文在寅(ムン・ジェイン)大統領は6日、顯忠日の追悼辞で「北朝鮮」という単語を一回も使わなかった。李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政府の10年間、顯忠日追悼辞を通じて、休戦ラインを挟んで依然対峙中の北朝鮮に向けて強硬な「対北朝鮮メッセージ」を投じたのとは全く異なる姿だ。
朴槿恵前大統領は就任初年度の2013年第58回顯忠日追悼辞で、北朝鮮に向けて「朝鮮半島信頼プロセスを積極的に受け入れ、孤立と衰退の道を捨てて国際社会の責任ある一員となって南北共同発展の道を共に進もう」と述べた。特に、昨年の追悼辞では「北朝鮮政権は、核とミサイルの開発に固執すればするほど、国際社会から一層強力な制裁と圧迫に直面することになり、結局孤立と自滅の道に陥ってしまう」という強硬なメッセージを投じた。
李明博前大統領も2008年、就任後初めての顯忠日追悼辞で北朝鮮に向けて、国軍捕虜、離散家族、拉致問題に人道主義的次元で協力してほしいと促した。特に任期最後の年の顯忠日には、北朝鮮の「天安(チョナン)艦爆沈」と「延坪島(ヨンピョンド)砲撃挑発」事件以後の国外同胞青年の志願入隊が増えているとして「大韓民国の憲政秩序を破壊しようとする人もいるが、戦争が起きれば最前線で戦うという若者も多い」と強調するなど、国内の政治状況と北朝鮮を関連させもした。
二人の元大統領とは異なり、文大統領が追悼辞で北朝鮮に全く言及しなかったのは「戦争の経験を統治の手段とする理念政治、二分法の政治を清算する」というこの日のメッセージの延長線上にあるというのが大統領府側の説明だ。また、北朝鮮の相次ぐミサイル挑発などにより南北関係が梗塞した状況であることを考慮した結果という話もある。追悼辞に対北朝鮮メッセージを含めれば、朝鮮半島における戦争の再発を防ぎ、戦争の傷を克服するために朝鮮半島における平和体制構築の必要性に言及しなければならなくなるが、現時点ではそれは不適切と判断したという解釈だ。