「どうしてこんな尖ったものが突きだしているのだろう。見たことがないものだが…」
20日昼、ソウル鍾路(チョンノ)区敦義(トンイ)洞近くのP劇場のビルの前で、座れるところを探していたファンさん(83)は、ビルの入り口に置かれた長方形の石材ボラードを見てしばし戸惑った。主にビルの入り口や歩道に車両の進入を防ぐために設置される平均高さ40センチ、縦・横それぞれ30センチ規格の石材ボラード。特にこのビルの入り口側には100センチ間隔で設置された6つの石材ボラードの上に、鋭く突き出たセットアンカーが9つずつ埋め込まれている。
角にかろうじて腰かけたファンさんは「ソウル市内に行き場がなく、タプコル公園や劇場の前によく出かける」、「自宅にいると寂しいので、ここで知り合った同年輩たちと会って話を交わしたりお酒を一杯飲んだりする」と話した。午後になると、白髪交じりの70~80代の男性約30人ほどがビルの入り口の方に集まり、三々五々話を交わしタバコの煙を吐き出した。彼らは地面に新聞紙や段ボール箱を敷いて座り、何人かはファンさんのように石材ボラードの角に腰を下ろしたりもした。近くのある飲食店経営者は「9月初め頃、(ここに石材ボラードが)設置されたと聞いている」とし、「当時、『人を座らせないために設置したのではないか』と、何人かの老人がビル内の商人らに抗議していた」と話した。
Pビルはなぜボルトのようなものが刺さった「陰険なもの」を設置することになったのか。9階建てのこのビルには地下の劇場をはじめ貴金属免税店、歯科、宝石の職業専門学校などが入っている。ビルの商人たちは「鐘路一帯に現れる老人とホームレスの人たちが特にこのビルの前に集まって酒盛りをしたりたばこを吸ったりするので、客足が遠のいた」と口をそろえた。老人に対し売春をもちかける「バッカス老女」まで現れ、ビル周辺をうろうろすることもあり、結局商人たちが協議して石材ボラードを設置したという。
貴金属店を営むある商人は「向かいのビルでは警備を立てており、老人やホームレスが行かない」とし、「それだけ商売が厳しく被害が大きかったためにここまでしたのだ」と訴えた。実際、向かい側のTビルでは警備の労働者が常時入り口側のスペースを行き来し、忙しくスペースを整備する姿があった。
市民の意見は分かれている。Pビルの近くで会ったジョンさん(44)は「商売する人たちの立場は十分に理解できるが、老人とホームレスを嫌悪の対象として捉え、『嫌悪物』を設置したようだ」と話した。鐘路に事務所があるというキムさん(36)は「鍾路は高齢者に適した行き場がないうえ、商圏が活性化されておらず、商人たちも苦労している」としながらも、「流動人口が多いところに設置されて危なく見えるし、韓国社会の老人問題を端的に表しているようで悲しい」と話した。
Pビルの管理事務所関係者は「管理委託業者などとの訴訟に巻き込まれて、ビル内に空室が多く難しい状況なのだが、商圏を活性化しようという過程で臨時に設置した物」とし、「お年寄りが座ることができないようにするための措置ではなく、今後商人たちと話し合って、他の造形物を設置するだろう」と話した。
パク・スジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2016-09-21 21:07