試験重視の人事制度も影響
係長が後輩に会って“三顧の礼”
仕事より生活を重視する雰囲気が蔓延
手当ての拡充など切実な誘引策
「出て行きたいという人は列をなすけど、来たいという人は誰もいない」
強力係(強行犯を扱う捜査一課に相当)の経歴が30年になるソウル地域の警察署の強力係長がため息をついた。先月の警察定期人事の際、強力係の陣容を立て直そうとありとあらゆる苦労を重ねてきたからに他ならない。彼は管轄の地区隊と派出所を訪ね歩き、強力係への志願を嫌がる後輩と向き合い「三顧の礼」も拒まなかった。「『絶対に危険なことはさせない』『非番保障をするよう努力する』と約束して刑事様を迎え入れた」と打ち明けた。
一線の警察署の強力係刑事が、犯人探しならぬ「後輩探し」に乗り出した。殺人、強盗、窃盗など凶悪事件を担当し、一時は“警察の花”とまでもてはやされた強力係を嫌がる雰囲気が蔓延するようになったためだ。昨年の警察官公開採用試験の競争率は17対1に達した。警察官を志望する人は多いが、警察官になった後に刑事を志願する人は少ない。そのため強力係に一度足を踏み入れてしまえば抜けるのが大変だ。古参刑事は「強力係を出て行くなら“代打”を探してからにしてくれ」と半ば脅迫までしなければならない始末だ。
強力係を嫌がる背景には辛い勤務環境がある。ソウル地域の警察署強力係は5~8個のチーム(チーム当たり5人)で組まれている。チーム別に順繰りで一日ずつ当直をして、翌日は非番となる。だが、防犯カメラやブラックボックス(車載カメラ)の映像、関連者の陳述を確保して現場で聞き込みをしていると 非番であっても休む時間はあまりないと刑事たちは口をそろえる。防犯カメラが犯人検挙に決定的な役割を果たすようになったが、“先輩”たちがしてきた仕事とは違って、数百時間に及ぶ録画映像を目を皿のようにして見続ける重労働が加わった。
ある警察署の強力チーム長は16日「防犯カメラやブラックボックスが増えて捜査は容易になったけど、現場を回ってカメラの位置を把握したり市民に映像を見せてくれと頼むのも容易ではない。画質が悪かったり死角地帯があり、証拠として採用されるのもそれほど多くない」と話す。
強力係の刑事は犯人検挙のため出張や潜伏を度々行うので、勤務スケジュールなど本人さえ分からない。「息子の年齢をよく忘れてしまう」と語る40代のベテラン刑事は強力係が嫌がられる原因として「家庭や個人の生活を重視する雰囲気」を挙げた。若い警察官は勤務交代時間が正確な地区隊や派出所、“面倒な考え”をしないですむ集会現場の秩序維持の任務を遂行する機動隊を好むという。
昇進の半分を試験で選ぶ警察人事制度にも問題がある。試験勉強時間を多く確保できる部署で働くほうが、現場を足で回っているより利益になるためだ。ある警察署の刑事課長は「『地区隊に移動させなければ辞表を出す』という強力チーム刑事の代打を探すため、電話を20本くらいかけた。実績のある警察官など考えも及ばず、何も知らずに刑事を一回ぐらいやってみたいと思う若い職員を探し出し、一つひとつ教えながら仕事をしているのが実情」とぼやく。
こうした現象は治安悪化につながることにもなる。定年を控えたある捜査課長は「若い刑事が少しだけやって出て行ってしまうと、経験あるベテラン刑事を生み出すのが難しくなる」と憂う。別の警察署刑事課長は「人員や手当てを増やすなどの誘引策を補完する必要がある」と指摘した。カン・シンミョン警察庁長官は「熱心に試験勉強をする人より仕事ができる人を昇進させる」という人事原則を明らかにしている。
韓国語原文入力:2015.03.16 20:42