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「MD無用論」主張したトランプ…朝鮮半島のTHAAD配備再検討されるのか

登録:2016-11-10 02:07 修正:2016-11-10 07:14
[トランプ時代の幕開け](1)韓米同盟の再評価迫られる  
米国の第45代大統領に当選したドナルド・トランプ共和党候補が、当選が確定した9日未明、ニューヨーク・マンハッタンのミッドタウンホテルで開かれた祝賀パーティーの舞台に上り、支持者に当選演説を行っている=ニューヨーク/AFP聯合ニュース

 

「正当な対価支払わなければ自ら自国を守るべき」 
韓国に対する分担金増加圧力は必至 
 
THAAD配備の速度調整に乗り出す可能性も 
原点に戻すかについては意見分かれる 
米軍撤退・核武装容認の可能性は低い

 予想を覆してドナルド・トランプ共和党候補が9日、第45代米大統領に当選し、韓米の外交安保関係に不確実性が高まっている。来年初めトランプ政権が登場してから行われるであろう韓米関係の再調整も、これまでになく騒がしくごちゃごちゃした雰囲気の中で進められる可能性が高い。

 ユン・ビョンセ外交部長官は同日、国会で開かれたセヌリ党との政府与党間協議会で「トランプ候補は、これまで韓米同盟の重要性に言及してきた。新しい政権でも韓米同盟重視の政策基調は続くだろう」という希望的観測を示した。しかし、トランプ当選者は大統領選の過程で、これまでの伝統的な韓米関係とは異なる主張を憚ることなく展開しており、今後の韓米関係がそれほど単純ではないだろうと分析する専門家も多い。ムン・ジョンイン延世大名誉特任教授は「トランプは世界の大統領ではなく、米国の大統領、すなわち米国優先主義に進むだろう」としたうえで、「私たちももはや米国に過度に依存する心理を捨てて、変化する安保環境を冷静に評価し、韓米関係と南北関係を再調整する必要に迫られている」と指摘した。

 トランプ当選者は、在韓米軍の駐留費用を韓国がより多く負担しなければ、撤退させる可能性もあるとの意向を示した。9月26日に行われた第1回テレビ討論では、「私たちは日本、ドイツ、韓国、サウジアラビアを保護しているが、彼らはお金を出さない。正当な対価を支払わなければ、彼らは自らの力で自国を守らなければならないだろう」と述べた。韓国が、在韓米軍の駐留分担金として毎年約1兆ウォン(約896億円)を支払っているが、トランプ当選者はこれを「はした金」程度と見做してきた。

 トランプ当選者は、韓国の核武装なども容認するような態度を見せてきた。今年3月に行われた「ニューヨーク・タイムズ」とのインタビューで、彼は韓国の核武装について、「いつか議論しなければならない問題だ。米国が今のように弱くなる道に進むなら、彼らは私がそれに言及しようがしまいが核武装をしようとするだろう」とし、やむを得ないというような反応を示した。今年4月の遊説では、核で武装した北朝鮮と周辺国の武力衝突について「彼らが争えば恐ろしいことになるだろう。しかし、彼らがそうしたいなら、仕方がないこと」だとして、妙に無関心な態度を見せた。これは同盟国に核の傘を含む安保提供を通じて、同盟国の非核化と軍事的影響力の維持を国家安保利益としてきた米国の伝統的な政策基調とは異なるものだ。

 しかし、トランプ当選者のこのような挑発的な発言が来年の就任後、実際に政策にそのまま反映される可能性は高くないと、多くの専門家は分析している。特に、在韓米軍撤退や韓国核武装の容認などは、トランプ政権発足後の対外戦略樹立過程で、調整を経る可能性が高いと見られる。峨山政策研究院のチェ・ガン副院長は「1978年、ジミー・カーター大統領が大統領選挙公約として在韓米軍の撤退を掲げたが、議会などの抵抗に遭い断念した事例がある。核武装の容認は不拡散政策の放棄を意味するため、実行が難しいだろう」との見通しを示した。

 ただ、韓国の防衛費分担の増加に向けた圧力が強まるのは確実だ。北韓大学院大学のク・ガプウ教授は「韓米同盟がついに構造調整の時期に入った」としたうえで、「トランプ氏は『費用対効果』を重視するビジネスマン出身だ。米国が損をしていると判断したら、伝統的同盟関係も再調整しようとするだろう」と指摘した。今年韓国の在韓米軍防衛費分担金は9441億ウォン(約846億8千万円)で、駐留費用の50%前後になる。分担金を出し始めた1991年の1073億ウォン(約96億2千万円)から24年で9倍近く増えた。それにもかかわらず、トランプ当選者は5月の「CNN」とのインタビューで、韓国は50%を負担しているとの指摘に対し「なぜ100%では駄目なのか」と反問した。これを文字通り受け止めると、現在の分担金を2倍に上げて2兆ウォン(約1794億円)を支払えということになる。米国が分担金の大幅増額を圧迫すれば、韓国と米國の間に緊張と対立が起こる可能性がある。

 韓米両国政府が急遽推進してきた「在韓米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備」方針を引き続き推進するかどうかも、注目の的だ。 トランプ当選者は今年7月の「ニューヨーク・タイムズ」とのインタビューで、北朝鮮のミサイル脅威に対処するミサイル防御(MD)と関連し、「(日本などにミサイル防衛システムが)長い間存在したが、実質的に役に立たなかった」として無用論を主張した。しかし、新政権発足後、THAAD配備問題を実際に再検討するかどうかをめぐっては、(専門家の間でも)意見が分かれている。ムン・ジョンイン延世大名誉特任教授は「トランプ氏がTHAAD配備と関連し、速度の調整に乗り出す可能性もある」と話した。一方、外交安保分野の元高官は「MDは伝統的に共和党の議題」だとし、「トランプ氏が共和党を全く異なる党にしない限り、THAADはそのまま進められるだろう」との見通しを示した。

パク・ビョンス、イ・ジェフン、チョン・インファン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/769622.html 韓国語原文入力:2016-11-10 00:06
訳H.J