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[インタビュー]朝鮮籍も韓国入国も諦められない理由がある

登録:2016-07-06 08:03 修正:2016-07-06 08:34
入国不許可となった在日朝鮮人3世の鄭栄桓氏
在日朝鮮人3世で明治学院大准教授の鄭栄桓氏=キル・ユンヒョン記者//ハンギョレ新聞社

自分のアイデンティティ守り抜きたい
国籍放棄の強要は人権侵害

北朝鮮との交流も自らの選択
否定したい気持ちはない

故国を訪ねる私の人権を否定するだけに
韓国のために行動をしたことはない

 「私が困難を強いられるのは韓国に行きたいからです。『行かない』と選択した朝鮮籍同胞たちだっています。しかし私は両方とも求めたい。韓国も行き来し、自分のアイデンティティも守りたいですから」 

 先月28日、大韓民国への入国不許可判定を再び受けた在日朝鮮人3世で明治学院大学准教授の鄭栄桓(チョンヨンファン)氏(35)は、困惑した表情を浮かべた。

 鄭氏のような「朝鮮(国)籍」の在日朝鮮人の帰国問題は長年の争点となってきた。鄭氏は盧武鉉(ノムヒョン)政権時代の2005年から翌年にかけ何の問題もなく入国できたが、李明博(イミョンバク)政権発足後の2009年に突如、入国が拒否された。これを不服とした鄭氏は、政府を相手に行政訴訟を起こしたが、2013年12月に最終的に敗訴し、今回、再び入国不許可の通知を受けた。

 鄭氏は、慰安婦問題での日本政府の法的責任を否定する朴裕河(パクユハ)教授(世宗大)の問題の著書「帝国の慰安婦」を批判する「忘却のための『和解』」の韓国語版出版記念講演会(1日)に出席するため、先月14日に入国を申請をした。しかし、2週間後の先月28日、東京の総領事館は「旅行証明書」の発給を不許可とした。火に油を注ぐように、議論の反対側の当事者である朴氏が「(鄭氏は)韓国と北朝鮮で政治活動をした理由で訪韓を不許可にされた人だ。彼ら(在日朝鮮人)の議論が韓日和解に対する強い恐れをいだこうとするのは、そのためかもしれない」という奇妙な思想偏向論を持ち出し、問題を広げさせた。

 祖父の故郷が慶尚南道固城(コソン)の鄭氏は、朝鮮籍在日3世として今も朝鮮籍を維持している。朝鮮籍は、1952年4月に発効したサンフランシスコ講和条約により「日本」国籍が剥奪された後、日本の出入国管理法上、国籍を「朝鮮」とされた同胞(無国籍扱い)たちを意味する。在日朝鮮人の多くは、冷戦終了後に朝鮮国籍を得たり日本への帰化を選んだ。日本の法務省資料によると、2015年末現在、朝鮮籍は3万3939人になる。

 韓国社会で朝鮮籍は「南北どちらにも属さない境界人」と理解されている。こうした理解に間違いはない。「この問題は本当に説明が難しいのだけど…。(しばらく黙ってから)(韓国の)マスコミや革新系の進歩陣営では、朝鮮籍を南北に属さない人たちととりあえず規定します。しかし私が強調したいのは、私は『北でないわけではない』ということです。在日朝鮮人たちの今までの歴史を振り返れば、北朝鮮と少なからぬ縁を持ちながら生きてきたし、私は(高校まで)朝鮮学校に通いました。今も総連系の人権団体(在日本朝鮮人人権協会)の理事をしています。私は国家としてのアイデンティティを北朝鮮にだけ委ねているわけではないけど、北朝鮮も認めるしかありません。今まで私は自らそう選択して生きてきたし、活動をしたきたのだけど、それを否定したくないのです」

 韓国の裁判所は、鄭氏が大学1年の時の99年8月、平壌で開かれた「第10回汎民族大会」に参加するなど「親北朝鮮活動をした」との理由で、政府の入国不許可の決定を支持した。現実には、韓国籍を取得して「今後は総連の活動をしない」と転向書を書けば、鄭氏はいつでも入国できる。しかし、国籍選択は自らのアイデンティティの根幹となる問題だ。「朝鮮籍は韓国でも北朝鮮でもない」と主張してしまうと、逆に一部の朝鮮籍同胞たちにはアイデンティティの相当部分を放棄させる圧力になる。そのため大多数の朝鮮籍同胞は帰国を放棄して自分の信念を守っている。

 したがって保守政権以来、突然「朝鮮籍」という理由だけで入国を拒否するのは人権問題になる。実際に国家人権委員会も2009年に朝鮮籍同胞に韓国籍取得を強要するのは「人権侵害」という決定を下した。もちろん、法的拘束力のない勧告に過ぎない。

 こうした容易でない国内の状況を誰よりも熟知しているのは鄭氏本人だ。彼は「故国や母国を訪れる権利は人権だと思う。その人権を否定するほど国家安保に悪影響を及ぼすような行為を私がしているのか考えてもらいたい。私が言いたいのはそれだけです」と話した。

 「ところで、なぜそんなに韓国に行きたいのですか?」。その問いに鄭氏はこう答える。「韓国で私の本を読んでくださった読者の反応も知りたいし、読者にも会いたい。そんなところです。欲張りでしたか」

東京/キル・ユンヒョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-07-06 02:18

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/751112.html 訳Y.B

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