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破れた社会安全網…大きくなる‘解雇’悲鳴

原文入力:2009-08-27午前07:02:42
‘人を切ってみよう’構造調整 旧態 反復
失業給与 長く持っても8ヶ月…その後には‘奈落’
非正規職・女性労働者 犠牲0順位 悪循環

ファン・イェラン記者

失業給付 100万人時代 雇用政策を変えよう

①破産危機の雇用システム

#双龍自動車労組のストライキは終わったが、双龍車労働者たちの‘恐怖’は終わらなかった。正規職労働者たちは再び解雇に追いやられるかもという不安感に、失業者に押いやられた労働者たちは非正規職や零細自営業者に墜落しかねないという危機感に苦しめられている。非正規職と女性労働者たちはすでに崖っぷちで‘声なきわめき’を放っている。77日間のストライキが残したものは生産支障3100億ウォンという外形的な損失だけではなかった。<ハンギョレ>は双龍車周辺人物らを縦糸と横糸にみなし大量解雇の危機に近づいた私たちの社会雇用システムがどれほど無力なのかを覗いて見た。

←労組のストライキで工場を止めた後、83日ぶりに工場を再稼働した京畿平沢市,七槐洞の双龍自動車工場で13日午前、職員らが組み立てラインで作業をしている。 平沢/キム・ミョンジン記者littleprince@hani.co.kr

去る10日平沢市内の山の中腹に位置した亭子。双龍自動車生産部門で仕事をしていた希望退職者10人余りが一人二人と集まった。満58才定年をわずか1~4年後に控えた去る5月、自ら会社を離れた人々だ。

1969年に入社し40年間働き続け自らが成長した職場から追い出された日、ノ・某(57)氏は号泣した。リムジン車両に変形させるために盧氏が切ったセダン乗用車のように、会社は一刀のもとに2400人を切ると言った。‘年上の人が出て行ってあげなくちゃ’と考え受け入れたものの「はやく退職すれば数ヶ月分の慰労金をさらに上乗せする」という会社は退職後は全く無消息だった。「退職金を払う計画もなしで無条件に切って見ようと言った」として盧氏は悔しさを爆発させた。満30年勤続を控えて希望退職したキム・ジェドク(58)氏も「部屋を空けて荷物を全部移したが、貸し切り保証金はお金ができれば渡すという案配」と言われ苦々しいと言った。退職後二ヶ月余りが過ぎた7日になって退職金の15%をやっと支給した会社は先週退職金を全額支給した。

■構造調整は解雇の他には答がないのか?
この日会った希望退職者たちは「塗装工場籠城者のうち80%は本人が解雇対象者になった事実自体を認容できなかっただろう」と口をそろえた。双龍車から自分の足で歩き出したり追い出された‘死亡者’も、双龍車に残った‘生きている者’も会社の構造調整方案には首を左右に振った。

ストライキに参加はしなかったが管理職労働者たちが感じる不合理さも同様だ。営業部門で20年以上仕事をし、去る4月に希望退職したキム・ジョンテク(49・仮名)部長は「会社が整理解雇対象者を定める基準や原則がなかった」と話した。組立チーム所属のパク・某氏は解雇しか答がなかったのか相変らず疑問だ。彼は‘生きている者’だがストライキに参加した。人員構造調整だけを前面に掲げる会社側の解決法が不適当だからだ。他の代案もなくはなかった。労組は‘仕事場分かち合い’方案で整理解雇の代わりに一日‘8+8’昼・夜間2交代体制を‘5+5’ 3組2交代体制に変え賃金を少なく受け取るという代案を提案したが通じなかった。会社側が2646人を縮小してコストダウンするという人件費2300億ウォンを無給休職,交代組拡大などで解決するという提案も‘現実性がない’という理由で排除された。

1998年現代車1万166人,2001年大宇自動車6884人の構造調整方案を発表した時も、会社がひたすら整理解雇をゴリ押しして労組は極限闘争で対抗した。10年余りの時間が流れたが、私たちの社会は整理解雇の他に労働時間短縮や交代制改編のような労・使共生の構造調整代案を見つけられずにいる。

