平昌冬季五輪を契機にした南北関係の復元に向け、南北が足取りを速めている。板門店(パンムンジョム)連絡チャンネル復元はその最初の成果だ。さらに、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長が自身の新年の辞に対する文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「後続対策作りの指示」を高く評価し、会談実務対策を早急に樹立するよう指示したことで、今後の南北関係の改善に対する期待感はさらに高まった。
今月1日に金正恩委員長が新年の辞を発表してから、北側の動きは南側の反応と徹底的に歩調を合わせている。リ・ソングォン北朝鮮祖国平和統一委員会(祖平統)委員長は3日、「朝鮮中央テレビ」を通じて発表した立場文で、金委員長の新年の辞に対する大統領府の歓迎論評▽文在寅大統領の支持意思の表明や実務対策作りの指示などに言及した後、これについて金委員長が「肯定的に高く評価」し、「歓迎の意を表明」したと明らかにした。北朝鮮の統一部である祖平統のリ委員長が立場文の発表に乗り出したのも、前日の南北高官級会談をチョ・ミョンギュン統一部長官が提案したことによるものとみられる。
リ委員長は同日の発表が「最高領導者金正恩同志の委任」によるものであると強調した。平昌五輪への代表団の派遣とこれに向けた当局会談、南北関係の全面復元などを新年の辞で言及した金委員長が、後続会談まで直接仕切っているということだ。リ委員長は、金委員長の指示であるとして、党中央委の統一戦線部(統戦部)▽政府祖平統▽国家体育指導委員会などが会談に向けた実務準備に乗り出すことを明らかにした。さらに、北朝鮮は会談の実務準備のために同日午後3時30分(平壌時間3時)に板門店連絡チャンネルに復帰した。2016年2月の開城(ケソン)工業団地の全面的な稼働中断以来、1年11カ月ぶりに南北連絡官接触が行われた。
北朝鮮は、韓国が提案した高官級会談について言及しなかったものの、今後の南北実務接触を通じてその形式や議題が決まるものとみられる。統一部当局者は「北朝鮮は、韓国が提案した『高官級会談』の日付や形式、議題などについては具体的に取り上げなかったが、金委員長の指示に従ってリ委員長が動いたことから、チョ長官とリ委員長を首席代表とする閣僚級会談が行われる可能性がある」と予想した。北朝鮮が祖平統▽統一戦線部▽体育指導委を言及したため、韓国側も統一部▽国家情報院▽文化体育観光部が会談に臨むものとみられる。
金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の閣僚級会談は「南北関係の神経網」と呼ばれた。長官級会談で議題を設定し、それに合わせて様々なレベルの後続協議が開かれた。リ委員長とチョ長官が会談に乗り出せば、平昌五輪への北朝鮮の参加に向けた体育会談と共に、政府が昨年7月に提案した軍事境界線上の緊張緩和に向けた軍事会談や離散家族再会のための赤十字会談などが後続会談として進められることも考えられる。
一方、北朝鮮が平昌五輪への代表団の派遣問題だけに焦点を合わせて対応するという見方もある。リ委員長が立場文で、金委員長の言葉を引用し、「平昌五輪大会への代表団派遣とそれに向けた南北当局間会談が、現在の状況における南北関係の改善に意味のある、良い一歩になるだろう」とし、「我が代表団の派遣と関連した実務的問題を論議していく」と明らかにしたからだ。この場合、協議首席代表の“格”は次官級になる可能性もある。
チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院首席研究委員は「会談の議題が一気に拡大すれば、双方の対立が明らかになり、モメンタムを維持していくことが難しくなるかもしれない」と指摘した。長期間にわたり南北関係が途絶えた状況であるうえ、金委員長の就任以降、本格的な当局会談の経験がないため、南北共に“探索の時間”が必要であるということだ。
このため、協議の初期には平昌五輪への代表団の派遣など実務的な問題に集中しながら、五輪期間中に北側が高官級代表団を派遣し、対話の地平を広げていくやり方も考えられる。ク・ガブ北韓大学院大学教授は「協議の初期から包括的合意を急ぐと、様々な焦点が一気に浮上し、対応が困難になりかねない」とし、「急がず段階を踏んで進み、南北関係修復のスピードをあげていくべき」と指摘した。