世界文化遺産である慶州(キョンジュ)吐含山(トハムサン)の仏国寺と、伽耶の代表遺跡である釜山市東莱(トンネ)の福泉洞(ポクチョンドン)古墳群(以上、国家史跡)が、最近周囲の高層マンション団地建築計画が確定し、景観が破壊される危機に立たされた。釜山市と慶州市が10~30階の高層アパート再開発計画を相次いで承認ないし通過させ、マンションの新築が秒読みに入った。
伽耶圏最大規模の4~5世紀墓群で世界遺産への登載を推進中の福泉洞古墳群の場合、1月25日に開かれた釜山市文化財委員会で遺跡を取り囲む福山1区域の住宅再開発事業地(面積12万2600坪)に5~32階建ての高層マンション団地建設を許容する現状変更審議案が通過したと発表された。福山1区域は、2000年代初めから住民組合が結成され、以来10余年間にわたり高層団地再開発を推進してきたが、文化財委員会と釜山市文化財委が8回にわたり開発案を否決してきた。
通過した案は、古墳群、東莱邑城など伽耶・朝鮮時代の遺跡に隣接したところは5~9階に高さを調整するものの、少し離れた背後区域一帯は32階建の建設まで可能なように規制を解くことが骨子だ。団地の場所も、市の指定文化財である東莱邑城の内側だ。このまま建設が進められれば、古墳群はマンションに囲まれて景観が蚕食された島のように孤立し、邑城址のき損も避けられないと専門家たちは憂慮する。考古学者のシン・ギョンチョル釜山大学名誉教授は「福泉洞古墳群と東莱邑城の領域は、釜山で遺跡密集度が最も高い」として「伽耶史の復元が国政課題に含まれ、古墳群の世界遺産登載まで推進中の市側が、決定的な障害物を自ら置いた格好になった」と批判した。
慶州吐含山の仏国寺も景観破壊問題の渦中に入った。慶州市は2015年、仏国寺宿泊村の前にある進ヒョン洞駐車場1万5000坪余りに14階建の高層マンション10棟(730世帯)の建設を承認(昨年8月完工)したのに続き、昨年7月、この団地の前の3900坪余りの敷地に14階建ての住宅商店複合マンション5棟(337世帯)とオフィステル1棟を作る2次事業を相次いで承認し、文化財界の反発をかっている。市はこれに先立つ2010年、自然緑地地域だった1・2次団地建設用地を特別な理由もなく、美観地区指定をせずに高層建物の新築が可能な一般商業地域に用途変更した背景をめぐり、疑惑が起きてもいる。
再開発の場所は仏国寺から直線距離で820メートル離れたところだ。進入路から見れば、1次団地のマンションが吐含山の景観を正面から隠す姿を見ることができる。これと関連して慶州古都保存会は1月に声明を出し「慶州市は違法な土地用途変更の真相を明らかにせよ」として「監査院、行政安全部、慶尚北道は、市側の土地用途変更と高層許可に対する行政監査を施行せよ」と要求した。保存会側は、当局が対策を出さない場合、ユネスコ世界遺産委員会に助けを要請する方案も検討している。
慶州市と文化財庁側は「建築審議など適法な行政手順を踏んでおり、国家史跡の境界から500メートル以内を歴史文化環境保存地域に指定した文化財保護法にも反していない」という立場だ。しかし、イ・ジョンナク慶州古都保存会長は「指定文化財の境界から500メートル外で工事をしても、文化財に影響を及ぼすことが確実だと認められれば500メートルを超えて範囲を定めることができる文化財保護法の規定により、当局が積極的に景観のき損に対応しなければならない」と指摘した。学界では、ユネスコが眺望景観の保存を世界遺産登載維持の重要条件として規定しており、乱開発が度重なれば仏国寺の世界遺産の地位が揺らぎかねないという見解も出ている。