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三陟市原発建設反対の動き他候補地にも波及

登録:2014-10-16 21:11 修正:2014-10-17 11:49
三陟住民たちが巻き起こした全国“脱核”旋風
住民投票、原発誘致に85%の圧倒的反対
1982年にも候補地に指定されたが
16年間の闘争で阻止した歴史を再現
政府が“効力否定”すれば“第2の扶安事態”のおそれ
三捗原発建設計画概要 //ハンギョレ新聞社

「松茸とズワイガニの清浄地域を守り抜こう」
盈徳郡議会でも投票案可決の見込み
機張・蔚州・霊光など誘致の自治体主長も
遅まきながら政府にブレーキを掛ける姿勢
釜山、市長に「原発寿命再延長阻止」圧迫
「増設承認」の大田市長は四面楚歌

 江原道三陟(サムチョク)の原発誘致賛否を問う住民投票で、三陟市民の84.9%が反対票を投じた。三陟と共に新原発建設予定地に指定された慶尚北道盈徳(ヨンドク)でも、住民投票の風が吹き始めた。生命と安全に関する問題を住民自ら決定するのが、地方自治ではないか。

「住民の生命と安全を大きく脅かす恐れのある原子力発電所の誘致は、住民が自ら決定しなければならないということです」

 9日夜11時、三陟原発誘致の賛否を問う住民投票結果が発表された江原道三陟体育館は、初冬のように肌寒い中、「市民の勝利」「原発反対」「住民主権」「民主主義」などのスローガンを叫ぶ市民たちの熱気で満ちていた。市民たちが自ら住民投票委員会を立ち上げて実施した住民投票で、三陟市民の84.9%が「原発誘致反対」を選択したのだ。

 三陟市内中心部の道路も「住民投票で原発賛否をめぐる葛藤に終止符を打とう」「政府は覚醒せよ。原発の白紙化を要求する」などと書かれた横断幕に覆われていた。

■「私たちに原発はいらない」

 三陟の原発誘致賛否を問う住民投票が全国的な関心を集めている理由は、原発建設に関連する住民の意見を直接問うため実施された国内初の住民投票だからだ。これまでの原発建設では、地方自治体が地方議会の同意を得て、原発を運営する公共機関である韓国水力原子力(韓水原)に原発誘致申請をすれば、韓水原が候補地を選定して発表する方式で行なわれてきた。そこに住民の意思を直接問う過程はない。イ・グァンウ三陟原発反対闘争委員会企画広報室長は「2010年、三陟市は多くの住民が賛成していると見せかけるために96.9%の住民が賛成しているという捏造された署名簿を提出し、韓水原はこれをきちんと検証もせずに受け入れた」と指摘した。

 住民世論が十分に反映されていない原発建設は地域の分裂につながった。三陟では、原発反対住民と地域経済活性化のために原発が必要だと主張する三陟市や賛核団体との葛藤が4年間も続いた。2012年10月には原発誘致を強行した当時の三陟市長に対する住民召喚投票まで実施されたが、住民投票法が定めた開票条件である投票率33.3%に達せず、投票箱を開けることができなかった。

 しかし、この4年間表に出なかった三陟の民意が6・4地方選挙と住民投票で噴出し、三陟の雰囲気は180度変わった。地方選挙では、当初の予想を裏切って“反核”を代表スローガンに掲げたキム・ヤンホ市長が圧勝した。彼は62.44%の得票率を獲得した。今回の住民投票では三陟市民が、前回選挙の時より高い84.9%という原発誘致反対票を投じて、反核の意志を明確に示した。

 三陟市は、原発誘致に反対する市民たちの意思が確認された以上、これを根拠に原発予定区域指定告示を解除するよう政府に要求する予定だ。今回の住民投票に法的強制力はないが、“住民受容性”を優先すると公言してきた政府としては、圧倒的な反核世論を無視して原発建設を強行するのは負担だ。

 三陟市は1982年にも原発候補地に指定されたが、16年間の闘争の末、1998年に原発候補地解除にまで持ち込んだことがある。「三陟原発白紙化 汎市民連帯」のキム・スンホ常任代表は「政府が巨万の富の支援を行なうと言っても、原発には絶対反対だ。 絶対多数の市民が自ら原発に反対するという意思を民主的な住民投票の手続きを通して表したのだから、政府は住民の意思を受け入れなければならない」と話した。

江原道三陟の原発誘致賛否を問う住民投票が行なわれた9日午後、三陟市校洞の第3投票所で市民たちが身分確認の手続きを経た後に投票用紙を受け取っている。三陟/リュ・ウジョン記者//ハンギョレ新聞社

■「私たちも投票しよう」

 三陟と共に新原発建設予定地に指定された慶尚北道盈徳にも変化の風が吹いている。三陟に比べて原発反対の動きが少なかった“静かな都市”盈徳にも、住民投票を要求する声が高まっているためだ。

