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[朴槿恵政権の2年]口先だけの「朝鮮半島信頼プロセス」

登録:2015-02-26 23:16 修正:2015-02-27 07:01
 対北朝鮮ビラ放置で南北間信頼にヒビ
  漣川住民「また銃撃ってくるか不安」
ある地域住民が24日昼、京畿漣川郡中面事務所内の「北朝鮮軍による高射機関銃着弾地」を指差している。北朝鮮は昨年10月10日午後漣川地域である保守団体が飛ばした対北朝鮮ビラ散布用大型風船に向かって高射機関銃を発射した。漣川/ギム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 軍検問所を過ぎると広い野原が広がっていた。黄色の稲わらが敷かれた水田のあちこちに天然記念物のタンチョウの群れが戯れていた。 「私たちの村ではハトムギ作りが盛んだが、タンチョウはハトムが好物だそうです」。住民キム・ハギョン氏(61)が水田の隣の山裾にあるハトムギ畑を指さした。

 24日、京畿道漣川(ヨンチョン)郡 中(チュン)面 横山(フェンサン)里を訪れた。臨津川沿い民間人統制線内に位置しているが、ほかの農村ののどかな冬景色とあまり変わらない。「地雷を取り除き、田畑にしましたが、数十年もの間、国境地域の殺伐な緊張感は感じられませんでした」。キム氏夫妻は1986年に忠清南道天安(チョナン)から移住して以来、一度も軍事衝突に巻き込まれたことがなかったと話した。春になったら種を撒き、秋になったら収穫して、一男一女を育て上げた。

 しかし、昨年10月10日以来、多くのことが変わってしまった。その日、キム氏は収穫の時期を迎え、忙しく稲を刈っていた。午後3時になる直前、銃声が聞こえた。 「周辺軍部隊で射撃練習をしていると思いました。ところが、4時40分ごろ、軍部隊が『実際の状況』だとしながら、避難命令を出そました」。当時里長を務めていたキム氏は、町役場の隣の地下シェルターを開き、住民と一緒に避難を始めた。避難命令は、夕方7時頃解除されたが、多くの住民は不安な気持ちを抑えきれず、町役場で一緒に夜を明かした。彼は、「村は1972年にできたが、76年の『8・18事件』の時に漣川邑内に避難に出たことを除くと、非難命令は初めてだそうだ」と伝えた。戦争一歩手前に発令される「デフコン2」が出された。8・18ポプラ事件以来、最も緊迫した瞬間が横山里住民の前に繰り広げられたのである。

 北朝鮮軍はこの日、南脱北者団体が漣川郡から飛ばした「対北ビラ」散布用バルーンを撃ち落とすために、韓国のバルカン砲に似ている高射機関銃を発射した。このうち一発は民間人統制線から100 メートル離れた漣川郡中面事務所の庭に落ちた。イム・ジェグァン面長は「ある職員が「『ドカン』という音と一緒に破片が飛び散るのを見て出てみたところ、中指の太さの銃弾が打ち込まれていたとして軍部隊に通報した」と話した。直径3センチの大きさの円形に凹んだ着弾地点には、透明のアクリルでできた半円蓋が被せてある。「北朝鮮軍による高射機関銃の着弾地点」という案内板も立てられている。

 「漣川銃撃」は、李明博(イ・ミョンバク)政権当時の2010年11月の延坪島(ヨンピョンド)砲撃以来、再び北朝鮮軍の火力が民間人居住区に向かって火を放った事件だ。李明博政権の対北政策と差別化を掲げた朴槿恵政権の「朝鮮半島信頼プロセス」の公約が李明博政権と同じ失敗の二の舞を踏んでいることを示してくれる事例だ。朴槿恵政権は強い安保をもとに対話と協力を通じて南北間の信頼を形成し、統一の基盤を構築すると約束したが、結果は民間人さえ危険にさらした武力衝突として現れたからだ。

 昨年ビラ乗せたバルーンに向かって発射された北朝鮮の銃弾
 町役場の中庭に落ちる
 「表現の自由も良いが
 人が死ぬかもしれない問題
 放置する国がどこにあるのか」

 昨年高位級の接触と離散家族の再会成功、北朝鮮の実勢3人組の訪韓などでしばらく点滅状態だった南北関係の改善の希望は、「漣川銃撃」で消え去った。北朝鮮は「漣川銃撃」の一月前、「対北ビラをばら撒いたら、挑発原点を焦土化する」と威嚇した。しかし、政府は、対北朝鮮ビラ撒きが「表現の自由」に当るとし、事実上放置した。経済正義実践市民連合は最近出した「朴槿恵政権3年目の大統領選挙公約履行の評価」で「政府が対北朝鮮ビラ撒きを事実上傍観し、南北関係の改善の機会を逃した」と苦言を呈した。

 横山里住民たちは政府の無能と無責任を糾弾した。キム・ハギョン氏は「『表現の自由』も良いが、人が死ぬかもしれない問題を放置する国が世界のどこにあるのか」と語る。現里長のウン・グムホン(66)氏は、当時、南北関係の管理だけでなく、安全の備えにおいても政府の無力が明らかになった指摘した。彼は「当時、実弾が中面事務所に落ちたが、わが軍のものか、北朝鮮のものかもわからず、1時間半後になってようやく避難命令が発令された」と話した。その間村からわずか2キロ離れた軍事境界線の上で南北が数十発ずつ銃弾を打ち合う交戦状況の中、しばらくの間住民が放置されたというのである。地域経済にも大きな打撃を受けた。イム面長は「若年層が多く利用していた『ロハスキャンプ場』が営業を停止するなど、観光·宿泊業が大きな被害を受けた」と話した。ユン・ヨウンボム副面長も「地価も下落して住民たち不満が溜まっている」と話した。

 「朴槿恵政権の3年目迎え一方主義脱皮しなければ 」

 リュ・ギルジェ統一部長官は最近の講演で「これまでの2年間、朝鮮半島信頼プロセスは、ご存知のように大きな進展が見られなかった」と事実上の失敗を自ら認めた。統一・外交分野の中心公約である朝鮮半島信頼プロセスがうまく進まないことで、「北東アジア平和構想」と「ユーラシアイニシアチブ」などの関連構想も効果を見られない。専門家の間では、北朝鮮側には信頼構築を求めながら、北朝鮮が極度に反発する「対北ビラ散布」に対しては知らないふりをする矛盾から脱皮しなければならないという注文が出ている。キム・ジンヒャン カイスト未来戦略大学院教授は「朴槿恵政権が3年目を迎え、一方主義的アプローチから脱却しなければならない」と指摘した。漣川住民はもっと切実だ。キム・ハギョン氏は、「もうすぐ春なのに、またビラを飛ばしで銃撃があるかもしれないと思うと、不安だ」とし「緊急事態さえがなければ、ここも天国なのに、そのようなことを気にせず農業に集中できるよう、政府に助けてもらいたい」と話した。

漣川/ソン・ウォンジェ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015.02.26 20:25

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/679963.html  訳H.J

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