■社会安全網なき失業は恐怖だ!
双龍車労働者たちが77日間の玉砕ストライキを行ってまで避けたかったものは‘失業’だった。これらは‘解雇は即ち死’と泣き叫んだ。大企業の安定した働き口から追いやられるのは、低賃金中小企業や非正規職,零細自営業者への墜落を意味する。政府があたえる失業給付もこれらには‘安全弁’とは感じられない。

希望退職者のイ・某(56)氏は「会社と政府が戦いに命を賭けさせた」と話した。イ氏は先日、失業給付支給要件である求職活動証明のために松炭工団のある中小企業を訪ねてわびしさを感じたと言った。サインをお願いしたところ1時間も門の前に立たせておいたということだ。イ氏は「もの乞いする感じだった」として苦々しく笑った。それでも一ヶ月に100万ウォン以上出てくる失業給付は双龍車失業者らが唯一期待できるつっかい棒だ。だが失業給与が切れる来年初めには対策がない。転職・創業支援サービスの助けを受けて再就職に成功できるかも未知数だ。コ・某(55)氏はこの日、平沢総合雇用支援センターに行き失業給付を申請した。今後、8ヶ月間は教育に参加し求職活動要件さえ充足すれば月々120万ウォンを受け取ることができる。それでもコ氏は不安だ。センターで「55才以上は再就職が難しい」と言ったためだ。

今年初めから去る24日まで失業給与を受け取った人が制度施行以来初めて年間100万人を越えた。失業者が増加しているが、これらを保護する社会的安全網は丈夫ではない。我が国の失業給付は普通退職前賃金の30~50%余りで、3~8ヶ月受け取ればそれで終わりだ。月給の80~90%まで保証される北ヨーロッパ国家らの社会安全網とは比べものにならない。

■非正規職は気軽に使って切ってもかまわない?
早く奈落に落ちたのは非正規職だった。2002年双龍車社内下請け業者に入社したH(41)氏は溶接,機械作動する仕事をして月150万ウォンを手にしていた。福祉・賞与を含めて賃金は正規職の半分にもならない。同じチームでももう少し楽な工程は正規職、危険で劣悪な工程は非正規職が占めていた。解雇の激風にも最も簡単にさらされた。去る2004年、上海車が引き受けした時、1700人まで増えていた非正規職は2006年に500人,2008年に300人など順に切られてゆき今は300人余りだけが残った。ムッソ,レクストンなどがよく売れると人件費があまりかからない非正規職採用を増やした会社は、景気が悪くなるや真っ先に非正規職から減らした。生産量が減れば非正規職の席に正規職を転換配置し、自然に非正規職は押し出された。社内下請け業者12ヶ所の中で2ヶ業者は完全に廃業した。会社管理職幹部のチェ・ミンホ(仮名)氏は「コランドからレクストンのラインに転換配置しろというが正規職労組が同意せず会社と労組お互いの必要によって非正規職が増えた」と皮肉った。

H氏は昨年末に強制休職された後、退職書を書かずに頑張ったが去る4月結局整理解雇された。彼をはじめとする非正規職20人余りもストライキに最後まで参加したが、会社に戻ることが出来るかは約束がない。‘48(無給循環休職):52(希望退職)’という数字の中に非正規職は含まれなかった。別途の確約書で会社内の他の業者への‘就職斡旋’を約束されただけだ。H氏は「一ヶ月の失業給付80万ウォンで家族を養えるか心配」と話した。

正規職労組も強固なつっかい棒になることはできなかった。今年初めに変わったハン・サンギュン双龍車支部長執行部以前の労組は、非正規支会を設立しようとする動きに「今はその時でない」として労組設立を止めた。今回のストライキ過程では正規職労組が非正規雇用安定基金12億ウォンを出すと言ったが、社会的な反響はなかった。

大企業と中小企業,正規職と非正規職に二分化された労働市場は、大企業正規職らが非正規職を無視する決定的な理由として作用する。‘非正規職から切れば正規職の雇用は保障される’というわなに陥った正規職労組が非正規職乱用に目をつぶり、他方では非正規職の働き口を奪い取る状況が広がっている。