 農民たちが最も積極的だ。韓国農業経営人盈徳郡連合会はすでに先月26日、盈徳郡議会に新原発建設に対して住民投票を通して世論をとりまとめようという請願書を提出した。 クォン・スングァン韓国農業経営人盈徳郡連合会長は「盈徳郡は松茸とズワイガニが特産物だが、原発が建設されれば販売に困難が予想される。住民たちを対象に説明会や公聴会、住民投票を実施すべきだ」と主張している。

 「三陟発の住民投票」旋風に、これまで全く動こうとしなかった盈徳郡議会も住民世論の動きを伺い始めた。特別委員会を構成して、本会議で同案件を正式に扱うことも論議中だ。セヌリ党6人に無所属1人で与党議員が多数を占めているが、住民たちの生命と安全に直結した原発問題だけは「原発反対」で意見がまとまる雰囲気だ。

 イ・ガンソク盈徳郡議会議長は「盈徳は田舎ではない。浦項(ポハン)にあるポスコとも30キロしか離れておらず、週末にはズワイガニなどを食べに来る観光客でにぎわう所だ。日本の福島原発事故以来、住民も半数以上は原発建設に否定的な考えのようだ。住民に選ばれた議会なのだから、住民の意思を優先に考えて対応していく計画だ」と話した。

「盈徳原発誘致白紙化闘争委員会」のパク・ヘリョン執行委員長は「福島原発事故と三陟住民投票の動きなどの影響で、原発による利益より清浄地域を維持することで得られる利益の方が大きいという方向に住民世論が変わったようだ。盈徳郡と郡議会が住民の意向を受け入れなければならない」と話した。

 盈徳郡議会が進んで住民投票同意案を可決する可能性もある。だが、郡議会で成立しても「原発建設は国家事務であり、住民投票の対象ではない」として政府がブレーキをかける可能性が大きい。

■「住民の安全をなおざりにする自治体首長には反対だ」

 古里(コリ)原発1号基の寿命再延長問題が問題になっている釜山では、ソ・ビョンス釜山市長に対する批判の声が高まっている。古里原発1号基の寿命再延長阻止を選挙公約に掲げていたソ市長が、先月11日に開かれた釜山市・セヌリ党政協議会で、市民の世論を正確に伝えられないなど、これといった成果が出ていないためだ。

「反核釜山市民対策委員会」のチェ・スヨン共同執行委員長は「ソ市長は就任100日が過ぎても、自ら公約した古里原発1号基の寿命再延長問題について具体的な行動や代案を出せずにいる。住民の安全をなおざりにする無責任、無能な行動と考えざるを得ない」と指摘した。

 この6月の地方選挙で、韓国電力原子力燃料(株)の第3工場増設など、核施設の密集に反対する態度を表明していたクォン・ソンテク大田(テジョン)市長も、四面楚歌に追い込まれている。大田市が住民と環境団体などの反発にもかかわらず、韓電原子力燃料の第3工場増設実施計画を承認したためだ。「儒城(ユソン)核安全住民の会」と「大田環境運動連合」など地域の市民社会団体は、「クォン大田市長は住民を裏切る行政をしている」と大田市とクォン市長を非難している。

 一方、地域経済活性化などを掲げて原発を誘致した地方自治体では、遅まきながら一方的な政府の原発政策に歯止めをかけようとする動きを見せ始めている。釜山市機張(キジャン)郡、蔚山市蔚州(ウルチュ)郡、慶州市蔚珍(ウルチン)郡、全羅南道霊光(ヨングァン)郡が参加している「原発所在自治体行政協議会」では15日、自治体首長が集まり、 原発地域の基礎自治体首長が原子力安全の最高機関である原子力安全委員会の当然職委員として入るよう「原子力安全委員会の設置及び運営に関する法律」を改正する案を議論する予定だ。

「エネルギー正義行動」のチョン・スヒ釜山地域常任活動家は「原発事故が頻繁に起こって住民の不安が高まっているにもかかわらず、原発のある自治体の意見がきちんと反映されないことに対する不満が高まっている。とくに福島原発事故以来、原発のある機張郡など基礎自治体から広域自治体単位へと問題意識が広がっている点に意味がある」と述べた。

■「原発建設前に必ず投票しましょう」

 政府が民間主導で行なわれた三陟住民投票について「法的效力がない」と否定して、原発誘致申請の取り消しを要求する住民と政府間の葛藤が拡大すれば、“第2の扶安(プアン)放射性廃棄物処理場事態”に拡大するという懸念も出ている。原発建設に伴う住民との葛藤を避け得る代案として、市民社会陣営のみならず国会でも、原発建設に先立って住民の意思を直接問う住民投票を必須にしなければならないという論議が起きている。

 イ・イジェ セヌリ党議員(東海・三陟)は最近、原発を建設する際に地方自治体が誘致申請の過程で必ず住民投票を実施して、地域住民の意思を確認することを柱とした「電源開発促進法の一部改正法律案」を発議した。イ議員は「原発安全問題は、安心できるか、不安かなど、住民の主観的判断が非常に重要だ。これを解決するには住民の意思に従うしかないが、住民の意思を確認するには住民投票が唯一の解決策だ」と話した。

三陟/パク・スヒョク記者、全国総合 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/659403.html 韓国語原文入力:2014/10/12 20:23
訳A.K(4201字)

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