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[記者手帳]人員削減と同義語にされた韓国の構造調整

登録:2016-05-13 08:42 修正:2016-05-13 10:52
全国事務金融労組の組合員が11日、政府ソウル庁舎前で政府が造船や海運など経営破たん企業の構造調整のために推進する量的緩和は労働者構造調整用だとして中断を求める記者会見を開いている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 企業の事業構造や組織構造をより効率的に変える意味であるはず「構造調整」が、韓国で「人員削減」と同義語になったのはアジア通貨危機の経験があるためだろう。韓国で就業者数の統計が作成され始めた1963年以来、前年比就業者数が減少したのは4回ある。重化学工業構造調整があった1984年、クレジットカード事態が起きた2003年、グローバル金融危機直後の2009年に、それぞれ7万6000人、3万人、7万1000人が減少した。1998年のアジア通貨危機には127万6000人が減少した。当時の失業事態の規模を推し量れる。

 最近になり構造調整という単語が連日のようにマスコミに登場する。造船業ではすでに元請ー下請けー再下請けの構造の末端から仕事がなくり始めている。多くの専門家が、中国の追撃や急激な技術変化などの理由を挙げ、構造調整が造船・海運分野を越えて拡大しかねないと懸念している。

 しかし、この過程で生計を危うくされる労働者が最後に頼れる雇用安全網は穴だらけだ。最も基本的な安全網の失業給与の場合、非正規労働者や低賃金労働者の多くが雇用保険さえ加入できないでいる。加入していても失業給与を受ける期間が短く(平均3~4ヵ月)、金額も少ない(退職前平均賃金の50%)。経済協力開発機構(OECD)の中で最下位レベルだ。

 構造調整がより本格化する前に一刻も早く、政府、政界、労使が膝を交えて雇用保障制度を正さねばならないと指摘される理由がここにある。しかし、こうした声は構造調整の「不可避性」や「緊急性」ばかり強調する主張にかき消され、あまりよく伝わってこない。教授や経済官僚など、いわゆる専門家らは、「競争力のない分野は苦痛を受け入れるしかない」と冷ややかに語っている。

 何よりも奇妙なのは大統領と政府の態度だ。朴槿恵(パククネ)大統領は先月26日、「構造調整で押し出される失業者が派遣法を通じて早期に仕事を見つけられる」という派遣法を失業対策として打ち出した。10日には「公共機関の成果年収制をこれ以上先送りできない」と強調した。雇用労働部長官も12日、記者懇談会を開き成果年俸制の必要性を力説した。賛否を離れ、成果年俸制が今の労働分野で最も至急な課題であるか疑問だ。雇用部長官は失業対策と関連した記者懇談会を行ったこともない。

 スウェーデンで職場を失えば、直前の賃金の最大80%を最大15カ月まで失業給与で受け取れる。失業手当の対象ではない青年の労働者も現金支援(失業扶助)を受ける。政府が体系的な職業訓練と求職相談を通じて失業者の再就職を支援する「積極的労働市場政策」に、韓国の5倍ほどの予算を使っているのだ。ドイツ政府は操業短縮支援金制度を通じ、景気低迷時の企業が労働時間を減らして雇用を維持し場合、賃金の一部を支援している。2009年の金融危機直後、150万人の労働者がこの制度の支援を受けた。

 先日、ある多国籍企業で人員構造調整業務を担当した人に会って話を聞いた。「オーストラリアの工場を閉鎖することに決めたが、閉鎖の3年前からプログラムを組んでいます。最初の1年間で管理者が会社の危機状況を社員に地道に周知させていき、閉鎖2年前に公式に発表しました。2年間、社員の状況に合わせて転職のための再教育、訓練、相談などがされました」。韓国でも一部の工場を閉鎖されることになった。「6カ月前に発表しました。もっと時間が必要ではないかと上部に建議すると、『韓国ではそうしないでしょ』と言われました」。彼らが韓国でいい加減な対処をする理由は、私たちが互いにそんなことをしているためのようだ。

アン・ソンヒ社会政策チーム長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-05-12 20:40

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/743663.html 訳Y.B

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