試合前日に先発リストが予告され謀議しやすい
1回登板投手「体がなまって」と言い訳
幼年期からまともな教育なく運動ばかり
プロ野球選手65人を対象にした調査で
7.7%「八百長は犯罪じゃない」と答える
「第2のリュ・ヒョンジン」。ユ・チャンシク選手(24)が2011年にハンファ・イーグルスのユニホームを着てプロ入団した時についてまわった言葉だ。新人契約金も過去2番目に多い7億ウォン(当時のレートで約5300万円)を受け取った。しかし彼は今、八百長というレッテルが貼られ直前にある。ほんの一時の誘惑を振り切れず払わされる代償だ。
2012年のパク・ヒョンジュン、キム・ソンヒョン(当時LGツインズ)から始まったプロ野球の八百長は、その後の“学習効果”もなく、今年はイ・テヤン(NCダイノス)、ムン・ウラム(ネクセン・ヒーローズ、現尚武)、ユ・チャンシク(起亜タイガーズ)と続いている。史上初の800万観客に向け巡航中だったプロ野球も、4年ぶりに再燃した八百長疑惑に動揺している。相次ぐ八百長で没落の道を歩んだ台湾プロ野球の轍を踏むのではないかと懸念する声も少なくない。
ユ・チャンシクは25日、京畿北部地方警察庁サイバー捜査隊に起亜タイガーズ球団関係者らとともに自ら出頭し、国民体育振興法違反容疑の被疑者として取り調べを受けた。ユはハンファイーグルス所属だった2014年4月1日のホーム開幕戦の大田(テジョン)サムスン戦で、1回表3番打者のパク・ソンミンにわざと四球を与えるなど、二試合の八百長を通じてインターネット違法スポーツ賭博ブローカーから300万ウォン(約29万円)を受け取ったと自白した。
24日に野球委員会(KBO)に自主申告したユ・チャンシクは、警察の取り調べを終え、「良心に苛まされ、八百長(事件が)起きてから怖かったし、そのため心理状態が悪くなって自首することにした」と明らかにした。警察は2月、すでにユ・チャンシクの八百長関連情報を入手し内偵捜査を行ってきたが、口座の家宅捜索令状が棄却されて捜査が難航し、捜査を終結処理をしていたという。現在、ユ・チャンシク以外にもイ・テヤンが、ネクセンヒーローズの野手ムン・ウラムの紹介で2015年に4回八百長をした疑いがもたれている。
パク・ヒョンジュン、キム・ソンヒョンなどのプロ野球の八百長が初めて摘発された4年前同様、今回の八百長も先発投手らで行われた。プロ野球は競技前日に先発投手が予告されるため、選手とブローカーの事前謀議がしやすい。野手に八百長させるには相手投手の球種や審判のボール判定など、予測不可能で突発的なことがあまりにも多い。しかし、すでに登板が予定された先発投手なら、たった1人だけ買収に成功しただけで八百長がいくらでも可能になる。特に1回は、先発投手がコンディションが良くなかったことを口実にでき、八百長が最も簡単だ。こうした理由から、1回に四球を多く出した先発投手に疑惑の目が向けられている。複数の選手の名が挙がっているが、今のところ「誰々らしい」という噂話にすぎない。
ユ・チャンシクに誘惑の手を差し伸べたのは、4、5年前に引退した元野球選手だった。他のスポーツ同様にプロ野球選手は幼い頃からまともな教育も受けずに“運動機械”として育ち、人間関係も閉鎖的だ。こうした環境では、いわゆる「知りあいの兄さん」との好ましくない出会いがされる機会が増え、その過程で道徳的な判断ができずに誘惑に負けてしまう確率が高い。イ・テヤンの法律代理人も「(イ・テヤンは)まだ若い選手なので判断力に欠けていたようだ。運動ばかり一生懸命したきたので、精神的に未熟な状態でブローカーらの誘惑に負けたものとみられる」と明らかにした。
昨年10月、体育学会誌第54冊6号に掲載された「プロスポーツ選手らの勝負操作に対する意識と予防教育戦略研究」という論文(チョンヨンヨル、キム・ジングク高麗大講師他)によると、調査に応じた現役のプロ野球選手65人のうち1人(1.5%)が八百長を提案された経験があり、13人(20.0%)が同僚選手から八百長の方法を聞いた経験があると答えた。さらに注意を要すのは、65人のうち5人(7.7%)が「八百長を犯罪と思っていない」と答えていたことだ。2012年に八百長の当事者たちに加えられた一罰百戒(永久除名)も功を奏さず、イ・テヤンやユ・チャンシクのように1回での四球などを単純な八百長と見なし、状況の深刻さを全く認知していない選手が少なからずいる事実を明らかにしている。
一時、11のプロチームで人気を誇った台湾のプロ野球は、組織暴力団が関与した度重なる八百長問題で、現在は球団が4チームに減った。韓国野球委も問題の深刻さを認知し、自主申告期間(7月22日~8月12日)を設け過去の八百長事件を全部洗いだす意志を示している。自ら申告した選手は永久除名でなく2、3年の観察期間をおいて復帰が検討される。しかし、問題は数十兆ウォン規模の違法スポーツ賭博市場が存在する限り、八百長の誘惑は続くほかないことにある。特に、全ての試合が生中継されるプロ野球は違法スポーツ賭博市場の恰好のターゲットになる。
ヤン・ヘヨン韓国野球委事務総長は「不法賭博市場がある限りプロスポーツに安全地帯はありえない」、「選手には誘惑があるはずだが、野球委や球団が選手一人ひとりを調べるのも難しい。選手自身が自覚するほか方法がない」と語った。
韓国語原文入力:2016-07-25 22:06