去る16日、全南(チョンナム)道 務安郡(ムアングン)玄慶面(ヒョンギョンミョン)から海際面(ヘジェミョン)へ向かう道路のあちこちに‘タマネギ山城’が立ち並んでいた。 タマネギ一網1400個余りを畑に隣接した道端に一ヵ月にわたり積み上げている立石(イプそく)村のナ・テジュ(65)氏は、昨年タマネギ栽培を始めて3000万ウォンを借り入れた。 ナ氏は種子、堆肥、農機、人件費にかかったお金を返す見通しが立たないとして途方に暮れている。
昨年一網が1万ウォンだったタマネギの価格は、農林畜産食品部が在庫物量を市場に放出しない‘市場隔離’、買い入れなどの対策を出してはいるものの暴落を続けている。 ナ氏は「先日、仲買業者が一網4200ウォ(約420万円)ンと言ったが到底売れなかった。 3000ウォンという人もいる」と話した。
25世帯がタマネギ栽培をしている立石村のナ・クァンウン(59)里長は「200網の生産に150万ウォンかかる。 一網7500ウォンでトントンなのに、皆がばく大な借金を抱えた」と話した。 2003年以来、初めてタマネギ買い入れに乗り出した政府が提示した買入価格は6500ウォンで、農民が言う最低生産費には至らない。 買い入れのためには光州(クァンジュ)まで送る運搬費もかかる。
タマネギの収穫後、豆や夏白菜、ゴマなどをしっかり育てなければならない務安(ムアン)では、畑がガランと空いていたり、雑草が生い茂った畑が多く目についた。 イ・ウンジャ(50)氏は「他の作物を育てれば、またそれだけお金がかかる。 農業はすればするほど借金が積もるのでは最初からしない方がマシ」と話した。 タマネギ栽培の時、農機を借りて使った代金の6万ウォンも返せない老人たちも少なくないと言う。通常6月に刈り取ったタマネギは、低温倉庫に入れて12月に売ったりもするが、農民は一網に2000ウォンずつかかる保管費さえ払えないと話した。
唐辛子、ニンニク、ダイコン、白菜など、他の野菜類の栽培農家も事情は同じだ。 これらの品目も昨年より30~70%ほど価格が下落した。 去る10日、唐辛子、ニンニク、タマネギ栽培農民1万人余がソウル汝矣島(ヨイド)で決起大会を開いたのもこのためだ。
農民たちは価格の暴落は市場開放のためだと主張している。 4200万ウォンの金を借りて1万坪余りでタマネギ農業をして、手にしたのは僅か1100万ウォンだたというある夫婦は「農民も計算できないが、政府も計算できない。 昨年タマネギの価格がちょっと高かったので輸入すると言って多く輸入しすぎた」と話した。 実際、農食品部は6万7000tのタマネギ在庫量を消化できなかったことを価格暴落の原因に挙げているが、昨年のタマネギ輸入量が6万5000tだった。 ニンニクの在庫量も4万8000tで、輸入量も4万4000tで大差ない。 輸入量分だけ在庫が残っていくということだ。
昨年の輸入タマネギの91.4%、ニンニク全量は中国から輸入した。 「韓国キムチを大量輸入する」という習近平 中国国家主席の‘訪韓プレゼント’を農民が歓迎しない理由だ。 カン・チョンジュン韓国ニンニク産業連合会委員長は「韓国が中国に輸出するキムチが約1万2000tなのに、中国から輸入されるキムチは13万~15万tだ。 韓-中自由貿易協定が農家の利益になるはずがない」と話した。
市場開放の恩恵から疎外されているという農民の敗北感はますます深まっている。 三人の子供たちの父親である務安のパク・グァンスン(40)氏は「農作業を最初に始めた12年前、タマネギの価格は今も殆ど変わっていない」として、虚しさを吐露した。 パク氏は「人件費を比較してみれば、当時の日当が3万ウォンで、今は14万ウォンだ。 政府が物価を抑えるために農産物価格を無理に下げているためではないか」と話した。 農食品部の統計によれば、2007~2012年都市勤労者の平均世帯所得は4387万4000ウォンから5390万8000ウォンに1000万ウォン以上上がる間に、農家所得は3196万7000ウォンから3130万1000ウォンに減った。
務安/チン・ミョンソン記者 torani@hani.co.kr