拷問の被害者であっても民主化運動補償金を受け取ったなら、国から賠償を受けられないとした大法院(最高裁)全員合議体の判決は、過去の歴史清算に関連した賠償に相次ぎブレーキをかける流れの延長線上にある。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の歴史清算に足並みを揃えてきた大法院は保守勢力が政権を握ると態度を変え、朴槿恵(パク・クネ)政権が誕生してからは露骨に国の責任を軽減している。
大法院は今回、「民主化運動の過程で被った被害について補償金を受け取ると、裁判上の和解と同一の効力が及ぶ」との民主化運動補償法の規定を拷問と苛酷行為の被害者にも適用できると判断した。大法院は昨年、補償金を受け取ったなら、それとは別に損害賠償請求を通じて慰謝料を受け取れないとし、賠償の範囲を縮小した。続いて緊急措置による捜査・裁判そのものが不法行為ではないとし、拷問と苛酷行為が立証されない場合は、国の賠償を受けられないと判決を下した。
大法院の判決は主に下級審で賠償を命じた判決を翻す内容である。判例を詳しく調べてみると、国に逃げ道を見出す論理を一つずつ”開発”し、賠償の範囲を大幅に縮小する過程を踏んでいる。今回の判決は、不法行為に対応する賠償と好意からの補償を区別しなかったという点でも、常識的なレベルの批判が予想される。寝かせない、殴打、脅迫などの拷問と苛酷行為の被害を被って投獄された人に、生活支援金を受け取ったから、その痛みのための別の慰謝料は支払う必要ないということだからだ。
さらに、大法院が判断の根拠とした民主化運動補償法の規定は、現在の憲法裁判所が違憲かどうかを審査している。ソウル中央地裁は昨年6月、似たような争点の事件で「補償と賠償は厳格に区分されている概念なのに、合理的な理由もなく国家賠償請求権を制限した疑いがある」とし、憲法裁判所に違憲法律審判を提請した。大法院は「生活支援金を支給された人は所得が相対的に低いのに、この条項通りならば、むしろ経済的に余裕のある人だけが国家賠償を受ける逆差別問題が発生する」と指摘した。憲法裁の判断がまだ下されていないのに、大法院は急いでこの条項に問題がないと宣言してしまったわけだ。
「民主化補償金受け取ったら和解と見なす」
国家賠償請求権を防ぎ
過去事委員会の決定文を証拠として認めないことも
政府は2000年、民主化運動補償法を制定し民主化運動の過程で被害を受けた人々に最大5000万ウォン(約550万円)まで補償金を支給してきた。 5年後に「真実和解のための過去事整理委員会」が発足し、拷問・捏造により不当に有罪判決を受けた事件の真実の究明が本格的に行われた。しかし、名誉回復と補償のためのフォローアップ作業もなく活動が終了された。被害者たちはそれぞれ再審を請求して無罪判決を受け、これを根拠に国を相手に損害賠償訴訟を起こしてきた。
ところが、保守勢力は予算がかかり過ぎると、反対世論を煽った。李明博(イ・ミョンバク)政権発足後、大法院は賠償請求権を制限する判例を作り始めた。朴槿恵政府が発足した2013年からは本格的に賠償請求が困難になっている。国に対する損害賠償請求可能期間を過去事委員会の決定後3年から6カ月に大幅に短縮させ、「過去事委の決定文も充分に立証されなければ、証拠として認められない可能性がある」との判例も一緒に作った。数十年前の事件について、被害者側により厳格な立証を求めているのである。昨年10月、緊急措置を適用した捜査・裁判そのものには不法行為の責任がないとした判決は、「賠償を受けるためには数十年前に拷問された証拠を提出せ」と要求するもので、批判を受けた。
このような傾向は、損害賠償訴訟で国を代表する検察が、被害者たちの代理人を務める弁護士が過去事委などで自分たちが扱った事件を担当したとし、弁護士法違反の疑いで捜査を行っているのにも通じる。ある弁護士は「過去の訴訟のほとんどが朴正煕政権の時に行われたことに関連するものだ。朴槿恵政権と『過去事の反省』で衝突せざるを得ない。司法が政権の態度に同調している」と述べた。
韓国語原文入力:2015.01.23 20:07