本文に移動

北朝鮮の核と水害支援を連繋させ、人道的支援を拒否した韓国政府

登録:2016-09-20 01:21 修正:2016-09-20 07:24
韓国政府、水害支援を事実上拒否 

北朝鮮の5回目の核実験強行を理由に 
最悪の水害に対する支援を事実上拒否 
「人道支援は制裁の対象ではない」 
朴槿恵政府の原則、自ら破棄 

1984年の韓国の水害時、北が救助物品支援 
赤十字会談、経済会談を開くきっかけに 
「少なくとも民間レベルの支援は開くべき」 
北朝鮮労働党機関紙の労働新聞は19日、咸鏡北道の水害地域でコムサン青年駅~茂山駅区間の線路が修復され、平壌時刻で17日午後5時に洪水被害後初めて列車が茂山駅に到着したと報道した。この区間は計28カ所に7万立方メートル以上の土砂が流れ込むなど甚大な被害を受けた場所の一つ/聯合ニュース

 北朝鮮当局が「(1945年の)解放以来最大の過酷な大災害」と規定した、咸鏡北道北部地域の水害支援問題に対する朴槿恵(パククネ)政府の態度は微動だにしない。北朝鮮に常駐する各国連機関を中心に、国際社会が先を争って救いの手を伸ばしているが、政府は北朝鮮の5回目の核実験を理由に「金正恩(キムジョンウン)政権責任論」を掲げ、事実上支援を拒否する意思を明確にした。これは人道的支援は制裁対象から除くという国際社会の人権の原則はもちろん、朴槿恵政権の従来の方針にも真っ向から反する。対北朝鮮人道支援は南北関係改善の呼び水であり、分断の克服と統一の情緒的な共感を広げるテコにしてきた歴代政権の政策に学ぶべきだという各界の声が高まっている。

 統一部のチョン・ジュンヒ報道官は19日、定例ブリーフィングで北朝鮮への水害支援に関する政府の方針を問う質問に対し「救護の性格や被害状況に対する実態調査が先行されなければならず、緊急救護の必要性と透明性、北の要請などを総合的に考慮して決定する問題」と答えた。これまでの政府の方針を再確認したということだ。問題はその次だ。チョン報道官は「北は水害が発生した状況にもかかわらず莫大な費用がかかる5回目の核実験を強行した」とし、「(水害復旧という)直面する課題があるにもかかわらず、民生と関係のない部分に費用や努力を傾けたため、北朝鮮の責任を先に取り上げなければならない」と強調した。金正恩政権の責任を、水害という災難に見舞われた北朝鮮の住民に問うという、国際人道主義の原則の基本も知らない反人権的な認識だ。朴槿恵政権が「70年の国連史上最も強力な制裁決議」と宣伝している国連安全保障理事会決議2270号も前文で「本決議で課された(制裁)措置が、朝鮮民主主義人民共和国の住民に否定的な人道的影響を意図したものではないことを強調する」と明示している。核実験制裁と対北朝鮮人道的支援は別の問題だということを明示し釘を刺しているのだ。

 北朝鮮水害支援の可否に関し、朴槿恵政権はこれまで「北の要請がない」という理由でかわしてきた。同日のブリーフィングでも、チョン報道官は「緊急救護の国際的原則は、該当国家の要請によるものである。該当国家の要請なしには支援をしないのが国際的慣例」と話した。「国際的基準」と「慣例」とは何であろうか。1991年12月19日、第78回国連総会で採択された決議「国連人道的緊急救護の調整強化」がそれだ。決議第1項は「人道的支援は自然災害など緊急状況に置かれた被害者にとって最も重要な任務」だと規定している。朴槿恵政権が掲げる「国際的基準」は「人道的支援は、被害当事国の同意と要請によってなされることが原則」と規定した第3項だ。しかしこれは、被害当事国の主権を尊重するために設けられた条項であり、支援回避の盾ではない。むしろ第7項では「周辺国は人道的支援物品の通関を含め、被害国家の支援のための国際的な努力に緊密に参加」するよう明示している。

 実際、南北関係の歴史では公式な要請なく人道的支援を行った前例は多い。代表的な事例が1984年9月の首都圏の水害時だ。同年8月31日から首都圏を中心に集中豪雨が降った。ソウルだけでも3日間に334.4ミリの豪雨が降った。当時内務部が集計した資料によると、首都圏を中心に全国的に死亡者86人と10万人に近い被災者が発生した。同年9月8日、北朝鮮の朝鮮赤十字会は電撃的に「コメ5万石、布50万メートル、セメント10万トン、その他医薬品を救護物資として送る」と提案した。南側当局の公式要請はなかった。体制競争をしていた時代だ。悩んだ挙句、全斗煥(チョンドゥファン)政権は、6日後に北側の提案を受け入れた。紆余曲折の末に9月29日~10月4日、板門店(パンムンジョム)、仁川港、北坪(ブッピョン)港を通じて物品が運び込まれた。統一部のチョン・セヒョン元長官は「これを機に赤十字会談が開かれ経済会談と国会会談が開かれた。その動力で1990年代から総理級会談に南北対話が格上げされることができた」と語った。1985年9月20~23日、南北分断40年の歴史上初めて、離散家族の故郷同時訪問が実現されたことも同じ脈絡からだ。チョン元長官は「人道的支援の受け渡しが南北対話を開く良いきっかけになったケースが多い。政府は口を開けば人道主義と人権を語るが、民間レベルの支援まで阻むべきではないのでは」と話した。

 仁済大学のキム・ヨンチョル教授は「(2014年3月)ドレスデン宣言以降、これまで朴槿恵政権は人道的支援は制裁対象ではないと強調してきた。人道的支援をしなければならない状況が発生したのが明らかであるにもかかわらず、これを履行しないのは政府自ら表明した原則に反する」と批判した。

 4日から施行された北朝鮮人権法は「国家は北朝鮮住民が人間としての尊厳と価値を持っており、幸せを追求する権利があることを確認し、北朝鮮住民の人権保護および増進に向けて努力しなければならない」(2条1項)と規定している。チョン報道官は「北朝鮮人権法に人道的支援が明示されている」との記者の指摘に対し、「無条件にどんな場合でもせよというわけではない。今は事情が違う」と答えた。コリア研究院のキム・チャンス院長は「金正恩委員長の核実験と朴槿恵大統領の支援拒否の間に挟まれて苦しむのは北朝鮮住民だけ」と話した。

チョン・インファン、キム・ジンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

韓国語原文入力:2016-09-19 22:49

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/761747.html 訳M.C