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1948年は政府樹立でなく建国…憲法に反する内容が載る国定教科書に

登録:2015-11-04 23:53 修正:2015-11-05 08:11
国定教科書の編纂基準をめぐる議論
歴史関連学科の大学生で構成された「全国歴史学徒ネットワーク」メンバーらが4日午前、ソウル・世宗路の光化門広場で「来年、歴史教育を受ける私たちの生徒のみなさんに申し訳ありません」と書かれたプラカードを持ち記者会見を行っている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 国史編纂委員会が今月末に国定歴史教科書の中身になる編纂準拠を明らかにすると発表したことで、編纂準拠の輪郭に注目が集まっている。 「1948年建国論」などニューライト陣営の主張や民族のアイデンティティを過度に指向する在野上古史学界の主張など、歴史学界の異説が大挙盛り込まれかねないとする懸念が広がっている。

 4日、キム・ジョンベ国史編纂委員長は記者会見で、「教科書の編纂方向と編纂上の留意点が明確かつバランスよく提示する編纂準拠を開発しており、教科型書籍の編纂審議会の審議を経て、今月末に確定する」と明らかにした。

 国定歴史教科書の編纂方向は3日の確定告示の記者会見で、黄教安(ファン・ギョアン)首相とファン・ウヨ教育部長官が発表した内容がある程度示唆している。黄首相は検定韓国史教科書を批判し、「私たちは1948年8月15日、大韓民国の誕生を世界中に知らしめた。このような明白な事実について、大韓民国は『政府樹立』に、北朝鮮は『朝鮮民主主義人民共和国樹立』と記述した歴史教科書がある」とし「大韓民国はまるで国ではなく、政府団体が組織されたかのように意味を縮小した」と述べた。

今月末発表予定の国史編纂委員会の編纂準拠  
黄首相など「1948年大韓民国誕生」 
「1919年建国」憲法に違反 

光復節祝辞で偽書「桓檀古記」を引用 
朴大統領の意中、国定教科書に反映される可能性も 
「民族の誇り過度に強調される恐れも」

 これは、現行憲法と制憲憲法が認める「1919年建国、1948年政府樹立」の通説を否定して、一部のニューライトの学者を含む極右陣営が主張する「1948年建国論」をそのまま写したものだ。イ・ジュンシク民族問題研究所研究委員は、「これは反憲法的な主張で、一国の首相が主張したとは信じ難い」と批判した。現行憲法は、「私たちの大韓国民は、3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統を継承」すると明示している。 1948年の制憲憲法も「私たち大韓国民は、己未3・1運動で大韓民国を建立した」と明らかにした。

 黄首相のこのような歴史認識は、国定教科書の編纂準拠にそのまま反映されるものと見られる。キム委員長は4日のブリーフィングで「(黄首相が言及した)すべてのことが盛り込まれる予定で、不足があれば執筆陣の意見をさらに集約し、編纂準拠案を発表することになるだろう」と述べた。すでに9月に発表された中高校の歴史執筆基準試案は1948年「大韓民国政府樹立」を「大韓民国樹立」と修正して、歴史学界の批判に直面したことがあるが、このような内容が変更されるどころか、そのまま貫かれたり、強化されるものと見られる。

 ファン・ウヨ長官が3日の記者会見で明らかにした編纂方向も歴史学界に懸念を抱かせている。ファン長官は国定教科書の編纂方向として、上古史・古代史強化▽独立運動史の充実な記述▽民主化・産業化の客観的な評価▽民族のアイデンティティと誇りを育む記述を強調した。近・現代史の比重は縮小される。歴史学界では「上古史など古代史を強化するという部分は注視する必要がある」と指摘する。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領は就任当初から「上古史の定立方案を用意するように」指示し、上古史研究費として数十億ウォンを支援するなど、上古史・古代史研究に大きな関心を示してきた。 2013年の光復節祝辞では『桓檀古記』の一節である「国は、人間にとって体のようであり、歴史は魂のようだ」という一節を引用した。民族主義傾向が強い在野史学界で認められている『桓檀古記』は主流歴史学界では偽書と評価される上古史の歴史書として、議論の余地が多い。古代史を専門とするある史学科教授は「民族のアイデンティティ、民族の誇りを過度に強調する上古史は大衆的な情緒に便乗して爆発力を発揮しやすい。右派たちが国民を動員するのに悪用される可能性もある」と指摘した。

オム・ジウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-11-04 19:37

https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/715978.html 訳H.J

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