来年の「最低賃金制100%適用」施行を控え
団地では年末までの契約が増える
90%にあがった2年前には大量解雇
無休休憩時間を増やす業者も
休む暇なく働いても法は適用されず
70%が住民の言語暴力を経験
「宅配は警備室に預けてください」。団地の住民ならば誰もが一度くらいは宅配運転手に言った言葉だ。 だが、宅配を預かるのは団地警備労働者の固有業務ではない。 住民たちの車両駐車やゴミの分離回収、宅配業務まで代行してきた団地警備労働者が、来年の‘最低賃金100%適用’を控えて集団解雇されるかも知れないという不安を抱えている。
ソウル蘆原(ノウォン)区のある団地で警備員として働くファンさん(66)は今年8月、警備班長から一枚の書類を受け取った。 「使用勤労契約書」と書かれたその紙には、おかしな記載があった。 契約期間が8月1日から今年の12月31日までの5か月間になっていたのだ。 この団地の警備労働者は通常1年毎に契約を更新してきた。 ファンさんは「班長に5か月単位の契約の理由を尋ねたが、分からないと言われた。 団地の管理所長は『来年は月給がものすごく上がるから一生懸命働きなさい』と言ったが、どうやらそのことと関連がありそうだ」と話した。
警備労働者は実際に仕事をする時間と‘待機’している時間を区分し難い。 そこでこういう‘間欠的労働’をしているという理由で法定最低賃金の90%だけを受け取っている。 長時間労働を制限する勤労基準法の適用も受けない。
警備労働者は「間欠的労働をしているというのは現実を知らない人が言うこと」と主張する。 実際に警備労働者の24時間の業務を調べてみると、時間別に業務がほとんど決まっている。ファンさんの場合、午前6時に出勤するとすぐに清掃をする。 彼が任された団地棟の周辺を掃いてテニス場を清掃する。 午前11時30分頃には多数の宅配荷物を整理する。 午後からは落葉を掃き集める。 梅雨どきには屋上の排水管が詰まらないようにいちいち手で異物を掃除しなければならない。 午後7時頃になると再び宅配荷物が押し寄せる。 夜11時から明け方までの4時間に順番どおり1時間ずつ巡回パトロールに回る。 公式的には昼12時と午後5時に1時間30分ずつの‘無給休憩時間’が与えられることになっているが、いつ来るかも知れない団地入居者のために席を外すこともできない。
1月からソウル江南(カンナム)のある団地警備労働者として働いているイさん(58)もほとんど決められた業務に合わせて動く。 24時間隔日制で仕事をするイさんの業務は、駐車管理から始まる。 午前10時からは清掃をし、退勤時間になれば再び住民たちの駐車の面倒を見る。 イさんは「3.3平方メートル強の警備室にスノコを敷いて寝る。寝る時に掛け布団をかけることもできない。住民たちが見るからと、管理事務所からそんな指針が下りてきた」と話した。
労働環境健康研究所は今年9月の一か月間、団地警備員152人を対象に現場実態調査を行った。 平均66.2歳の警備員が、本来業務である防犯・安全点検(22.1%)と同じくらい清掃(22.6%)や宅配業務(20.5%)にも多くの時間を使っていた。 最近、ソウル江南のある団地で入居者の暴言などが原因と見られる警備員焼身試図が起きたことから分かるように、最近1年間に入居者・訪問客からの言語暴力にあったと答えた比率も69.4%に達した。
だが、不安定な雇用形態のせいで、これに耐えるしかないという。 警備員はサービス業者の所属だが、実際には入居者から‘直接指示’を受ける。 江南S団地の警備労働者ユンさん(53)は「入居者から過度な要求をされて困っていると言っても、管理所長は私の話は聞かず、入居者に『社長をお迎えするようにしなさい』と言われた」と話した。 同じ団地の警備労働者パクさん(56)も「仕事をしてケガをしても労災の適用も受けられない。逆に駐車難のために車両を出し入れして事故でも起こせば100%私たちが責任を負わなければならない。 そこで、このような場合に備えて月給から10万ウォンを事故対備積立金として払っている」と話した。
20日、国会では「団地警備員の労働人権改善のための緊急討論会」が開かれた。 討論会に参加した労働環境健康研究所のハン・インイム研究員は「顧客と管理者の間で感情労働をしている警備労働者を保護できる法改正を国会に要請する」と話した。 公益人権法財団「共感」のキム・スヨン弁護士は「団地の現場で最も熱いイシューは最低賃金100%の適用であり、集団解雇できないよう警備員とサービス業者、入居者と政府が共同で根本的解決方案を模索しなければならない」と話した。