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[コラム]中国、実利外交のUターン

登録:2015-05-08 08:52 修正:2015-05-09 02:43

 「考えてみてください。外交舞台で国益や利益という単語を持ち出す国が中国以外のどこにあるかを」。中国勤務が長いある外交消息筋は、私席でこう話す。彼の言う通り、中国は唯一、外交事案を扱う時に「利益」という言葉を頻繁に使う。東・南シナ海での紛争をはじめ、米国との新型大国関係、サイバーハッキング問題でも「核心利益」という用語は外さない。

 最近の中国外交の歩みを振り返ると、利益または実利、あるいは打算による姿がはっきりと浮かび上がる。先月インドネシアのジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議で、習近平・中国国家主席は安倍晋三・日本首相と会い、軽く浮かべた微笑に機嫌を伺う挨拶までした。わずか5カ月前に北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会談の時とは正反対の姿だった。当時の習主席は、いかにも不快な表情だった。やむをえず会うようですらあった。外交的欠礼という話まで出てきたほどだ。

 しかし習主席はジャカルタでは「(中国が主導する)アジアインフラ投資銀行(AIIB)が国際社会の普遍的歓迎を受けている」と日本に加入を薦めた。AIIBは習近平政権が国策事業として推進する「一帯一路」(陸上・海上シルクロードでアジア・ヨーロッパ・アフリカを結ぶ中国中心の経済ベルト)構想の“金脈”だ。世界3位の経済力を持った日本の参加は、同行が名実共に国際金融機構の地位を備えるのに切実だ。中国の国益とも直結する。

 昨年7月の習主席の韓国訪問も振り返ってみよう。中国が慣例を破って“血盟”の北朝鮮より韓国を先に訪問したのは、実益を考慮したたに他ならない。中国は孤立した北朝鮮より、相互の主要な貿易・投資国家である韓国を選択した。北朝鮮が核実験を繰り返し中国の核心利益に反した側面もある。中国はアジアインフラ投資銀行の発足に支障をきたす恐れがあると考え、加入に関心を見せた北朝鮮を「国際的透明性が不足する」と排除したと伝えられる。中国が国益を守ることにどれほど神経を使っているかうかがい知れる。

 国益を追う巨大中国の急激な“Uターン”は、1970年代初め、米国との劇的な関係改善でも事例を見出すことができる。当時、共産主義宗主国ソ連との国境紛争は、中国を深刻な安保危機状態に追いこんだ。特に、ソ連が1968年にチェコスロバキアを侵攻したことで“ソ連の侵略”は現実の恐怖になった。中国は逆のカードを選ぶ。「帝国主義元凶」と批判していた米国を選んだのだ。対米関係改善を通じ安保の安全弁を用意する。帝国主義打倒、走資派(資本主義路線追求勢力)清算、修正主義撲滅というスローガンが絶頂を極めていた文化革命時期だった点を考慮すれば、中国のUターンは驚異的な転換だった。極端な理念の時代でも利益を求め続けていた。

 そこで考えてみたい。アジア周辺国外交で中国とだけ比較的友好的な関係を維持している韓国の立場が、どこか不安定に見えるのを。そのうえ中国とは、深刻な問題となる高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備問題までからまっている。中国はすでにTHAADの朝鮮半島配備が自国の核心利益を損なうと公表している状態だ。今後、中国がどう顔色を変える予断を許さない。北朝鮮とも核兵器開発が自国の利益に反すると距離をおいた中国である。

ソン・ヨンチョル北京特派員//ハンギョレ新聞社

 中国という“航空母艦”の外交の舵は、だんだん速くきられるようになった。とりわけ利益に関わったり、脅威を受ける状況が近づけば、予想を裏切り敏捷に方向舵を回す。対米、対日、対ロシア外交がすべて空回りしている今、灯台の下でなされる韓国の外交を慎重に見直さなければならない理由だ。

ソン・ヨンチョル北京特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-05-07 18:31

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/690196.html 訳Y.B

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