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[ニュース分析]モランボン楽団公演中止と南北会談決裂で朝鮮半島情勢に逆流の兆し

登録:2015-12-14 01:36 修正:2015-12-14 08:06

 ここ数カ月、改善の動きを見せてきた朝鮮半島情勢が再び悪化しかねない二つの問題が11日午後、数時間の時差をおき相次いで発生した。一つ目は、「中朝友好の舞台」(宋涛・中国共産党対外連絡部部長)を演出するものとして期待が寄せられた北朝鮮のモランボン(牡丹峰)楽団が、北京公演直前に突然平壌に戻った事件だ。二つ目は、開城工業地区(開城工業団地)で2日間にわたり行われた第1回南北当局会談が決裂したことだ。それぞれ独立した出来事ではあるが、二つの事件の発生には様々な要因が作用したものと見られており、なかでも金正恩(キム・ジョンウン)労働党第1書記の“決心”が前提されていることから、注目を集めている。まず、モランボン楽団の公演取り消しは、今年10月の北朝鮮労働党創建70周年を前後とした劉雲山・中国共産党中央委員会常務委員の訪朝と金正恩第1書記との出会いをきっかけに、本格化していた朝中関係正常化の流れを遅らせたり、後戻りさせかねないという点で悪材料となる。また、南北当局会談の決裂は「2 +2南北高位級接触」による「8・25合意」の勢いを弱めたり、失わせるかもしれないという点で、別の悪材料となる可能性が高い。

北朝鮮のモランボン楽団が12日、北朝鮮に帰国するため中国北京のホテルから出ている。この日、北京の国家大劇院での公演を数時間後に控え、突然取り消しになったことが分かった=北京共同/連合ニュース

モランボン楽団の公演取り消し 

改善兆しを見せた朝中関係に影響及ぼす可能性も 
北朝鮮最高指導者の発言に対する批判が原因 
事件の波紋を収拾するには時間がかかる可能性も 

南北当局会談の決裂 

南北「8・25合意」の勢いが減る恐れも 
協議できる議題なく、接点見つからず

 12〜14日の3日間で予定されていたモランボン楽団の北京公演は、単純な文化交流ではない。北朝鮮はモランボン楽団と国家功勲合唱団の訪中責任者にチェ・フィ労働党中央委第1副部長を任命し、中国側からは、彼女らの北京公演主管機関として“党対党外交”を担当する共産党対外連絡部が参加した。今回の公演は、高度の政務判断による政治的なイベントであり、朝中最高位級の交流を準備するイベントとしての側面を持ち合わせていることを裏付けている。宋涛・中国対外連絡部長は今回の公演を「非常に重視」しているとし、華春瑩・中国外交部報道官は、「伝統の友誼を強固にするだろう」とはやした。北朝鮮メディアも2012年、金正恩第1書記の指示で結成された10人組の女性バンドのモランボン楽団の初海外公演を連日大々的に報じた。

 ところが、その公演が突然キャンセルされた。中国側は11日の深夜頃、官営の新華通信を通じて「工作(実務)の面で疎通に問題が生じ」と釈明した。北朝鮮はいかなる説明を行っていない。様々な説が飛び交う中、モランボン楽団の訪中以降に発生した“水素爆弾事件”に注目する必要がある。金正恩国防委員会第1委員長の「水素弾の巨大な爆音を鳴らせる強大な核保有国」(労働新聞 10日付1面)の発言について、華春瑩・中国外交部報道官が「関連当事国が情勢の緩和に役立つになることを、より多く行ってもらいたい」として、批判的な論評を出したのだ。北朝鮮の最高指導者の発言を中国外交部報道官が明らかに批判したことはあまり前例のない珍しい“事件”だ。華春瑩報道官の発言が、習近平国家主席ら中国最高指導部の意向とは無関係ではないものと思われるのも、そのためだ。これと関連し、北京のある消息筋は12日、「金第1書記の水素爆弾保有発言が出てから、中国側が(楽団の演奏を)観覧する人物を北朝鮮が要求した『少なくとも、政治局常務委員級』よりも地位が低い政治局員級を提案した。この報告を受け、金第1書記がモランボン楽団を撤収するように指示した」と述べた。水槽爆弾の発言をめぐる対立が中国側の公演観覧者の“格”(地位)をめぐる論議に飛び火したということだが、モランボン楽団の公演取り消しという突発的な悪材料の根底には、核問題をめぐる両国の長年の対立と意見の相違が横たわっている可能性があることを示している。

南側首席代表のファン・ブギ統一部次官が12日午後、北朝鮮の開城工団総合支援センターで開かれた第1回南北当局会談の結果を発表するために記者室に向かっている=開城/写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 第1次南北当局会談は、南北関係の安定的な改善までは長い道のりになること、また金剛山観光を再開するかどうかが、その主な試金石なるだろうということを如実に示した。北朝鮮が、北側の最大の関心事である金剛山観光の再開と、南側の最大の関心事である離散家族の再会などを一括りにして「同時推進、同時履行」を提案したのに対し、韓国は「離散家族問題と金剛山観光の再開の連携拒否」、朴槿恵(パク・クネ)大統領のドレスデン宣言による「民生、環境、文化の3大通路」を開設、開城工業団地3通(通信、通関、通行)の問題、非武装地帯(DMZ)における世界生態平和公園の建設などを提起した。交渉と合意の基本である“ギブ&テイク”が可能な議題がないため、接点を見つけるのがますます難しくならざるを得ない。特に韓国側が提示した議題に、北朝鮮が関心を示すと思われる“取引対象”が全く存在しなかった点が目を引く。

 牡丹峰楽団の突然の帰国と南北当局会談の決裂に伴う波紋が長期化するかどうかは、すぐには判断できない。ただし、北朝鮮が来年5月初め、36年ぶりに(7回)党大会招集を予告した状況からして、外部環境の安定化の必要性が高いという点を念頭に置く必要がある。南と北の当局は、来年初めに金正恩労働党第1書記の年頭辞、朴大統領の年頭記者会見の内容を検討してから、新しい模索に乗り出すものと見られる。朝中両国は、「朝中関係は、感情に振り回されない戦略関係」というチョン・セヒョン朝鮮半島平和フォーラム常任代表(元統一部長官)が指摘した通り、モランボン楽団の公演取り消し事件による影響を管理・是正するのに力を傾けるものと予想される。ただし、それにどのくらいの時間が必要となるかはわからない。

イ・ジェフン、キム・ジンチョル記者、北京/ソン・ヨンチョル特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-12-13 19:43

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/721645.html 訳H.J

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