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韓国スポーツ界を蝕むギャンブル、選手たちはボールの代わりにカードを選んだ

登録:2015-11-27 23:59 修正:2015-11-28 07:00
八百長に加担した野球選手パク・ヒョンジュン、サッカー選手チェ・ソングク、バレーボール選手イム・シヒョン、バスケットボール監督カン・ドンヒ //ハンギョレ新聞社

 目の前に3000万ウォン(約300万円)のチップがある。手にあるのは2枚のカード。 目を細めてカードの二つの数字を見る。 相手より9以下で高い数字にならなければならないバカラゲーム。 6000万ウォンを取るか、はたまた3000万ウォンを失うかの戦いだ。 勝利と敗北の別れ目での極度の緊張感は一層しびれる快感を抱かせる。 一時賭博に陥った元プロスポーツ選手は言う。 「3000万ウォンのチップ一枚を賭けて、2枚のカードを確認する、その時の気持ちは体験した人でなければ分かりません」。“勝負”という点だけ見ればスポーツは賭博と一見似ている。 不法スポーツでのベッティングも同じだ。 専門家は賭博がまた別の賭博、すなわち自身が属するリーグに対する不法賭博につながる可能性があることを警告する。

 マカオへの1億ウォン台の“遠征賭博”の疑いを受けているプロ野球サムスンライオンズの主軸投手3人に対する調査が真っ最中だ。 イム・チャンヨンは最近検察の召還調査まで受け、アン・ジマンとユン・ソンファンにも別の調査が進行中だ。 彼らを韓国シリーズのエントリーから外したサムスンは、調査結果が出れば任意脱退あるいは契約解除などの方案を講じるものと見られる。単純娯楽性の賭博と判明して罰金刑を受けても、巨額の賭博をしたこと自体でも、国民感情から見て球団のイメージを深刻に失墜させたことになるためだ。

 これに先立ってプロバスケットのキム・ソンヒョン(SK)とオ・セグン(KGC)は、学生時代に不法スポーツ ベッティングの疑いで検察の調査を受けたが不起訴処分になった。 2008年末、プロ野球のチェ・テイン(サムスン)とオ・サンミン(LG)はそれぞれインターネット賭博とカード賭博で略式起訴され、罰金刑に処されもした。 過去にはある実業団卓球チームのコーチは、“ハウス賭博”に出入りしたことが露見し卓球界から追放された。 あるベテラン野球選手が江原道・旌善(チョンソン)にある「江原(カンウォン)ランド」のVIPルームにいつも出入りして露見したこともあった。 特定慈善行事が終わった後、選手たちが部屋で1万ウォンの札束を積み上げてカードをしたという事実も、報道こそされなかったもののずっと噂になっている。

4大プロスポーツ選手ら
忘れているだけで一回ずつ事件


若くして成功したがストレス解消法を知らず
先輩の勧誘に「しびれる賭博の誘惑」に嵌まる


「個人的逸脱として片付けてはならない
エリート育成システムの改善が必要」

 スポーツ選手たちが賭博の誘惑に陥る理由は何だろうか。 あるプロ球団の監督は「芸能人と同様にスポーツ選手も競技内外で極度のストレスを受けるが、解消方法があまりない。 飲酒、セックスを経て、もっと刺激的なものを求めるようになり、結局は賭博に陥る選手が時に出てくる。 賭博ほど刺激的なものはないと言う」と明らかにした。 “公人”として認識されるスポーツ選手らは、外部と遮断されたところでストレスを解くことになり、自ずからうしろめたい環境に置かれることになる。スロット、カジノなどに容易に接することができる場所で現地訓練をした結果、賭博に対する拒否感がなくなるという事情もある。

 元テニスの韓国代表選手出身で、英国で心理学博士学位を受けたパフォーマンス心理研究所のパク・ソンヒ所長は、閉鎖的なエリート選手育成システムに原因があると指摘する。 「韓国の選手たちが賭博に陥るのには複合的な要因があるようだ。 先ずはエリート選手たちが発掘されて育てられる過程で途方もなく多くの時間を運動だけに偏って生活することになる。 生活のバランスが崩れた状態で20代前後という幼い年齢でプロの道に入り込めば、金銭的に余裕ができて若干の運動場外での自由も与えられ、自ら決定しなければならない時が来る。 しかし、それまで一度も自ら決定をしないで来たために、決定に対する未熟さから賭博などうしろめたいことへの誘惑を受けた時に拒むなり状況に応じた良い選択をすることは難しい」。パク所長はさらに「賭博などに陥る時、一人で決めたケースは少ないだろう。チームの先輩や同じ年頃の集団の影響を受けたはず」と話した。

