本文に移動

韓国最高裁の弁護士成功報酬無効判決、「有銭無罪・無銭有罪」解消なるか

登録:2015-07-25 10:20 修正:2015-07-25 18:38
略式起訴で2億ウォン、宣告猶予なら1億ウォンの成功報酬
大法院全員合議体 =資料写真//ハンギョレ新聞社

「大法院判事の開業禁止・保守上限制など必要」
市民団体、並行して制度改善を要求
弁護士業界「手付金が高くなるだけ」

 大法院(最高裁)の刑事事件の成功報酬無効宣言は、法曹界にとり衝撃的だ。数十年も当然視されてきた「少ない手付金+多い成功報酬」の契約が、これ以上通用しなくなるためだ。大法院は高すぎる弁護士費用や「前官待遇」(裁判官や検察官経験がある弁護士の優遇)の弊害を減らす契機になると期待するが、司法不信の根本的な解消のためにはより徹底した努力が必要と思われる。

■  判事と医師の請託費用に1億ウォン

 今回の事件の原告ホ氏(38)は2009年、父親が57回も住居侵入し1億6900万ウォン(1円=9ウォン)の金品を盗んだ容疑で逮捕されると、弁護士のチョ氏を選任した。手付金1000万ウォンを支払い、釈放条件として礼金(成功報酬)を後で支払う約定を交わした。弁護士が裁判所に保釈を申請し、ホ氏は借金をして1億ウォンを支払った。父親に有利な精神鑑定結果が出るよう医師と判事に請託するためだった。

 ホ氏は、請託用のお金であり正当な報酬ではないとして返還訴訟を起こしたが、1審は「正当な弁護士報酬」として原告敗訴の判決を下した。以後、過度な受託料だったと主張し続け、控訴審がこれを一部受け入れ1億ウォンのうち4000万ウォンを戻す判決を出し、大法院(最高裁)がこれを確定した。今回の判決趣旨通りなら、1億ウォン全額を返還させることもできるが、大法院は宣告日の23日以後の約定から新しい判例を適用すると明らかにした。

■ わけがわからぬ成功報酬の世界

 成功報酬の世界は実に分かりにくい。被疑者の“クラス”により金額は千差万別で、より強い処罰を受けるようにするための契約まである。

 移動通信社の財務チーム長のノ氏は昨年、委託した会社資金を投機的会社債の買い入れに使えるよう許諾する代価として、証券会社の幹部から11億ウォンを収賄した容疑(背任受財)で起訴された。無罪宣告がされると約束した成功報酬の支払いを求め弁護士事務所が訴訟を起こした。ノ氏は手付金3000万ウォンを出してトップ10に入る大型弁護士事務所を選んだ。成功報酬は、検察の不起訴・略式起訴または、裁判所の無罪宣告の場合に2億ウォン▽宣告猶予や執行猶予宣告の場合に1億ウォン▽裁判途中釈放の場合に1億ウォン▽3年以下懲役または、検察求刑量の半分以下刑量宣告の場合に5000万ウォンと様々だった。別途の30億ウォン授受容疑を検察が立件しなければ5000万ウォンを与えるという特約も結んだ。

 ある殺人事件の被害者の家族は2012年、被告人に重い刑量が宣告されるため捜査機関に出す嘆願書と証拠準備などをチョン弁護士に任せた。手付金は700万ウォンだったのに、成功報酬は、控訴状が被告人に不利に変更されれば1500万ウォン▽懲役8年以上~10年未満なら1500万ウォン▽懲役10年以上なら2500万ウォンだった。大法院はこうした行為は弁論活動という弁護士業務の本質を逸脱して不合理だと指摘した。

 成功報酬は一見、努力に対する補償に思われるが、そうでない場合が多い。刑量や保釈または執行猶予などが裁判所の基準によって予想可能な水準で決定されるのだが、弁護士の特別な努力や裁判所との人脈の結果のように思われてしまうからだ。大法院は判決文で「事実とは関わりなく、多くの国民が有銭無罪・無銭有罪(お金があれば無罪、お金がなければ有罪)の悪習が今も存在すると信じている」とし、「成功報酬は刑事司法の公正性に対する誤解と不信を増幅させてきた」と指摘した。このため弁護士市場が法律的な助力を超えた「正義を売り買いする場所」と認識されることにもなる。

 また、大法院は「法律の知識が不足して訴訟の手続きに対する経験と情報もない多数の依頼人は、すぐに苦境から逃れようと高すぎる成功報酬を約束することがある」とし、成功報酬は“市場法則”が適用された取り引きと見なすことはできないと批判した。

■ 弁護士報酬基準の透明化など必要

 大法院は今回の判決で、前官待遇の弁護士を選ぶ傾向が弱まると期待する。長期的には、仕事をしただけの報酬を受ける時間制の保守や、“裁判何回以上”といった具体的活動に基づいた受託料の算定方式に向かうのが適切だ。

 だが朝三暮四になることも考えられる。成功報酬がなくなれば手付金が高くされるので、弁護士を選ぶ基準がより難しくなる懸念からだ。前官待遇を根絶するには、退任した大法院判事の開業禁止など、制度の改善が並行して行わなければならないとする指摘もある。大韓弁護士協会とソウル地方弁護士会は、高位職の判・検事出身の弁護士の前官待遇が司法不信の根本的な原因であるのに、大多数の弁護士が問題であるかのように責任を転嫁したと今回の判決を批判した。

 ホン・クメ法律消費者連盟企画室長は判決を歓迎しつつ、「基準がないために弁護士報酬が非常識に策定されるのが問題だ。ドイツなどには報酬上限制があり、私たちも基準を透明化させなければならない」と批判した。弁護士報酬の上限制は1949年の弁護士法制定当時からあったが、99年の規制改革で廃止された。

イ・ギョンミ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-07-24 23:14

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/701740.html?_fr=mt2 訳Y.B

関連記事