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米国式営利病院の規制緩和 韓国で医療費高騰の懸念

登録:2014-08-13 22:02 修正:2014-08-14 07:43
“医療民営化”へ腕まくりした韓国政府
民主労総全国保健医療産業労働組合の労組員たちが6月24日、ソウル駅広場で医療民営化に反対するスローガンを叫んでいる。キム・テヒョン記者 xogud555@hani.co.kr

「外国人医師割合」の規制崩し
経済特区内の国内営利病院も可能に
ウォン・ヒリョン済州道知事は反対の意思表明をしてきた

国内病院の子会社による営利事業を拡大
医療団体「患者を人質に収益事業」

幹細胞治療剤の使用条件緩和
臨床試験の縮小、安全性を脅かすとの批判

 12日、大統領が主宰した貿易投資振興会議で発表された保健・医療サービス分野の投資活性化対策は、病院が自由に外部資本の投資を受けて国内外の患者を相手に各種の収益事業を行ない、より多くの利益を上げられるようにするというものだ。

 まず、済州道(チェジュド)の外国営利病院(投資開放型病院)に対する承認が、早ければ来月にも行なわれるものと見られる。経済自由区域に設立される外国営利病院の規制が大幅に緩和され、病院の営利子会社設立もさらに広がる見通しだ。政府は「国際医療特別法」を制定すると明らかにしたが、国外患者の誘致を名目に、国内患者を保護するための医療法の各種規制をなくそうという趣旨だ。患者の安全のために規制してきた幹細胞及び遺伝子治療も、非常な高額で患者に施術できるようにする内容も盛り込まれている。

 保健医療団体は、韓国が米国式の医療営利化に進む道を開くものであり、医療費高騰と診療の質の低下が懸念されるとして強く反発した。

■外国営利病院の設立は「営利病院の全国化」

 昨年2月、済州道の営利病院は、中国のある企業が主に肌の美容や整形手術を行ない、同時に高価な健康診断商品を販売するとして、承認を要請した。保健福祉部は昨年8月、応急医療システムの不備などを理由に承認を保留したが、12日発表の投資活性化対策に基づき、来月に応急医療システムを再点検して承認するか否かを確定する方針を明らかにした。しかし済州道の営利病院は、ウォン・ヒリョン済州道知事の政策と摩擦を生む可能性が大きい。 ウォン知事は今年の6・4地方選挙戦で、営利病院など“医療民営化”に反対する意思を明確にしてきた。

 投資活性化と雇用創出を名分に、経済自由区域の外国営利病院の設立基準も緩和される。現在は設立のためには、外国の免許を持った医師が10%以上で、病院長と診療医師決定機構の50%以上が外国人でなければならないが、このような条件を済州道と同じく「外国人医師の従事が可能である」という程度に緩和する内容だ。「保健医療団体連合」のピョン・ヘジン企画室長は、「外国人医師雇用比率などを見れば名前だけが外国病院で、実際には国内営利病院を認めるということだ。済州道を含めて全国8か所の経済自由区域に営利病院ができれば、事実上、全国が営利病院の影響を受けることになる。現在も医療費の負担にあえいでいる庶民にとっては災難になるだろう」と批判した。

■国内病院は営利子会社を設立し、収益創出

 国内の医療法人病院が外部資本を誘致して設立する子会社の事業許容範囲がさらに拡大される。この6月の医療法施行規則発表の際に除外されていた健康機能食品関連事業が再登場した。子会社を設立し、健康機能食品と飲料を研究開発できるよう医療法の改正を推進するということだ。 「真の医療実現青年漢方医の会」のイ・ウンギョン政策局長は、「健康機能食品などの販売が結局、営利子会社の核心事業だったことが明らかになった」として、「医者が患者にこれらの食品などを薦めれば、患者の誰が拒否できよう。医療費が大幅に高騰するだろう」と述べた。

 さらに、病院の医院賃貸業や医学部傘下の技術持株会社の許可は、大型病院の収入増加をもたらす一方で、町内医院の没落を招くだろうという指摘がある。

■金もうけのためなら患者の安全装置も解除

 政府は、新薬など新しい医療技術の開発を促進するとして、幹細胞治療剤などの使用条件を緩和することにした。通常3段階である臨床試験から1段階を免除できる範囲を、現在の「自分の体から摘出された幹細胞を注入する技術」から「他人の幹細胞を活用した幹細胞治療剤」に拡大することにした。「保健医療団体連合」のチェ・ギュジン企画部長は、「国内で許可されていない幹細胞治療を外国に遠征して受けて死亡した事例が、明らかになったものだけで2件ある。 安全性が検証されていないにもかかわらず臨床試験まで免除するということは、国民を相手に臨床試験をするという発想に他ならない」と批判した。

■外国人患者誘致のために国内医療法も無視

 政権は外国人患者を対象とした医療広告を許容し、国内保険会社が国外患者を誘致できるようにする内容を盛り込んだ「国際医療特別法」を制定する計画だ。国内医療法が患者の誘引・斡旋や広告などを禁止しており、患者を誘致しにくい現実を理由にあげている「健康と代案」のイ・サンユン常任研究委員は、「国内の保険会社が患者を誘致できるようにすれば、患者の診療費等を民間保険会社と医療機関が直接契約することになるが、結局、健康保険を代替することになる危険性が大きい。民間保険会社にとっては大もうけできるビジネスチャンスになる」と指摘した。

キム・ヤンジュン医療専門記者、パク・スジ、ホ・ホジュン記者 himtrain@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/health/650960.html 韓国語原文入力:2014/08/12 23:13
訳A.K(2370字)

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