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朝米、ブレーキのない疾走「米国に戦争反対をより明確にすべき」

登録:2017-08-10 23:13 修正:2017-08-11 07:12
「朝鮮半島8月危機」に対する専門家の診断 
 
21日、韓米軍事演習の前後に 
偶発的衝突の可能性も排除できない 
北朝鮮を刺激せず、対応強度の調節が必要 
文大統領「あらゆる措置講じるよう」指示 
 
北朝鮮「グアム海上に4発打つ」と威嚇 
米「政権を破滅させる行動を中止せよ」と警告
米国市民たちが今月9日、ワシントンのホワイトハウス前で「戦争ではなく外交を」、「爆弾ではなく対話を」と書かれた紙を持って北朝鮮との平和的交渉を要求している=ワシントン/ロイター聯合ニュース

 北朝鮮と米国の刺激的な“毒舌戦争”で朝鮮半島周辺情勢に極度に緊張が走っている。専門家たちは、現在は朝米がまだ“言葉対言葉”の攻勢に止まっているが、偶発的衝突や瞬間的な判断ミスによる“行動戦”につながる可能性も排除できないと見ている。問題は衝突が現実化した際、その被害は韓国国民が被ることになるが、いまのところ、文在寅(ムン・ジェイン)政権が介入できる余地がないことになる。ひとまず米朝間の“ブレーキのない暴走”を止めるためには文在寅政権が米国に「戦争反対」の意思をより明確にすると共に、「8月危機」の頂点になる韓米合同軍事演習が必要以上に北朝鮮を刺激しないように管理するのが必要だと指摘されている。

 「朝鮮中央通信」は10日、キム・ラッキョム北朝鮮軍戦略軍司令官が9日声明を発表し、「中長距離戦略弾道ロケット『火星-12』型4発の同時発射で進めるグアム包囲射撃案を重々しく検討している」と明らかにしたと報じた。キム司令官は発表文で、火星-12型の具体的な射程距離や飛行時間に言及し、「グアム周辺30~40キロ」を弾着点として明示した。キム司令官はまた、「戦略軍は8月中旬までグアム包囲射撃案を最終的に完成して共和国の核武力の総司令官(金正恩<キム・ジョンウン>)同志に報告し、発射待機態勢で命令を待つ」と述べた。

 ドナルド・トランプ米大統領の「炎と怒り」発言(8日)に「グアム包囲射撃」声明で応酬した北朝鮮が、トランプ大統領の「核兵器使用の可能性」の示唆に続いて、ジェームズ・マティス米国防長官が「北朝鮮政権の終焉」を警告する発言をしたことに合わせて、脅威を強めることで対抗している。キム司令官が声明を発表する数時間前に、マティスの長官は9日(現地時間)、声明を通じて「北朝鮮は政権の終焉と自国民に破滅を引き起こすいかなる行動も、考慮することを中止すべきだ」と要求した。彼は「北朝鮮政権の(軍事)行動は私たちによって圧倒されるはずであり、軍備競争や北朝鮮が開始する衝突でも敗北するだろう」とも警告した。米国のNBC放送は複数の前・現職の米軍関係者を引用し、トランプ大統領が命令を下せば、グアムに配置されたB-1B長距離爆撃機を飛ばして北朝鮮のミサイル基地を先制攻撃する作戦計画を作成したと伝えた。

 朝米が崖っぷちでぎりぎりの対峙を続けていることをめぐり、国内外を問わず、懸念の声が高まっている。核保有国の地位を認めてもらおうとする北朝鮮と、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を除去しようとする米国が、現時点をそれぞれの目標を達成できる「最後の段階」と判断したものと見られるからだ。ステファン・ドゥジャリク国連報道官は9日、「現在行われている朝鮮半島の状況と関連し、アントニオ・グテーレス事務総長が非常に懸念しており、(朝米間に)対決的レトリック(言葉)が激しさを増していることについて、当惑(troubled)している」と述べた。中国は朝米両側に「発言と行動の自制」を促し、ロシアのシーリー・ネベンジャ国連大使も「北朝鮮駐在の大使館を通じて、北朝鮮当局と接触している」として、朝米対話を促した。

 今月21日から始まる韓米合同軍事演習乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン(UFG)を前後して、偶発的衝突が発生する可能性を懸念する声も上がっている。毎年北朝鮮の奇襲的南侵を想定して展開してきたこのシミュレーション訓練期間に、韓米が戦略兵器を動員して北朝鮮に武力を誇示した場合、北朝鮮も対抗する可能性があるということだ。ク・ガブ北韓大学院大学教授は「4月危機の時は、北朝鮮が無対応で一貫した。しかし、今回は北朝鮮が6回目の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射すれば、本当に(衝突状況を)迎えるかもしれない」と警告した。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院責任研究委員も「政府はこの訓練が定例の防御的演習であるという部分を強調する必要がある」とし、「訓練が強化された姿を見せて、北朝鮮を刺激することは避けなければならない」と話した。チョン・セヒョン元統一部長官は同日午前、国会で開かれた共に民主党主催の講演会で「(文在寅政権が)米国に第2の朝鮮戦争につながる軍事行動を容認できないということを示し続けなければならない」と強調した。

 より根源的な助言もある。イム・ドンウォン元統一部長官は同日午後、ソウル市庁で開かれた「新政権の対北朝鮮政策と朝鮮半島の未来」討論会で、「韓国は南北関係の改善と北朝鮮の核問題を連携させずに分離し、南北関係の改善に乗り出すべきだ」とし、「北朝鮮の核問題の本質が敵対関係であるだけに、休戦体制を平和体制に転換するため、南北米中との間の和平会談を早期に開催しなければならない」と強調した。

 一方、文在寅大統領は同日、首席・補佐官会議で「(緊張緩和のために)必要なあらゆる措置を講じるよう指示した」とパク・スヒョン大統領府報道官が伝えた。大統領府は同日午後、チョン・ウィヨン安保室長の主宰で国家安全保障会議常任委員会議を開き、北朝鮮に朝鮮半島の緊張を高める行為を直ちに中止することを強く要求した。パク報道官は「常任委は特に朝鮮半島での軍事的緊張の高まりや武力衝突がどの国の利益にもならないことを考慮し、米国など主要国との協力のもと、朝鮮半島における緊張の解消と平和の管理に向けて、必要なあらゆる措置を講じることにした」とし、「朝鮮半島問題の核心当事者である韓国政府が対話の扉を開き、現在の緊張状況の緩和及び根本的解消を向けた外交的努力を積極的に展開することにした」と明らかにした。

キム・ジウン、キム・ギュウォン記者、ワシントン/イ・ヨンイン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/806397.html 韓国語原文入力:2017-08-10 21:22
訳H.J(2763字)

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