本文に移動

赤字の泥沼に陥った李明博政権の「エネルギー自主開発」

登録:2014-11-17 10:18 修正:2014-11-17 14:46
エネルギー自主開発の目標を定め
公企業に成果をあげるよう圧迫
事業性の検討もない不良投資が相次ぎ
現地では「理解できない韓国人」と指摘
李明博政権の海外資源開発事業現況。//ハンギョレ新聞社

 韓国石油公社は14日、米国系商業銀行にカナダ油田開発業者ハーベストの子会社「ナール」(NARL)の売却を完了したと明らかにした。石油公社はこの会社を2009年12月に買収した当時から今まで約2兆ウォン(1ウォンは訳0.1円)の巨資を投じてきたが、公社が手にした金は338億ウォンにすぎず2%も回収できていない。

 この事業は当初から不良事業として憂慮されていた。契約当時、カナダの現地日刊紙『カルガリーヘラルド』は「韓国人は何を考えているのか?」という記事で、「韓国石油公社が47%のプレミアムまで出してなぜ問題だらけの買収をしたのか理解できない」と指摘した。現地でこうした憂慮がされた2009年10月の石油公社理事会会議録を読むと、経営陣は「それほど心配をしなくてもかまわない」とバラ色の展望しか示していない。なぜこんなことが起きたのだろうか。

■経済性は後まわし、見掛けの数値にだけ執着

「何をするため15%も確保し、それをまた売ろうとするのですか? 経済性より国家が政策的な配慮からしたことではありませんか?”(韓国ガス公社非常任理事)、「(もちろん)収益性が優先でしょう。(中略)国家政策は私たちに借金は減らすようにする一方で投資はもっとするようにしています」(ガス公社社長)、「自主開発率を高めよと、そうしているのです」(ガス公社役員)。

 2010年6月29日のガス公社理事会で、オーストラリアのGLNGガス田の持分投資の決定をめぐり理事と経営陣が交わした会話だ。この会話から、収益性や経済性より「国家の政策的判断」と「自主開発率達成」に重点を置いたMB(李明博)政権の資源開発政策の断面がうかがい知れる。MB政権は2010年12月に第4次海外資源開発基本計画を発表し、2009年に9.0%だった原油・ガスの自主開発率を2019年に30%まで達成するとしたバラ色の目標をたてた。

 自主開発率(下記参照)はエネルギー自立度を現わす指標だが、資源の実際の国内導入の有無とは関係ない数値だ。MB政権当時、政府はこの指標をエネルギー公企業評価に反映させた。評価結果に自分たちの首がかかったエネルギー公企業が自主開発率を高めるため、競って海外開発・生産鉱区に投資したり資源開発会社を買収することに死活をかけることになったのだ。与党関係者は「自主開発率のために支障が生じた。公企業が死に物狂いで駆けだした」と話した。コ・ギヨン韓神大学教授(経済学科)も「20~30年かかる探査事業では執権5年以内に成果を出せないという判断から、すでに開発されてある鉱区にばかり投資が集中したが、その過程でまともな検討もされない無理な事業が増えた」と指摘した。

石油公社が買収したカナダのエネルギー会社ハーベスト。//ハンギョレ新聞社

■政権実績の広報にばかり集中

 李明博政権は海外資源開発を、実際の事業成果を膨らませ政権実績の広報に活用したという批判もされている。李前大統領は2012年3月のラジオ定例演説でアラブ首長国連邦(UAE)の油田開発締結の知らせを伝え「私たちは油田を持つことになった」と感激した様子で話した。大統領の実兄イ・サンドク元議員は2009年からボリビアを五回訪問しリチウム開発に奔走した。イ元議員は自身の著書『資源を経営しろ』で「言葉でだけ外交に頼ってはならない」と自信を見せた。李前大統領とイ元議員が功績をあげた資源外交は、各部署の報道資料とマスコミを通じて大々的に広報された。

 だが、事業の成果はみすぼらしいものだ。約800億ウォンを超え投資されたアラブ首長国連邦の油田事業の現在の回収率は9%に留まる推定され、リチウム開発事業はまだ始まってもいない。ノ・ヨンミン新政治民主連合「MB政権国富流出資源外交真相調査委員会(真相調査委)」委員長は、「大統領外交で推進された45件の了解覚書(MOU)のうち実際の契約につながった事業は3~4件に過ぎない」と批判した。前出コ教授も「単純持分投資まで資源開発の快挙としてきたのは明らかに国民を欺く行為」と指摘した。

41兆ウォン投資し回収額は5兆ウォン
負債はそのまま国民の負担に
「ほとんどが進行中の事業、
長期的観点で見て欲しい」と弁明

■責任を負う者なく負担はそのまま国民に

 あるエネルギー公企業関係者は「資源開発は長期的観点で見なければならない。来年から生産に入り成果を出せる事業もある」と、資源開発の国政調査要求が“政治的攻勢”であると悔しさを滲ませた。元エネルギー公企業の役員も『ハンギョレ』との通話で、「こういう方法ではこれ以上資源開発はできなくなる」と話した。

 だが、李明博政権時期に海外資源開発に投資された金額は41兆ウォンと推定されるが、これは1977年から韓国が推進した海外資源開発総投資額(57兆ウォン)の70%を越える莫大な額だ。新政治連合真相調査委は41兆ウォンの投資のうち回収されたのは5兆ウォンにすぎず、さらに今後は31兆ウォン多くかかると主張している。

 事業の失敗はそのままエネルギー公企業の借金として残り、国民の負担に転嫁されているが、責任を負う者はほとんどいないのが実情だ。これに対しキム・ジェナム正義党議員と参与連帯は、エネルギー公企業の前・現職社長を業務上背任と職務遺棄容疑で最近検察に告発した。

イ・スンジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

[エネルギー自主開発率]

国内の公企業・民間企業が国外で開発する石油・ガスなどの生産量を国内消費量で割った値で、一国のエネルギー自立度を測定する指標となる。20%を越えればエネルギー自立が安定的と評価される。国際的には自国企業が開発し自国内に導入した資源を「自主開発率」に含ませるが、韓国と日本は国内導入の有無と関わりなく「国内企業が開発・確保した資源」という広義の自主開発率を採択している。これに対し自主開発率が現実と異なり膨らまされているという批判が多く出されている。現実に国外で確保した資源の国内搬入はほとんどない。だが、原油価格の急騰などエネルギー価格が暴騰する時に国外で保有した資源を売って得た収益を相殺でき、いざという時に国内に導入することができるという反論もあり、長く議論になっている概念だ。

韓国語原文入力:2014.11.16 21:44

https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/664717.html?_fr=mt2 訳Y.B

関連記事