ドナルド・トランプ米大統領の「炎と怒り」など刺激的な対北発言で波紋が広がっていることを受け、行政部の官僚たちが急いで火消しに乗り出した。トランプ大統領の発言と行政部の対北朝鮮政策の不在を批判する声も高まっている。
国務省はトランプ大統領の発言の後始末に乗り出した。国務省のヘザー・ナウアート報道官は9日(現地時間)、定例記者会見で「米国は多くの国々に支持されている(対北朝鮮)圧迫攻勢を行っている」とし、「対北朝鮮圧迫を強めている状況で、トランプ大統領も昨日この点について語った」と釈明した。
トランプ大統領の発言が対北朝鮮圧迫のレベルで出たものであり、軍事行動を念頭に置いたものではないという説明であるわけだ。レックス・ティラーソン国務長官もASEAN関連会議を終えて帰国の途に就く際、「トランプ大統領は北朝鮮の誤った判断を防ぐため、メッセージを伝えようとした」とし、状況を安定させようと努めた。
トランプ大統領の8日の発言も、即興的だったことがだんだん明らかになっている。ニューヨーク・タイムズ紙は同日、「トランプ大統領の側近たちは、彼が対北朝鮮強硬メッセージを送る計画だったという事実は知っていたが、金正恩(キム・ジョンウン)がしばしば使う終末論的な皮肉に匹敵するような脅しをかけるとは思わなかった」と報じた。
特に、同紙は、トランプ大統領が北朝鮮関連の言及をしながら机の方に視線を移していたが、彼が見た文書は麻薬性鎮痛剤の乱用問題に関した内容だったことが確認されたとし、「完全に即興的な発言」だと指摘した。
しかしこれは、いかなる側近たちもトランプ大統領にくつわをかませることができないということを立証したもので、トランプ大統領の独善と人気迎合主義に立脚した対外政策、行政部の意思決定システムの麻痺などを示すという評価が多い。英国のガーディアン紙も「トランプ大統領が即興的宣言を行い、高官らが急に介入してトーンダウンを図るのは、トランプ大統領が就任してから6カ月間繰り返されてきたこと」だと指摘した。
国務省とホワイトハウス、ホワイトハウスの参謀さえも公の場で異なるメッセージを発する慢性的な問題点も、再び俎上に上がっている。大統領就任6カ月が過ぎたにもかかわらず、現実的で調整された対北朝鮮政策がないからだ。ワシントンのシンクタンクのある高位関係者は「北朝鮮に対する軍事的脅威を除けば、オバマ政権の対北朝鮮政策である『戦略的忍耐』とあまり変わらない」とし、トランプ政権の対北朝鮮政策は「戦略なき忍耐」だと皮肉った。
また、行政部内でも対北朝鮮政策をめぐって参謀たちの意見が分かれていると、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。共和党主流の立場に近いジェームズ・マティス国防長官やハーバート・マクマスター国家安保補佐官などは、北朝鮮を強い対応が求められる顕著な脅威だと感じている。これに比べ、ホワイトハウスのスティーブン・バノン首席戦略官など、アウトサイダー出身の国粋主義勢力は北朝鮮を米中関係の軋轢の一部分として捉え、北朝鮮に重点を置く必要がないと見ている。特にバノン首席戦略官はマクマスター補佐官のような「戦争屋」の過度に攻撃的なアプローチに反対しているが、公式的な北朝鮮問題の議論から排除されているという。
もちろん、どちらも「炎と怒り」のような用語は擁護していないと同紙は伝えた。また、トランプ大統領は自分の側近よりは金正恩労働党委員長に対して好感を持っている方だという。