方法で最も好むのは樹木葬(44.2%)であり、納骨(奉安)が37.0%で後に続いた。好む樹木葬の位置として、自然風致林(自然景観が良い森、55.1%)を最も多く挙げ、都市近郊(19.2%)、縁故地(16.3%)を大きく上回った。自然の中に帰りたいという欲求を反映していると見られる。
樹木葬林として代表的なところが、山林庁傘下の韓国山林福祉振興院が運営する京畿道楊坪(ヤンピョン)の「国立天の森追慕院」だ。国内唯一の国立樹木葬林だ。全体で55ヘクタールの敷地に48ヘクタールの樹木葬林を備えた。追慕樹に指定されたのは松・五葉松・アベマキ・山桜・ミズキなど合計6315本だ。このうちの4000余本はすでに入居しており、残りの約2000本を家族木と共同木として分譲中だ。入居費(15年利用)も安く、共同木が木と位置により71万1000~73万5000ウォン(約7万円)、家族樹は220万5000~232万5000ウォン(約22~23万円)だ。当初の契約期間は15年だが、3回まで延長可能で、最長60年まで利用できる。
開院の時期により11の区域に分かれた天の森追慕院は、遺族が自然に返った故人を記憶し自然の中で思う存分休み、遊んで行くことができる自然林公園というに値する。うっそうとした森につながる散歩道、マンテンバイクコース、キャンプ場(3.6ヘクタール)まで備えた休養林だ。昨年からは春季に国立天の森追慕院キャンプフェスティバルも開いている。健康、ヒーリングが注目される時代に歩調をそろえ、樹木葬林を訪問客のためのレジャー空間として開放したのだ。遺族たちは故人を追慕し森も楽しむ一石二鳥の外出コースになったわけだ。
天の森追慕院が好評を得るにつれ、山林庁は2022年までに国立・公立の樹木葬林を50カ所に増やす計画だ。これらの施設にも遺族のための多様な休息施設および野外活動空間を用意することになる。まず、江原圏、大田・忠清圏、光州・全羅圏、大邱慶北圏に1カ所ずつ国立樹木葬林を追加運営し、公共機関や山林専門法人などでも運営できるようにし、樹木葬林を広める方針だ。