文在寅(ムン・ジェイン)大統領が19日、新任の憲法裁判所所長候補者としてキム・イス憲法裁判官(64)を指名し、憲法裁判所は 100余日間の「所長代行状態」を脱することができるようになった。憲法裁判所はこの日「速かに後任裁判所長が内定されて安定した組織運営が可能になった点を幸いに思う」とする立場を表明した。
キム候補者は2012年に野党推薦で憲法裁判官になって以来、憲法裁内部では進歩性向が最も明確な裁判官という評価を受けてきた。キム候補者のニックネームは「ミスター少数意見」だ。2014年の統合進歩党解散決定の際、憲法裁判官9人のうち唯一人反対意見を出したのが代表的だ。当時キム候補者は「政党解散の要件は厳格に解釈して適用しなければならない。血の汗を流して成就した民主主義と法治主義の成果を毀損しないためである」として180ページに及ぶ解散反対意見を提出した。ソウル大学法学専門大学院のハン・インソプ教授はこの反対意見について「論理と所信と勇気の輝いている作品、偉大な反対者の誕生」と評価した。2014年の憲法裁の全教組労組地位剥奪決定の時も唯一の反対意見を出し、姦通罪問題、雇用性差別問題などでも少数側に立った。
この日文大統領が所長指名の背景として「憲法守護と人権保護の意志が確固としているだけでなく、これまで公権力牽制や社会的弱者保護のための少数見解を持続的に出すなど、社会の多様な声に耳を傾けてきた」と説明したのもこのような脈絡からだ。
また、3月の朴槿恵(パク・クネ)前大統領弾劾宣告時には、セウォル号惨事に言及して「国家の指導者は国家危機の瞬間に国民に対し、闇は消え得るという希望を与えなければならない」として朴前大統領が職責遂行義務に違反したという補充意見をイ・ジンソン裁判官と共に出すこともした。
光州(クァンジュ)全南高とソウル大学法学部を卒業したキム候補者は1982年に大田(テジョン)地裁判事に赴任し、以後30年間余り判事生活を送った。大学時代には全国民主青年学生総連盟(民青学連)事件に掛かり合って64日間拘禁された。彼はこれについて2012年憲法裁判官人事聴聞会で「民青学連に掛かり合った先輩に食事を提供したという理由で調査を受けて留置場へ入れられた」と説明している。
キム候補者が国会の人事聴聞会と任命同意を無事にパスすれば、一旦既存の憲法裁判官任期である来年の9月19日まで憲法裁所長職を務めることになると見られる。憲法裁判所法は裁判官の任期を6年(連任可能)と規定しているが、所長の任期に関しては何ら規定がない。文大統領が「今のところ一旦」という但書き付きで「キム候補者が残余任期の間は所長を務めることになるだろう」と説明したのもこうした理由からだ。
文大統領が現在 1人空席となっている憲法裁判官を追加で指名してその人を所長とせず、任期があまり残ってないキム候補者を指名したことを巡っては、論議が起きる余地もある。法曹界のある関係者は「キム候補者を所長に指名すれば、大統領がキム候補者の既存任期が終わる来年9月にもう一度所長指名をする機会が生じる。忠誠を要求することだという批判が可能だ」と指摘した。
韓国語原文入力: 2017-05-19 19:11