最低賃金が歴代最大の引き上げ額(1060ウォン<約106円>)を記録したというニュースが流れた先週末、Pさん(26)と母親のCさん(58)は苦笑するしかなかった。Pさんにとって最低賃金の引き上げは“遠い国の話”だからだ。
発達障害1級であるPさんは最低賃金の適用除外対象者だ。ソウルのある障害者労働事業場でショッピングバッグにひもをつける仕事を任されている。この仕事で彼が受け取る給料は19万ウォン(約1万8945円)で、食費と各種の税金を差し引くと、手元に残る金額は10万ウォン(9971円)前後だ。「最低賃金の引き上げで人生がこんなふうに変わるとかあんなふうに変わるとか言われても、所詮他人事だから…ニュースを見るのが辛いです」。母親のCさんがため息をついた。
時給7530ウォン(約751円)に急増した最低賃金をめぐり、「歴代最大の引き上げ額」、「歴代4番目に高い引き上げ率」など多彩な修飾語が付いてまわるが、最低賃金の適用から除外された障害者らはさらに大きな剥奪感に悩まされている。最低賃金法は「精神障害や身体障害で労働能力が著しく低い人」には、最低賃金を支払わなくてもいいと規定しているからだ。自由韓国党のキム・スンヒ議員が4月、雇用労働部から入手して公開した資料によると、最低賃金の適用を受けない障害者たちの平均時給は昨年基準で2896ウォン(約289円)に過ぎない。2012年の2790ウォン(約278円)に比べ、106ウォン(約10円)上がった金額だ。
障害者労働者に最低賃金より低い賃金を支給してもいいようにしたこの条項は、なかなか仕事がもらえない重度障害者に働く機会を与えるために作られた。しかし、障害者人権団体は「低い賃金を支給する手段として悪用されている」として、同条項の廃止を要求している。国家人権委員会は2012年、「障害者にも減額ない最低賃金を適用せよ」と勧告した。
障害人労働者に最低賃金より低い賃金を支給しようとする事業主は労働部の認可を受けなければならない。許可の件数は毎年増えている。昨年末基準で7935人に達しており、2012年の3258人に比べて2.4倍も増加した。
全国障害者父母連帯のキム・ナミョン代表は「最低賃金の大幅引き上げは国民の大多数が歓迎すべきことだが、最低賃金すらもらえない障害者たちにとっては何の影響もない。国民年金と健康保険など4大保険にも加入できない人が大多数だ。彼らがいつか両親から自立しなければならない時に、頼れるのは給料だけなのに、最低賃金にも及ばない金額しかもらえないなら、彼らの自立は永遠に不可能になる」と話した。