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[記者手帳]指定から6年…暗雲広がる大邱市の先端医療団地

登録:2015-11-04 09:55 修正:2015-11-04 10:01

 李明博(イ・ミョンバク)政権が4大河川事業に本格的に乗り出した2009年8月10日、韓国中南部の大邱(テグ)では天からとてつもないプレゼントが舞い降りてきた。忠清北道・五松(オソン)と共に、大邱が先端医療複合団地に指定されたのだ。大邱市民は「地方でも生きていく道が開かれた」と歓喜した。その年の春から釜山(プサン)、大田(テジョン)、仁川(インチョン)、光州(クァンジュ)など全国の10都市が死活をかけ指定の争奪戦を繰り広げた。それほどに先端医療複合団地は魅力あふれる未来に向けた産業である。

 今から20~30年くらい前まで、大邱は中南部の中心都市だった。歴代大統領の3人を大邱から排出した自負は強かった。当時、地元の慶北高等学校は全国でも指折りの名門学校とされ、同校出身者は韓国の政官界を一手に握った。だが、2000年代中盤以降、大邱は下り坂を歩み始める。都市を支えてきた繊維産業は斜陽に入り込み、借金は全国広域自治団体の中で最も多い。2003年春に192人が死亡した大邱地下鉄事件で市民は意気消沈し、士気も削がれた。青年は仕事を求め毎年1万人余りが首都圏に流れる。大邱が絶望の都市になるという嘆きの声を聞いて久しい。

 こうした中で決定された先端複合団地は、日照りに土地に恵みの雨となった。 大邱市は東区新西洞の革新都市周辺の土地100万平米に韓国最高の先端研究施設を誘致した後、2038年までに世界市場に出せる新薬と医療機器を開発する野心に充ちた計画を用意している。優れた新薬を一つでも開発できたら、その価値は想像を超えるものとなる。大げさなことを言うのが好きで恩着せがましい官僚らは、先端医療団地の生産増加効果を82兆ウォン(約8兆6千億円)、雇用創出効果が38万人になると性急に発表した。額面通り信じられないとしても、総事業費4兆6千億ウォン(約4800億円)は決して少ない額ではない。地方に入る国家産業団地建設費用が数千億ウォン台である点を考慮すれば、まさに超大型プロジェクトだ。

 だが、その先端医療複合団地に早くも暗雲がたちこめている。地域に指定されて6年、業務を推進する公企業の医療産業振興財団が出帆して5年の歳月が流れたが、建物はがらんと空いているほど事業に遅れが出ている。医療団地周辺に便宜施設はなにもないに等しい。地下鉄やバスなど公共交通は利用しづらく、乗用車で行っても道路標識版もなく道に迷ってしまう。

 先端医療複合団地に勤める公企業幹部職員も頻繁に席を外す。大邱市民が「ライバルの五松は100メートル競走ですでに30~40メートルくらい先を走っているけど、大邱はまだ眠ったまま」と皮肉っても、彼らには馬の耳に念仏のようだ。

グ・デソン嶺南チーム記者//ハンギョレ新聞社

 医療複合団地近くの「医療R&D特区」には医療団地で研究された新薬や医療機器を大量生産するため数社の企業が入居している。すでに稼動中の企業21社を調べたところ、事業場1カ所当たりの雇用人員は平均25人、年間売上額は45億ウォン(約4億7千万円)と集計された。世界市場を狙う最先端医療複合団地の生産基地の実態はみすぼらしい限りだ。「税金4兆ウォンをかけ田舎の村農工業団地を作るつもりか」と非難されても返す言葉すらない。

 本当に深刻な問題は別にある。先端医療複合団地の問題点を指摘することをダブー視する雰囲気が地域に広まっている。毎月会議を開いて追及する大邱市議員も、先端医療団地に関して黙り込む。地域の国会議員が嫌がるので話せないのだという。

 堕落と無能が重なった典型的な公企業の姿が目につく。そこへ批判の声まで封じ込まれ監視や監督もされないなら、先端医療複合団地の結果は火を見るより明らかだ。

グ・デソン嶺南チーム記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-11-03

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/715749.html 訳Y.B