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セウォル号遺族を治癒する心理学者たち 「政府は“何もしない暴力”を行使している」

登録:2014-08-29 20:10 修正:2014-08-31 11:37
27日午前、ソウル鍾路区光化門広場のセウォル号断食座り込み場前で、心理学者たちが捜査権・起訴権の保障されたセウォル号特別法の制定を要求している。イ・ジョングン記者

373人の心理学者がセウォル号法を促す共同声明
被害者の治癒のため真相究明が必要
内なる劣等感から遺族を攻撃する人たちを助長する動きも牽制

 しっかりしたセウォル号特別法の制定が何故必要なのかについては、心理学的な理由もある。「なぜ沈没したのか」と「どうしてもっと多くの命を救うことができなかったのか」に対する答えが得られなければ、当事者たちの苦痛は続くしかない。真相究明は、生き残った者たちの罪悪感を和らげることでもある。遺族と生存者たちに「あなたたちの過ちではない」と言ってあげるためには、本当の原因を探らなければならない。真相を突き止められなければ、まともな再発防止策も出てこない。韓国社会が迎える未来は依然として不安なものでしかない。

 27日、心理学者373人が特別法の制定を促す共同声明に盛り込んだ“真の特別法”制定の必要性がそこにある。彼らは、「抑圧されたものの帰還」という心理学的説明は、セウォル号事故にもそのまま適用されるとした。「ニッブターの森心理相談センター」のイ・スンウク院長(51)は声明発表後に『ハンギョレ』と会い、「事故初期にはろくな救助もできなかったのに、今度は遺族たちと会うこともせず、特別法も制定しない。政府は事実上“何もしない暴力”を行使し続けている」と指摘した。

 イ院長は「個人を治癒しても社会システムに誤りがあるならば、その心理治癒は野戦病院で赤チンを塗ってあげることにしかならない。セウォル号事故は、社会システムを変えることも心理学者の責務だと考えさせられた事件だ」と語った。ソウル仏教大学院大学相談心理学科のパク・ソンヒョン教授(48)は「“抑圧されているものは、いつかまた帰還する”という言葉がある。真実を究明しようとする要求そのものに背を向け孤立させようとする動きは、心理的抑圧となり、結局、社会的緊張と不安をもたらす」と述べた。

 心理学者たちは、40日以上断食を続けている“ユミンの父さん”キム・ヨンオ氏(47)を疑ったり悪く言う人たちに対しても、心理学的診断が可能だと話した。「社会的に疎外され、自尊心を持てない人たちから心理的防衛機制である“強烈な投射”が現れる」というのだ。心理学で言う“投射”とは、自分を防御するために無意識に他の人に罪の意識や劣等感、攻撃性のような感情を向けることをいう。パク教授は「彼らは、自分の内の誤っている部分を否認するために、“自分以外のあらゆる人が誤っている”という考えに心理的エネルギーを集中する」と説明した。

イ院長は「このような人たちが集団化され組織化される社会的土壌」を問題として指摘した。「政府行事にはいつも官辺団体が動員され、インターネットでは悪質な“イルベ”会員 が活動する。どの社会であれ、このような部類の人々はいるが、彼らを集団化し組織化する人たちがいるということが問題」であるという。

 心理学者たちは、遺族たちの真相究明と再発防止要求は「巨大な犠牲と引き換えにした安全のための切迫した願い」であるとした。イ院長は「これほど大変なことが起これば、初めは悲しむが、しばらく経れば『生きている人は生きなくては』と言って避けようとするようになる。セウォル号が沈んだ海の中は無意識のようなものである。無意識の中に閉じ込めないで、全てをすくい上げなければならない。真相を明白に究明してこそ、韓国社会が腐食するのを防ぐことができる」と述べた。

パク・キヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/653114.html 韓国語原文入力:2014/08/27 20:35
訳A.K(1640字)

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