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[ニュース分析]韓国スターバックスの値段が最高で時給が最低な理由

登録:2015-01-16 01:52 修正:2015-01-18 17:50
ソウル-、ニューヨーク、東京の販売価格・人件費比較
雇用労働部長官、どうしてこんなことが可能なのでしょうが?
スターバックスのカフェアメリカーノ。//ハンギョレ新聞社

 4100ウォン(約450円)、2.45ドル、340円。

 市民団体「消費者市民の会」が明らかにしたスターバックスのアメリカーノ(355ミリリットル・トールサイズ、以下スターバックス・アメリカーノ)1杯の韓国、米国、日本の価格です。消費者市民の会はスターバックス・アメリカーノはもちろん、チリ産のワイン、炭酸水、牛肉などのソウルでの販売価格が全世界の最上位圏だと発表しました。しかし、ポータルサイトを見ると、関連記事に付いたコメントにはスターバックスと呼ばれる特定の企業に対する非難が多くありました。それだけ韓国人がコーヒーの値段に敏感に反応しているという話でしょう。コーヒーはいつのまにか嗜好品以上の意味を持つものになったのですから。

 議論を意識したようスターバックスの関係者は、「人件費、家賃、マーケティング費用などから違いが生まれる」と発表しました。果たしてそうなのでしょうか?そこで『ハンギョレ』は韓米日のスターバックスの人件費がどのくらいなのかを比較し、スターバックスの釈明に整合性があるかどうか確かめてみようと思います。

新宿スターバックスのアルバイト募集。//ハンギョレ新聞社

■米国と日本に比べて人件費が低いのに相変わらず「人件費のせい」

 職場評価サイト「グラスドア」などによると、米国ニューヨークのスターバックス・バリスタの時給は10ドルほどで知られています。東京のスターバックスはインターネットに各支店ごとの時給を公表しています。東京都心新宿一帯のスターバックス・バリスタの時給は910〜1110円で、見習い2か月間は890円を支給するものとされています。現在、韓国のスターバックス・バリスタの時給は5700ウォン(約620円、1ウォンは約0.11円)です。今年の法定最低賃金5580ウォンよりほんの少し高いです。

ソウル、ニューヨーク、東京のスターバックスのバリスタ時給。//ハンギョレ新聞社

 スターバックスではバリスタのみ働いているわけではないので、目に見える時給を比較しただけでどの国のスターバックスの人件費負担が大きいかを決めるのは難しいです。しかし、1人当たりの国民所得などの指標に照らしてみると、管理や輸送などの店舗外で働く従業員の賃金が米国や日本よりも高いとは言い難いでしょう。主要国の中で労働力を安く買い取ることで有名な韓国で、少なくとも「人件費のせい」にしてはいけないのではないでしょうか。

 一方、スターバックス・コリアはこれについて「スターバックスは現在、すべての店舗を直営して無期契約職以上の正社員の割合が99%で、彼らに4大保険と週休手当のほかに食事代、賞与、成果給などを支給している」とし、「様々な福利厚生も与えている点を勘案してほしい」と釈明しました。

■韓国と日本は「何ドル」のアメリカーノを飲んたのか

2012〜2013年スターバックス・ジャパンのカフェアメリカーノ価格。//ハンギョレ新聞社

 韓国で2012年に3600ウォンだったスターバックス・アメリカーノは、2013年には3900ウォン、2014年には4100ウォンに、着実に価格を上げてきました。同様に、外国のブランドを持ち込んだ日本の事情はどうだったのでしょうか?スターバックス・ジャパンの過去のデータによると、2012年初めから2013年末まで、スターバックス・アメリカーノは2年間ほど360円の価格を維持したことがわかりました。

 企画財政部の「通貨別為替レート調査統計」で発表された年度別為替レートに基づいて韓国と日本の消費者が何ドルのアメリカーノを飲んだのか計算してみました。

 2012年にはドル換算で、日本よりも0.8ドル安い価格でスターバックス・アメリカーノを購入することができた韓国人たちが、2014年には0.9ドルほど高い価格で購入したのです。もちろんこの期間中誰もが知っているように、日本は円の価値を切り下げる政策を展開しました。しかし、韓国スターバックスは前年比ウォン・ドル為替レートが1.4%下がった2013年にアメリカーノを8.3%(3600ウォンから3900ウォンに)値上げし、前年比ウォン・ドル為替レートが4%上がった昨年も5.1%(3900ウォンから4100ウォンに)も値上げしました。為替レートが上下したにもかかわらず、国内価格は一様に上がりました

