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顔のない用役らと屋上で互いにパチンコ攻防

原文入力:2009-07-24午後05:22:28
催涙袋 休む間もなくジャージャー…皆目が真っ赤に
水・ガスに食べ物まで切れてやっと握り飯一口

ホ・ジェヒョン記者

←警察が撃った電気銃に当たった双龍車労組員の顔写真. 提供. 労働と世界

双龍自動車労組員らの平沢工場占拠篭城が24日で64日目をむかえた。夏の蒸し暑さが猛威を振るう中で労働者らは一戦を交えている。警察は少しずつ労組員が占拠している塗装工場前まで前進し、もう警察と労組員の間の対峙距離は50m前まで狭まった。近いだけに対峙状況はより一層危険だった。22日には火炎瓶まで登場し、警察と労組員の間に激烈な衝突があった。ジリジリと照りつける太陽の光に皮膚が焼けて進展のない交渉に内部まで燃え上がっている双龍車労組員らを24日篭城現場の塗装工場に入り直接会ってみた。

コンテナつないでバリケード…昼夜別なく交代歩哨

工場に入ると目がヒリヒリし始めた。警察が終日ばら撒きまくった催涙ガスがあたりに漂い空気が辛かった。建物内に入るや少しずつ辛さが和らいだ。

“皆、眼が真っ赤に充血しています。保護眼鏡を使わなければ耐えられません。”

取材陣を案内してくれた30代の組合員が話した。実際にそうだと感じた。催涙成分の粉塵が漂う現場に1時間以上留まろうとすれば保護眼鏡が必須だった。時間が経つと目と鼻の下などがカッカとほてり始めた。催涙粉塵が皮膚に貼りついている感じだった。ここでこのように労組員たちの身体は先ず催涙ガス粉で侵されていた。

←会社側用役と推定される人々が警察が確保したTRE棟屋上から労組員に向かってパチンコで狙っている。

銃声がないだけでここはまさに戦場だ。随所で起きている様子は戦時状況に似ていた。車体とパネルなどを積んで作った3mの高さのバリケードが立てられており、労組員たちがここを守っている。戦略的により重要に見える所にはコンテナを当てバリケードを築いた。

この日明け方、プレス工場側バリケード上で歩哨に立っていたウ・某(37)氏は「いつ会社側用役ら(労組員らは会社職員を用役と呼んでいる)と警察が攻め込むかも知れないので3時間ずつ交代に歩哨に立っている」と話した。眠れないためか、ウ氏のまぶたは半分ぐらい垂れていた。

警察が確保したTRE棟屋上でマスクをして撃つ

←60日余り占拠篭城している双龍車労組員たちが食べている唯一の食糧はにぎり飯だけだ。

外部では労組員らがパチンコなどを利用して警察などを攻撃していると報道されているが、これは事実の半分に過ぎない。実際に工場内で誰かを確認することができない人々が労組員らに絶えずパチンコ攻撃を浴びせている。‘トッ,タッ,パン’工場のあちこちで聞こえる音だ。暗い夜にはどこから聞こえてくる音なのかも分からない。周辺を見回せばどこかから飛んできたボルトやナット,破片などが地面にごろごろしている。眩暈がする。労組員たちは「会社側が雇った用役職員らが私たちを攻撃している」と話した。

しかし会社はこれを否認する。双龍自動車広報チーム関係者クァク・某氏は「用役職員100人余りが警備に立つために雇用されている。しかし労組員らに向かって暴力行為を指示したことはない」と説明した。誰も実態を認めない‘なぞの人物ら’が存在しているわけだ。

←占拠篭城労組員たちが塗装工場近くにコンテナをつないで作ったバリケード.

労組員と実体のない人々との戦争はこのように進行している。警察が確保したTRE棟と組み立て工場の建物屋上ではマスクをつけた2種類の人々が互いにパチンコを撃って攻撃している。30秒間隔でボルトとナットが速い速度で行き来する。失敗すれば当たる。そのまま運良く避けられれば幸いだ。警察は遠くでこの光景を見ているだけだ。確認されない人々と労組員らとのパチンコ戦争を警察は黙認してばかりいる。どこかでしきりに見た状景だ。去る1月ソウル,龍山4区域でだ。23日からは工場正門側より後門側での対立攻防が激しくなっている。

‘パチンコ戦争’が広がる間、警察ヘリコプターが飛び回り催涙液が入れられた袋を労組員らの頭の上に落とす。労組員らは頭に直接当たらないように避けるのに忙しい。袋が屋上の上に落ちると‘バン’と弾ける。あっという間に辛い粉が周辺を覆う。

“私はすでに‘死んでいる’…生き返ろうとすればここにいるしかない”

←ある労組員が警察がヘリコプターで落とした催涙袋が直接足に当たって皮膚がむける傷を負った。

警察は催涙袋を撒き散らすが、労組員らは痛憤をさく烈させる。チョン・ビョンギ双龍車労組組織部長は「警察は決して中立的ではない。用役らの後を世話して私たちを攻撃することを事実上助けている」として「私たちは二つの敵にぶつかっている」と話した。しかし、こういう場面は言論には報道されにくい。大部分の報道機関カメラが工場正門側にだけ配置されているためだ。

労組員らは毎日毎日乾いて行き憔悴する。水が切れガスも切れた。食糧まで切れた。食べることも洗うことも寝ることすらできない状況に追いやられた人々は少しずつ完全に体力がなくなっていた。せいぜい食べられるのはにぎり飯が全て。入る材料は粉海苔とツナ程度。今は備蓄した塩がみななくなり塩味すらないにぎり飯だ。水気が完全になくなりバサバサした飯を労組員らは喉にかろうじて押し込んでいた。パク・某(42)氏は「食べ物が切れやむを得ず食べる」と言って「飯がこんなだから、もっと食べると欲張る人もない」として苦笑いを見せた。

