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韓国最高裁、国家情報院の「内乱陰謀事件」不法捜査を容認

登録:2015-01-26 00:48 修正:2015-01-26 13:31
「手続き違反した程度大きくない」
「令状提示不可能な状況」との理由で
「刑事訴訟法の原則無力化」との批判
「事件の特殊性などを考慮」との反論も
去る22日午後、ソウル瑞草区大法院大法廷でイ・ソクギ前統合進歩党議員などの内乱陰謀事件の上告審宣告公判が開かれている。写真共同取材団 //ハンギョレ新聞社

 大法院(最高裁判所)がイ・ソクキ前統合進歩党議員の「内乱陰謀事件」で違法性論争を引き起こした国家情報院の捜査過程を「納得できる」と幅広く認めたことで、過剰捜査を促しかねないとの懸念が出ている。人権侵害を防ぐために厳格な手続きの遵守と情報を要求してきた刑事裁判の流れに逆らう判断だからである。

 22日宣告されたイ前議員事件の判決文によると、国家情報院は2013年8月にイ前議員の自宅の家宅捜索を1時間20分の間に参加人なしで行った。刑事訴訟法第123条は押収捜索時に、当事者や建物管理人を同席させるか、彼らがいない場合は近所の人や住民センターの職員でも参加させるように規定している。ねつ造や過剰押収捜索を防止するためだ。

 大法院は判決文で「この部分の家宅捜索は刑事訴訟法に違反する」と明らかにした。しかし、「最初の30分ほどは参加人なしで調査手続きを進めていたが、すぐにイ前議員の補佐官に連絡した。 (それから)50分後、補佐官と弁護人が現場に到着し、押収物を確認過程に積極的に参加した」とし、「家宅捜索全過程が録画された点などを考慮すると、手続き違反の程度が大きくなく(当時押収物品を)有罪認定の証拠として使用することができる」と述べた。

イ・ソクキ前議員事件の捜査における適法手続き違反の議論と大法院の判断。 //ハンギョレ新聞社

 これに先立ち大法院は2007年、「原則として違法に収集された証拠は、有罪の証拠として使用することができない。ただし違反の程度と実体的真実究明の価値を考慮して証拠能力を認めるかどうかを決定しなければならない」という基準を提示した。今回の判決は、「この程度の手続き違反ならば、深刻な水準ではない」と判断したものである。

 国家情報院はまた、イ前議員などに押収捜索令状を提示していなかったが、これも「処分者には必ず令状を提示しなければならない」という刑事訴訟法(第118条)の規定に反する。それでも大法院は、「被疑者が現場にいない場合など令状提示が現実的に不可能な場合には、令状を提示しなくても違法とは言えない」と、法の規定とは異なる判断を下した。

 大法院のこのような判断を巡り、適正手続きを守らなかった捜査に対し寛大すぎるのではないかという指摘が出ている。当事者の参加権は、家宅捜索手続きの核心的な部分と言えるが、これに違反した行為まで認めてしまったためだ。イ・ホジュン西江法学専門大学院教授は「映像を録画をしたとしても手続きの正当性は保証されない。当事者が現場で問題提起できる権利を奪われたというのが重要である。これは重大な侵害なのに『問題がない』とした大法院の判決は、捜査機関の利便性を過度に広げることで、捜査で適法手続きを遵守しなければならないという刑事訴訟法の原則を無力化すること」だと述べた。

 大法院は、民間人情報提供者が国家情報院に代わって2013年5月12日のいわゆる”合井(ハッチョン)洞会合」に参加し、イ前議員の発言を録音した行為も違法ではないと判断した。通信秘密保護法は、「監聴は捜査機関が執行する」と規定している。しかし、大法院は、「法の趣旨を考慮すると、第3者の助けを借りずには会話の録音が不可能な場合、第3者の協力を得られると見るのが妥当だ」と判断した。同法には録音委託の規定はないが、委託しても構わないと判断したのだ。パク・ギョンシン高麗大法学専門大学院教授は「公的責務がない人が録音した場合、会話を記録する範囲が広がるなど、個人情報の流出被害が大きくなる恐れがある。警察が用役を動員して公務を執行するときに発生するリスクと似ている」と述べた。

 刑事訴訟法第308条2項は、「適法な手続きを踏まずに収集した証拠は証拠になり得ない」と規定している。 2007年に新設された条項に、捜査機関の証拠ねつ造や過酷行為などを防止するために導入したものだ。昨年の「ソウル市公務員スパイ事件」の証拠ねつ造をめぐる論議は正当な証拠収集の重要性を端的に見せてくれた事例だ。しかし、大法院が今回の捜査過程における違法に目をつぶったのは、法律条項をそのまま適用すると、結局処罰が困難になるためであると思われる。

 一方、この条項を過度に厳しく適用するのは無理との見方もある。証拠収集の過程でのいくつかの欠陥のせいで全体の証拠を使えなくなった場合、重要犯罪の処罰に困難が伴うということである。カン・ドンウク東国大学法学部教授は「おそらく大法院が内乱扇動・国家保安法違反という事件の特殊性などを考慮したものと思われる。個々の犯罪ごとに事情が異なるため、今回の判決で一般的な場合まで過剰捜査が認められることはないだろう」と述べた。

イ・ギョンミ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.01.25 20:37

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/675172.html  訳H.J

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