■消えた働き口の90%は女性の働き口!
去る11日バケツをひっくり返したように降りしきる雨脚を避けて平沢のある飲食店に双龍車社内下請け業者から解雇された50代女性3人が集まった。平凡な家庭の主婦だったこれらは子供たちの学費でもと7~10年間車体漏水を防止するシリコン作業をする双龍車生産ラインで働いてきた。月給は120万ウォン余り。チョン・ジンヒ(51・仮名)氏は「一日に自動車240~250台を処理する程に死ねとばかりに仕事をしたが正規職が受け取る学資金は絵に書いた餅で、生理休暇も顔色を伺いきちんと使うことができなかった」と愚痴った。去る4月に解雇された後、そのような働き口までが懐かしい。チョン氏はこの頃生活情報誌に目を通すのが日課だ。だが平沢で50代女性が仕事を探すことは‘空の星を取るようなもの’だ。

双龍車に通う夫を持つチ・ヨンミ(36・仮名)氏は平沢民間子供の家で保育教師として勤務し3年目だ。7才と9才になる子供たちともう少し長く時間を持とうと退勤時間が遅くなるデパートの代わりに選択した仕事だが仕事はきつい。朝8時20分に出勤し0~4才の子供数十名と一日中取り組み午後6時20分に退勤する。一ヶ月に受けるお金はせいぜい100万ウォン内外だ。市民団体ではチ氏のように世話労働をする社会サービスの働き口を増やさなければなければならないと主張するが、保育教師は平沢では‘3D’業種だ。実際チ氏の子供たちはママの世話なしで家で‘一人で’遊ぶ。‘生きている者’であった夫がストライキに参加し、最近拘束されチ氏は"夫がこっそりと借りていた” 700万ウォンで持ちこたえている。減り続ける通帳残額を見ていると気が焦る。

先月の働き口減少幅7万6000人のうち96%が女性の働き口と集計される程に経済危機以後女性たちが雇用寒波の直撃弾を受けている。

■平沢の地域経済が揺れる

‘双龍車労使大妥協,平沢経済青信号’。今でも平沢市内のあちこちには双龍車正常化を望む地域商人連合会や市民社会団体がかけたこういう横断幕がはためいている。

平沢市で双龍車が占める経済的比重は15%ほどになる。それだけに双龍車が危機に陥れば、平沢市も揺れるほかはない。労働者たちの財布が薄くなれば地域経済も萎縮する。平沢市は生活費,塾費など双龍車の労働者たちが年に840億ウォンを平沢で消費すると推定している。

双龍車と直結した協力企業等の打撃が深刻だ。双龍車協力業者のヒョリム精工キム・ジョンジン工場長は「昨年140人もいた職員が半分に減った」として「本当に無念な人々はこのように声も出せずに働き口を去っていった2・3次協力業者の労働者たちだ」と話した。双龍車本社がある七槐洞や近隣の細橋洞・東遡洞アパート団地にある飲食店,学院(塾)などは半分近くが門を閉めた。オ・ヨングィ平沢市民生安定対策団総括調整班長は「双龍車の生産が再開されたが周辺商圏がいつ生き返ることができるかは分からない」と話した。

失業者らが大挙あふれ出て零細商圏が揺れたりもする。希望退職者のキム・ジェドク(58)氏は「失業者があまりにも多く平沢の鶏肉丸焼き店の権利金と個人タクシー権利の譲受金も上がった」とため息をついた。

それでも地域住民たちは平沢が雇用開発促進地域に指定され息の根がつながるかと期待している。政府は無料で転職支援サービスを提供し、双龍車労働者と家族が受けたストレス相談を受けるようにする‘危機状況ストレス管理(EAP)プログラム’を実施している。しかし雇用開発促進地域として平沢1地域だけを指定したことは限界が明らかだ。双龍車役職員7000余人の中で平沢市に居住する人は4500人だけだからだ。平沢/ファン・イェラン記者yrcomm@hani.co.kr

原文入力: https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/373360.html 訳J.S