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[記者手帳]韓国スポーツ界躍進の陰に親の献身

登録:2015-07-23 11:56 修正:2015-07-23 16:48
チェ・ウンジョン選手(左から2人目)が20日(韓国時間)、アメリカ女子プロゴルフ・ツアーマラソン・クラシックで優勝後、父親のチェ・ジヨン氏(右)とともに同僚に祝福されている=資料写真//ハンギョレ新聞社

 外信を通じ20日転送された一枚の写真に胸を打たれた。同僚からシャンパンファイトされる女子ゴルファーと、彼女のキャディーと見られる中年の男性を撮った写真だった。優勝の感激がこみ上げゴルファーは肩を揺らして泣き、彼女を見つめるキャディーは涙をじっとこらえていた。万感胸に迫るキャディーの表情が特に印象的だった。

 写真の主人公は156回もの挑戦の末にアメリカ女子プロゴルフ(LPGA)ツアー大会初優勝を果たしたチェ・ウンジョン選手と、娘のゴルフバッグを持って7年余り共にゴルフ場を通った父親のチェ・ジヨン氏だ。警察官だったチェ氏は、娘が2007年にアメリカ2部ツアーに進出すると警察官を辞め、一緒にアメリカに渡った。プロゴルファーになるという娘の夢をかなえてあげるためだった。一時はLPGAで韓国の“ゴルフダディー”らは悩みの種のように扱われた。行き過ぎた入れ知恵で競技の流れを邪魔するという理由からだった。強圧的な訓練方法や過度な私生活介入を非難されることもあった。だが今は、チェ氏親子の事情はLPGAで美談として通じる。LPGAのホームページと現地メディアは、父親のチェ氏が「娘が優勝すればキャディーをやめる」と約束した理由を伝え、チェ氏の献身的な姿を感動的に紹介している。

チョ・ギソン選手(中央)が英国グラスゴーで開かれた2015年IPC世界水泳選手権大会で大会初日の13日、男子200メートル(S4等級)自由型で大会新記録を出し金メダルを取った後でポーズを取っている=大韓障害人体育会提供//ハンギョレ新聞社

 チェ氏親子ほどにはマスコミの注目を浴びなかったが、感動的な便りは他にもある。19日、英国グラスゴーで閉幕した国際障害者オリンピック委員会(IPC)世界水泳選手権大会で2冠王を勝ち取ったソ・ギソン選手と彼の母親だ。脳性マヒ障害者のソ選手は男子自由型S4部門(下半身運動機能がない等級) 100メートルと200メートルで金メダルを取った。特筆すべきは100メートルで大会新記録を打ち立てた点だ。脳性マヒのような先天的障害者は、切断障害などの後天的障害者に比べ運動能力が落ちる。運動に対する記憶が身についていないためだ。そんなソ選手が大会新記録をたて優勝したというのは、それだけ訓練量が多かったことを意味する。

 障害者が水泳をできる施設は韓国にそれほど多くない。ソ選手が京畿道・広州(クァンジュ)の自宅からソウルまで毎日2時間以上の距離を往復し訓練に専念できたのは、母親の献身があったから可能だった。

 大韓障害人体育会の新人発掘プロジェクトで選ばれる前まで、母親が体験した精神的苦労は言葉に尽くし難い。水泳は隠したい障害部位をすべて見せなければならない。母親は息子が世間の不便な視線に慣れるよう、一般学校に通わせた。だが、小学校3年生の時に問題が起きた。脳性マヒ障害者を初めて見たペアの生徒が、先生に泣きついてパートナーを変えてくれと訴えたのだ。大きく傷ついた彼は外に出ることさえ嫌がった。彼に再び水泳に専念できるようにさせたのは母親だった。「分別のない子供に何の過ちがありますか。(障害者に対する偏見は)すべて大人たちのせいでしょう」。21日、世界選手権大会を終え帰国する息子を迎えに出た母親が、当時を振り返りながら語った。

イ・チュンジェ・スポーツ部長//ハンギョレ新聞社

 障害者スポーツにおいて母親の献身は珍しい話ではない。挙動が不便でコミュニケーションがうまくできない選手たちにとり、母親はコンパニオンでありマネジャーとなる。訓練日程を組んで装備を管理し、時には心理治療や助言者の役割まで、母親は体が10個あっても足りない。いつかは一人立ちしなければならない子供の運命をよく知っているから、生きている間に力が及ぶ限り最善を尽くして面倒をみようとする。

 蒸し暑い天気が続くこの頃、チェ・ジヨン氏とソ選手の母親の存在は、夕立ちのようなすがすがしさを感じさせてくれた。ひょっとすると、この地のすべての親が子供たちのキャディーやマネジャーになることを求められているのもかもしれない。ますます世の中は世知辛くなっているから。

イ・チュンジェ・スポーツ部長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-07-22 18:33

https://www.hani.co.kr/arti/sports/sports_general/701328.html 訳Y.B

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