 スポーツ心理学者のチョン・ヨンチョル西江大教授もまた、学習権の剥奪と共に、ロールモデルとなる指導者の誤った習慣などが問題だと指摘した。 チョン教授は「学生選手たちは構造的に正常な教育の機会が剥奪されていて、孤立した島のような場所にある。監督、コーチらによる制限された教育に露出しているが、彼らが幼い時から見て育ったのは監督やコーチが集まって花札賭博やカードを打つ姿だ。幼い選手たちに大人たちが良くないロールモデルになっている」とし「位階秩序を重視するスポーツ集団の文化で、個人的に『ノー』と言いたくても先輩がやろうと言れば断れる後輩がいるだろうか」と反問した。

 賭博は単純に個人の嗜好でもある。だが、賭博の過程で不法スポーツのベッティングサイトを運営する組織と親密になり、競技の操作、八百長の誘惑につながりうるという点で危険性が内在している。サッカーの韓国代表にもなったチェ・ソングク、キム・ドンヒョンが不法スポーツ ベッティング業者にけしかけられて八百長に加担して永久除名され、プロ野球でもパク・ヒョンジュン、キム・ソンヒョンが初球ボール・ストライクと関連した不法スポーツ ベッティングに加担し、同じく永久除名されたのが端的な例だ。 プロバレーボールでもパク・ジュンボム、イム・シヒョンら期待の星が先輩らの誘惑に誤った選択をしてプロバレーボールから追放された。 チョン・ヨンチョル教授は「個人的な賭博は後に八百長にまでつながる可能性がある」として「一部の実業団リーグでは自身の年俸の半分を不法スポーツ ベッティングに賭ける選手もいると聞いた。 一部の選手が生計型賭博人という点が最も大きな問題」とし、スポーツ賭博の深刻性を指摘した。

 韓国体育学会誌第54巻6号(10月末発行)に掲載された「プロスポーツ選手たちの八百長に対する認識と予防教育戦略研究」によれば、韓国4大プロスポーツ選手の中で5.5%程度が八百長の提案を受けたという調査結果が出た。 チョン・ヨンニョル、キム・ジングク高麗大体育学科講師は、2015年に登録された選手たちを種目別に75人前後の標本として割り当て、アンケート調査を実施し「私は八百長の提案を受けた経験がある」という質問に、回答者274人のうち15人が「ある」と答えた。 バスケットボールの選手が11.5%(78人中9人)で最も高かった。「私は八百長の方法を同僚選手から聞いた経験がある」という項目でも、バスケットボール選手の30.8%が「ある」と答えた。 選手を相手にした賭博予防教育は常になされているが、道徳不感症は変わっていないことが分かった。「私は八百長が法律的犯罪だと考える」と「私は八百長がスポーツ倫理に外れると考える」という問いに、8%程度は法律や倫理の側面からはそれほど問題にならないという態度を示した。 一部の選手たちが八百長などで永久除名されたのに、不感症は依然として存在する。

 チョン・ヨンチョル教授は「賭博を個人的逸脱として片付けてはならない。 エリート教育システムから改善しなければならない」と明らかにした。 パク・ソンヒ所長もまた「選手たちに幼い時から生活のバランスについて考える時間を与えなければならない。 余裕時間にどのようにストレスを解消するかに対する教育が必要だ」として、「奉仕活動とか他の良い面で勝負の世界に伴う恐怖や虚無感をなだめられるよう教育者が支援しなければならない」と助言した。 スポーツ賭博の問題は、個人、球団の責任に限定されず、アマチュア、プロ団体の全てが共に額を突き合わせて構造的問題の解決に当たらなければならないという意味だ。

キム・ヤンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/sports/sports_general/719238.html 韓国語原文入力:2015-11-26 21:13
訳J.S(3395字)

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