北朝鮮の洪水被害で138人が死亡し400人以上が行方不明になった中で、韓国の市民が困難に直面した北朝鮮住民に対する直接支援に乗り出す動きを見せている。
先月末、台風「ライオンロック」(台風10号)によって北朝鮮の咸鏡北道と両江道地域を中心に大雨が降り、6万8000人の被災者が発生したという。住宅と農地が浸水したのはもちろん、道路や鉄道が崩れるなど、被害が大きかった。冬には氷点下25度まで下がる咸鏡北道の気候からして、近いうちに本格的な寒波が押し寄せると、被災者はさらなる被害に見舞われるものと見られる。北朝鮮は異例にも洪水被害現場を国際社会に公開し、「今回の洪水は、解放(光復)以来初めての大災害」という表現まで使った。
国際赤十字連盟は52万ドルを支援して緊急救護に乗り出し、国連世界食糧計画(WFP)は13日(現地時間)、7日分のビスケットなどの緊急救援食糧を北朝鮮住民15万人に支援した。しかし、現在60万人が飲み水の供給問題などに直面しており、冬になれば食糧難も深刻になるものと見られ、事態はさらに悪化する見通しだ。国連は、咸鏡北道地域住民14万3000人に食糧を支援して臨時住居を用意するのに2820万ドルが必要だと推算し、国際社会に募金を訴えている。
しかし、北朝鮮を見る目は冷ややかだ。今月9日、北朝鮮が5回目の核実験を行ったことに対し、制裁を求める声が高まっているからだ。国連総会が開かれている米国のニューヨークでは、韓米日の外相が会談し、北朝鮮を糾弾する内容の声明を発表すると共に、強力な制裁を検討することを明らかにした。統一部は19日、「北朝鮮側から(水害支援の)要請があっても、現状況では実現する可能性は低い」と発表した。
民間団体のレベルで人道的支援を行うためには、政府の承認が必要だ。対北朝鮮協力民間団体協議会(北民協)は、北朝鮮の水害復旧支援を協議するため、北朝鮮側との接触許可を統一部に要請したが、政府はいまだに「検討している」との立場を発表しただけだ。北民協は「直接支援が難しければ、国際赤十字社などの期間を通じて迂回的な支援を行う方法も考えている」と発表した。
これに市民団体などを中心に「人道的レベルの支援は認めるべきだ」とする声と共に、個別の募金運動が進められている。北朝鮮に対する制裁は厳格にしても、脆弱な階層に対する人道的支援は残しておくべきということだ。自主平和統一実践連帯仏教委員会は17日、声明を発表し、「梗塞した南北関係を解決できる唯一の道」だとして、洪水被害の救援のための民間レベルの支援事業を許可するよう求めた。
チョン・ユギョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力: 2016-09-20 13:52