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退陣要求は“生活政治”…制度政治的な要求に終わった4・19や6・10とは違う

登録:2016-11-13 23:33 修正:2016-11-14 07:18
2016年民衆総決起大規模集会が開かれた今月12日午後、ソウルの光化門広場から市庁前広場までを埋め尽くした市民が朴槿惠大統領の退陣を要求しキャンドルを掲げている=共同取材団//ハンギョレ新聞社

あふれる人波

 光化門(クァンファムン)からソウル市庁の向こうまで、大統領府のすぐ前まで道の両側に並んだ広場という広場、道路という道路は、すべて権力の外側の存在で埋め尽くされた。権力の視線からは見えない裏通りや路地裏までも人波と叫び、ロウソクのあかりが飲み込んだ。二分法の空間が一つの塊りに統合された。100万か、そうでないか(警察推算26万人)、1987年6・10抗争(7月9日の李韓烈烈士葬儀)の時より多いか少ないかを問い詰めるのは、好事家の好みでも、記録を測るためでもなかった。測定できない巨大さに対する表現だった。

 空間を支配する情緒は怒りだった。「朴槿恵(パク・クネ)は退陣せよ」という八音節のスローガンは「陰の実力者国政壟断」事態に触発された怒りの当然の帰結だった。「第1線からの退陣」要求は一週間で消えた。「自ら下野せよ」という要求と「引きずり下ろす」という念押しだけが鮮明だった。6・10抗争が「大統領直選制」という制度に対する直接的要請だとすれば、最高権力者を主権者の力で「委任解除」するという12日の要求は、1960年4・19革命の要請により近いものだった。

多様だった

今月12日ソウルで開かれた民衆総決起大規模集会に参加した人たちが思い思いのプラカードや横断幕を持っている//ハンギョレ新聞社

 世宗(セジョン)文化会館の裏道を行進した青少年団体は「教育体制を改革し生徒の人権が保証される社会を作り、中高生も人間らしい生活を送れるようにするぞ」と叫んだ。中高生たちはチェ・スンシル氏の娘チョン・ユラ氏の入学不正に怒った。東十字閣付近に集まった障害者たちは「障害等級制・扶養義務制廃止」を要求した。労働者は「成果年俸制と退出制中断」を、農民は「米価保障」を主張した。彼らは陰の実力者による国政壟断に象徴される現政権が、自身の生存を脅かし、人生の尊厳に及ぼした害悪と構造を指摘した。大統領退陣要求は即ち“生活政治”であり、その点で制度政治的な要求に終わった4・19や6・10とは異なるものだった。

 参加者も多様だった。既存政治・社会勢力のアウトサイダーと見なされた人々が、多様な単位で集まった。地域の集いの旗があちこちで目についたし、音楽DJも舞台を設けた。家族どうし、友達どうしで集会に出てくるケースも珍しくなかった。そして、秩序整然としていた。行き来することも難しい程に過密な人波の中で、ベビーカーが一緒に歩けるほどに安全だった。ソウル都心の多くのビルの中で、窓ガラス1枚割られたところもなかった。非暴力・平和集会は成熟した市民の指標と見なされている。

チェ・スンシルゲート真相究明と朴槿惠大統領の退陣を要求する第3次キャンドル集会が開かれた12日午後、参加者が朴大統領の退陣を要求し大統領府に向かって行進している=共同取材団//ハンギョレ新聞社

他の見方もある

 コラムニストのパク・クォンイル氏は自身のフェイスブックに「百万人でも千万人でも、粘性を失った微粒子はただの砂粒だ。純粋で遵法的な市民であれという強迫と“逆風”に対する恐怖心は、私たちの粘性を洗い落としてしまう」として「それが過去10年余りのキャンドル集会の教訓だ」と書いた。ホン・ミョンギョ社会進歩連帯メディア局長は「暴力-非暴力の問題ではなく、憤怒はするが“不服従”することを知らず、政治的潔癖症に捕らわれていることが問題だ」として「自分が完全に潔白になってこそ、支配者に大声を張り上げられると信じるのは、これまで悔しい思いをさせられて敗北する姿をあまりに多く見てきたため」だと指摘した。

広場はまだ満たされなかった

 一部の市民は集会後の空虚感を吐露している。100万人は広場と道路に氾濫したが、車壁一つ乗り越えることができなかったということだ。大学の時間講師であるC氏(30)は「昨日の驚異的な規模の集会が、歴史の本にどれほど強烈に記録されるだろうか」と話した。こうした感情は、広場と道路に依然として足りないものがあることを示唆する。パク・クォンイル氏は「私たちが作りたい世界を、具体的に掲げて論争しなければならない」と指摘し、ホン・ミョンギョ局長は「怒りが広範囲に及んでいることはすでに確認された」として「私たちの中に積もり積もった政治的敗北主義を解消する時間と機会が必要だ」と述べた。

 キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長は「12日の集会は韓国の歴史に記録されるべき国民主権行使の日であったということは明らかだが、朴槿恵(パク・クネ)という個人が下野しようが、弾劾されようが、この戦いは終わりではない」として「6・10抗争がそうだったように、市民が主体になった議論の枠組みが構成されなければ、直ちに大統領選挙の人物競争構図へなってしまうだろう」と見通した。キム院長は「国民の皆がこの事態の原因と解決策をめぐって議論を始めなければならない」として「非常国民討論サイトを作り、代案を議論しよう」と提案した。

アン・ヨンチュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/770096.html 韓国語原文入力:2016-11-13 19:11
訳J.S(2132字)

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