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[平昌冬季五輪分散開催] 組織委員長「天変地異でもない限り分散なし」

登録:2015-03-11 20:54 修正:2015-03-12 06:49
 朴大統領と崔知事が「分散反対」
 「来年総選挙、地域世論を意識」との解釈
 市民社会などの合理的な意見は黙殺
 IOCは「経済五輪」提唱しているのに
 韓国体育界指導者たちは傍観
ボブスレー・スケルトン・リュージュ競技場として利用される2018年平昌冬季五輪のスライディングセンターの工事が先月25日、江原道平昌郡大関嶺面龍山里で行なわれている。 平昌/ニューシス

 平昌(ピョンチャン)冬季五輪組織委員会の趙亮鎬(チョ・ヤンホ)委員長が五輪分散開催について否定的な立場を表明した。 趙委員長は9日、国立現代美術館のソウル館で開かれた記者懇談会で「天変地異がない限り、分散はない」と明らかにした。 趙委員長は「いま分散開催を議論するのは、国民の混乱を招き、国際的信頼度を落とすことになる」と主張した。 政府側の立場も同じだ。 文化体育観光部の高位関係者も「もう終わった話だ。 私の知る限り分散開催はない」と釘を刺した。

 政府や組織委員会が分散開催を極度に嫌う理由は、経済的側面で分散開催を見ていないためだ。 でなければ、男女アイスホッケー場、加里王山(カリワンサン)の滑降場、フィギュア・ショートトラックスケート場など4カ所を移すだけでも工事費だけで3658億ウォン(約400億円)減らすことができる合理的な代案を放棄する理由がない。 大会後、数百億ウォンをかけて男子アイスホッケー競技場と開・閉会式場の一部施設を撤去しなければならないにもかかわらず、ブルトーザー式にゴリ押ししている理由は何だろうか。 平昌組織委の関係者は「分散開催が経済的に効率的な側面はある。 しかし、分散開催は組織委のレベルを越えた政治的判断の問題だ」とした。

 政界が冬季五輪を眺める視角は、昨年12月15日、 朴槿恵大統領が大統領府首席秘書官会議を主宰した際の発言に集約されている。 朴大統領が「分散開催の議論は意味がない」と明らかにした後、政府省庁で自発的になされていた国内分散可能性の模索も芽が摘まれてしまった。 経済的効率性よりも政治的決定が上位にあるためだ。 崔文洵(チェ・ムンスン)江原道知事も1月2日の新年記者懇談会で「南北分散開催など分散開催についての論議はすでに終わった話だ」と明らかにした。

 中央政府の財政が10兆ウォン以上投入される国家的事業で国民的関心が高く、財政自立度の低い地方政府の赤字負担が増えることが明々白々であるにもかかわらず、政府が原案を固守する理由はどこにあるのか。 一部では来年予定されている総選挙がスポーツ政治に影響を及ぼしていると解釈する。 政界がもしや分散の話を切り出した場合、「江原道五輪」という観念が強い地域住民の逆風にさらされかねないということだ。 与野党いずれも、票を意識するのは同じだ。 仁川(インチョン)や全羅南道がメガスポーツイベントを開催したあと、借金の山で市民の福祉予算を削減する状況になっても、それは大会後の、後任者の任務となるだけだ。 誰が見ても常識的な決定が正しい決定だということは分かるけれども、政界に重要なことは当面の世論であり、有権者の気持ちだ。

 もとより江原道民全体が原案固守に賛成しているわけではない。 江原道内でも地域や利害関係によって分散案に対する選好が分かれることはある。 事後管理費用が大会開催に投入される中央政府の財政投入の効果より大きい所では、分散が現実的だ。 江陵(カンヌン)市は今年初め、男子アイスホッケー競技場の原州(ウォンジュ)への移転も検討した。

 大統領の「分散開催論議は終わった」という発言は、後々まで足を引っ張っている。 組織委員会や文化体育観光部の内部にも分散開催の合理性を認める人はいる。 しかし、声を出すことはできない。 学界や体育団体が討論を要求しても対応がない。 リュ・テホ高麗大教授は「市民社会で声を上げても、政界は聞こうとしない。 大統領の決断が重要だが、誰も口に出そうとしないようだ」と言う。 体育団体のある関係者も「分散が極めて現実的かつ合理的という見積もりが出た。 それでも文体部や組織委員会は政権の顔色ばかり伺っている」と皮肉った。

 経済オリンピック・持続可能性を核とした国際オリンピック委員会(IOC)の「アジェンダ2020」は、困難に直面しているIOCが悩んだ末に出したものだ。 2020年からとはなっているが、平昌が主体的に活用してオリンピックの舞台で新しいモデルを作り出すことは可能だ。 オリンピックの開催が重要なIOCは、ひとまず韓国政府と組織委員会の原案固守の主張に賛同の意を表している。 しかし、政府が分散案を検討するなら、冬季五輪のパラダイム転換を提示しただけに、受け入れる可能性は開かれている。

 政府や組織委員会が分散開催反対の立場を重ねて明らかにしたにもかかわらず、“分散開催論議”は続いている。 ハンギョレが「国内分散開催案」を建築設計会社と共に具体的に検討した結果、分散開催が可能なマジノ線は最大2カ月後だ。 この期間内に発想の転換をすれば良いのだ。 IOC平昌調整委員会のグニラ・リンドベリ委員長がこの17~19日に五輪準備状況点検のために江陵に来る。 この機会に分散案についての初歩的な話をすることもできる。 リュ教授は「施設や経済性よりもっと重要なことは、大会後に持続する累積赤字だ。 五輪が怪物遺産として残ることが火を見るより明らかなのに、果たして誰が責任を取るつもりなのか分からない」と指摘した。

キム・チャングム、ユン・ヒョンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/sports/sports_general/681544.html 韓国語原文入力:2015/03/10 11:12
訳A.K(2444字)

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