アメリカーノの価格。//ハンギョレ新聞社

 一方、日本の場合は2年間続いた円安政策と実質的な価格凍結- 引き下げで、現在、米国の現地価格2.45ドルに近い2.82ドルまで値下げしたのがわかりました。前に申し上げたように日本円では価格変動がなかったのもあります。米国と日本の1人当たりの国民所得格差まで考慮すると、それでなくても貧弱な私たちの「購買力」がよりみすぼらしく見えます。

■「スターバックスの割高な価格設定」の議論を超えて

 韓国スターバックス側からすると、他の国に比べて韓国消費者のコーヒー専門店での滞留時間が長いなどの意見もあります。正確な数値はわかりませんが、韓国はコーヒーショップに座って仕事をするなどして滞留時間が長い一方、米国は比較的テイクアウトの客が多く回転率に違いがあるという話です。しかし、実際スターバックスでテイクアウトのお客様にコーヒーの値段を割引してるわけでもないので、そのような違いを正しく反映しているかどうかは定かではありません。だから、目に見える「コスト」だけではスターバックスが韓国で価格設定を高くして、毎年値上げする理由を明快に説明するのは難しいです。

 なぜスターバックスのような、比較的高価なブランドのコーヒーを飲むのかという見解をお持ちの方もいらっしゃいます。スターバックスのような外資系ブランドはもちろん、スターバックスと変わらない価格を前面に出した国内の大規模フランチャイズコーヒー専門店は大体都心のオフィス街に出店しています。個性もなく、高価な大型フランチャイズコーヒーへ疑問と抵抗は前からありましたが、短い昼休みを有効に使わなければならない会社員にとって選択肢はあまりなさそうです。周辺にあった美味しくて手頃な価格のコーヒー店が次々と消えていくか、路地に逃げ込むしかなかったからです。創造主より上といわれるほどの建物オーナーによる突然の値上げで店を畳んだり、人里離れた場所に追いやられていく破局を迎えたりもします。

 より重要なことは、韓国の消費者が米国や日本よりも高いコーヒーを飲んでいるにもかかわらず、韓国の消費者であると同時に労働者でもある人たちが米国と日本の半分あるいは3分の2水準の賃金をもらっている点です。すでにお伝えした東京とニューヨーク、ソウルのスターバックスの賃金をウォンに換算してみると、、東京のスターバックスでは、キャリアが長いバリスタが1万257ウォン、キャリアが短いバリスタは8409ウォン、見習いバリスタは8224ウォンの時給をもらっていました。ニューヨークのスターバックスでは、すべてのバリスタに時給1万822ウォンを支払っていました。一方、ソウルのスターバックスは時給が5700ウォンだから、ニューヨークの52.7%、東京のキャリアが短いバリスタの67.8%程度しかもらっていないわけです。この違いはいったいどこから来るのでしょうか。

 政府は「合理的に消費すると価格が下がる」と言っています。ヨ・インホン農林畜産食品部次官は14日、CBSラジオ「パク・ジェホンのニュースショー」に出演して「高いスターバックスコーヒー」についての質問を受け、「政府が食品価格に対して直接市場に介入することは適切でないと思う」とし、「しかし、情報を招集して調査公表しているので、消費者の皆様が価格情報をご覧になって合理的な消費をしてくだされば、おそらくそのような価格も下がるだろう」と述べました。自由市場にすべてを任せるということです。

 しかし、見方を変えれば、このような答えが出るのは最初から質問が間違っていたからかもしれません。キャスターは、ヨ次官に「スターバックスコーヒーの場合、韓国が世界で一番高い、このような報道があったが、コーヒー価格を下げることができるないか、このような疑問もある」と述べました。雇用労働部次官はなく、農林畜産食品部次官だからかもしれませんが、この質問、以下のように変えるべきではないのでしょうか?

 「コーヒーの価格は世界で最も高いのに、賃金はなぜこんなに安いのでしょうか?」

チョ・スンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.01.15 16:13

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/673771.html  訳H.J

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