朴槿恵(パク・クネ)大統領が24日、「任期内の改憲完遂」を宣言したことで、政界が「大統領府発の改憲政局」に急速に再編されている。これまで大統領府が、与野党の改憲論議に否定的な立場を表明してきただけに、朴大統領の突然の「改憲カード」は政界に衝撃として受け止められている。権力型不正疑惑による支持率の急落と、政権後半のレームダックを防ぎ、任期最後まで政局の主導権を握ろうとする朴大統領の強い意志が反映されたものと分析されている。
朴大統領は同日、国会で行った「2017年度予算案施政演説」で「大韓民国の持続可能な発展のためには、韓国が直面した限界を大きな枠で解決しなければならず、私の公約でもある改憲に向けた論議をこれ以上先送りできないという結論に達した」と明らかにした。現行のの大統領5年単任制は「政策の連続性が低く、持続可能な国政課題の推進と実現が難しいだけでなく、対外的に一貫した外交政策を展開することにも大きな困難を伴う」制度であり、「かつての民主化時代には適していたかもしれないが、今は体に合わない服となった」と述べた。
当初、改憲は2012年の大統領選挙で朴大統領が公約したものだった。朴大統領は2012年の大統領選挙候補時代に、「当選すれば、4年重任制と国民の生存権的基本権の強化を含む様々な課題について十分に議論し、国民的共感を確保したうえで、国民の暮らしに役立つ改憲を推進していく」として、現行の大統領5年単任制(再任禁止)を4年重任制に改憲すると約束した。しかし、就任後、朴大統領は「改憲ブラックホール論」を強調し、最近までキム・ジェウォン政務首席を通じて、「今は改憲を論議をする時期ではないというのが明確な方針」だとして、線を引いてきた。大きな波紋が予想される改憲論議が本格化された場合、すべての懸案が改憲に埋もれて国政の推進力を失う恐れがあると懸念したからだ。朴大統領は、これまでの改憲要求について「なかなか口に出せない話」(2016年1月の年頭記者会見)、「今この状態で改憲するようになれば、経済はどう活性化するのか」(2016年4月報道機関幹部懇談会)など、経済・安保危機の克服が改憲よりも優先されるべきという立場を強調してきた。
このように改憲に否定的だった朴大統領が、改憲を妨げる要因とされていた安保・経済危機が悪化する状況で、しかも、来年度予算案と懸案とされる法案処理を国会に要請した場で改憲を公式化したのは、大きな自己矛盾だ。今回の改憲論が局面転換を狙ったものと評価されるのも、そのためだ。最近、「影の実力者チェ・スンシル」をめぐる波紋やミル・Kスポーツ財団をめぐる疑惑、ウ・ビョンウ大統領府民政首席の進退をめぐる論議の長期化などで、国政支持率が毎週最低値(25%、韓国ギャラップ10月第3週の調査)を更新したことを受け、追い込まれた局面からの脱却を図ろうとする意志を、「改憲カード」で実行に移したということだ。特に、チェ・スンシル氏をめぐる議論が政権の問題に飛び火する兆しを見せており、これを遮断しようとする先制的動きとも見られている。与党関係者は「勝負師の顔を持っている朴大統領が、支持率が急落して世論が批判的な状況を改憲で逆転させようとしたもの」だと話した。与党の過半数割れと任期末のレームダックの本格化など、朴大統領にとって不利な政局を一気にひっくり返せる切り札ということだ。野党は「朴大統領は『改憲はブラックホール』と言っていたが、チェ・スンシル疑惑を吸い込むブラックホールを作った」と評している。特に、大統領選挙を来年に控えた状況での改憲議論は、大統領選挙構図そのものを揺るがしかねない破壊力のあるカードであるだけに、政局の主導権を確保しようとする朴大統領の意志を明確にしたものと見られる。
しかし、大統領府は、改憲推進の公式化に対する「政治的解釈」を警戒し、少なくとも6月から極秘裏に推進してきたという点を強調した。キム・ジェウォン大統領府政務首席秘書官は同日午前、大統領府春秋館で行われたブリーフィングで、「(政務首席に任命された)6月から改憲に向けた方向の設定に関して様々な角度から検討しており、首席秘書官からも多くの意見が示された」としながら、「8・15光復節記念演説では改憲の推進を公表しようという意見もあったが、実現できなかった」と説明した。また、「最終的かつ総合的な報告書は、中秋節連休の前にかなり多い分量で報告しており、連休最後の頃に朴大統領が改憲の準備を指示した」と説明した。「影の実力者チェ・スンシル」をめぐる問題とは関係なく、独自に推進してきたという主張である。キム首席は、今回の改憲提案が政略的だという野党の批判に対し、「改憲はかなり長い間、具体的に準備を進めてきた。(改憲は)一朝一夕に提案できるような事案ではない」と反論した。