こんな程度では人が持ちこたえられる環境でない。‘辛くないか’という質問に大部分の労組員らは“大丈夫だ”と話す。

“生きるために戦うのです。私はすでに‘死んだ者’(彼らは会社側から解雇通知を受けた労働者をこのように呼ぶ)です。また生き返ろうとすればここにいるしかありません。”

組み立て工場の屋上で会社側職員らとパチンコ戦争を行ったチョ・ビョンノク(仮名.34)氏は自身の境遇をこのように表現した。10年間ここで仕事をした彼だった。一瞬で解雇通知を受けたチョ氏は「もう30代半ばになっていて行く所がない」と話した。崖っぷちに立たされたチョ氏の心情はそれこそ‘死んだ者’だった。

眠ろうとしても会社側で夜中に流す宣伝放送で眠れず

←占拠篭城を続けている双龍自動車労組員らが23日午後、京畿平沢市,七槐洞の本社塗装工場屋上で会社側と対話再開を要求する内容の文を工場建物壁面に書いている。平沢/キム・ミョンジン記者littleprince@hani.co.kr

“今のところは大丈夫だ”と話す労組員たちだが、彼らの顔は別の話をしていた。憔悴した彼らの姿に少しずつ疲れて行っている様子が目に映る。ひげは顔の半分を覆い顔色は黄金色に見える。からだは乾き皮膚病に苦しめられている。それでも彼らは疲れていきつつある姿を努めて隠している。

“率直に言って出て行きたいです。洗うこともできず、ご飯も食べられず眠れもしなくて死にそうです。だがそれでも出て行くこともできないのでもっと死にそうです。”キム・某(50)氏は「みな老いてしまった私がどこへ行くのか」として、どうすることも出来ない自身の境遇を訴えた。警察と会社側の孤立圧迫作戦が加速されるほどに、彼らの苦痛はますます大きくなっているように見える。

←労組員らが占拠篭城している塗装工場福祉棟のセメント床で休み寝ている。

彼らにとって最も大きな苦痛は睡眠不足だ。まるで難民収容所のような所で彼らは破れて捨てられたボロ切れのように、建物の底にバラバラに寝る。アルミホイルが唯一の寝具だ。それでもゆっくり寝ることはできない。会社側が明け方まで流す宣伝放送は彼らの就寝を妨害する。チョン・イングォンの‘行進’という歌が24時間ずっと流れる。ここで‘行進’は憎悪といじめの歌となっている。

労組状況室の無線機からは休みなしに無電内容が流れ出る。“(双龍車)家族対策委のお母さんたちがハンナラ党本部事務所を少し前に占拠し公権力投入中断を要求したそうです。”12時30分に飛びこんできた電報だった。労組員たちの顔に微笑が浮かんだ。身体は疲れていきつつあるが、外から飛んでくる家族たちの慰労に彼らはしばし流れる汗を拭った。

ホ・ジェヒョン記者catalunia@hani.co.kr

■薬も医療スタッフも遮断,負傷者二重苦

テイザー銃に撃たれた労組員 かろうじて絆創膏替えて
催涙液袋に直接当たって皮膚が赤く腫れあがる

労組員たちの占拠篭城が60日余り過ぎ負傷者も相次いでいる。数十人余りが皮膚病,打撲傷などに苦しめられている。だがきちんとした治療を受けることはできない。労組員らの核心活動空間である福祉館1階に用意された20坪余りの医務室には患者はあふれているが良い薬もなく医療スタッフもいない。

ただベッドや床に敷いた銀箔マットレスの上に横になって休むことが治療の全てだ。取材陣が医務室に立ち寄った時、ちょうど22日午後に工場正門側から警察が撃ったテイザー銃に撃たれ顔に負傷した労組員パク・某(37)氏が治療を受けていた。しかし職場同僚のシン・某(40)氏が絆創膏を取り替える程度しかできない。

パク氏は警察の弁明にあきれていた。京畿警察庁は「身体に火がついた同僚隊員を救出しようとやむを得ずテイザー銃を撃った」と弁明したが、パク氏は「身体に火がついた隊員はすでに警察が救出して行った後であり、テイザー銃を撃った状況はしばらく後のことだった」と話した。パク氏は「塗装工場付近の警備警戒所で一人の隊員がわずか2mの距離から私の顔を正照準して銃を撃った」と話した。パク氏は警察が撃った銃で顔に大きな傷を負い、警察の弁明にまた別の傷を負っていた。

24日午前10時。また別の患者が医務室を訪ねた。一方の足の皮膚がむけ鮮紅色の肌があらわになった患者だった。皮膚に水ぶくれができていた。警察がヘリコプターで落とした催涙液袋が足に当たった患者だった。警察は‘催涙液は安全だ’と説明するが、実際に催涙液を身体に浴びた労組員らの皮膚は赤く腫れあがっていた。労組員らは「酢のような酸成分を入れてばら撒いているのではないか」疑っている。

医務室を守っている労組員シン・某(40)氏は医療スタッフではない。ただ頭痛薬と下痢薬などを管理していて、訪れる労組員らをベッドに寝かせることが彼ができる全てだ。シン氏は「人道主義実践医師協議会から薬の種類に対する説明を聞いたことが全て」としてもどかしがった。だが仕方がない。警察が医療スタッフの出入りを源泉遮断してしまったためだ。患者らはただ寝床に横になり医務室の天井を眺めたまま自然治癒されるよう願うばかりだ。

ホ・ジェヒョン記者

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/367632.html 訳J.S