裁判所が、2012年にツイッターを利用して朴槿恵(パク・クネ)大統領候補の選挙運動をした疑いで起訴されたウォン・セフン(63)元国家情報院長など高位幹部たちの裁判で、公訴事実を裏付ける中核文書の証拠能力を排除するや、国家情報院の捜査・裁判に対する非協力戦略が概ね成功したという評価が出ている。国家情報院は、国の綱紀を紊乱する犯罪を犯しながらも「国家安保のための活動にまい進せよ」という趣旨で作られた特恵条項を存分に活用し、事実上“治外法権”の特恵を享受した。国家情報院の不当な要求を言われるままに受け入れて捜査妨害の先頭に立った検察首脳部も、批判は避け難くなった。
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■捜査妨害の極に達した国家情報院
捜査の間中続いた国家情報院の非協力は、昨年10月17日に本格化された国家情報院ツイッターチームの捜査の際に極に達した。そんな“努力”が積もって裁判所の“核心文書の証拠能力排除”決定につながったという見方が多い。
国家情報院の大統領選世論操作と政治介入疑惑を捜査していたソウル中央地検特別捜査チーム(チーム長ユン・ソクヨル)は、昨年10月17日午前6時40分、4人の国家情報院心理戦団職員の自宅を家宅捜索し3人を逮捕した。そのうちの一人である心理戦団安保第5チーム(SNS担当)の職員キム・某氏のネイバーアカウント“私に書いたメールボックス”にあった電子メールの添付ファイルから、国家情報院職員たちが使ったとみられるツイッターアカウント数百個と1年間の活動内訳が入っている文書を発見したためだ。文書に対する補強調査が不可欠な時点だった。
国家情報院は、文字通り“メンタル崩壊”に陥った。ナム・ジェジュン当時国家情報院長は、「国家情報院の職員を拘束するには、事前に院長に通報しなければならない」という国家情報院職員法を突きつけ激しく抗議した。検察首脳部は、国家情報院の主張を受け入れて捜査チームを圧迫した。その2日前に逮捕令状請求計画の報告を受けて、「野党に有利にする必要がどこにある。私が辞表を出してからやれ」と言って反対したチョ・ヨンゴン ソウル中央地検長は、国家情報院職員を釈放せよとユン チーム長に指示した。 ユン チーム長が拒否すると、チョ地検長は同日夕方、ユン チーム長を捜査から外した。 結局捜査チームは同日夜9時30分頃、キム氏などやっとの思いで逮捕した3人を、まともに調査もできないまま帰さなければならなかった。
■捜査妨害で“険しい道”に迂回
刑事訴訟法の制限規定を突きつけて家宅捜索を妨害し、国家情報院職員法を根拠に逮捕された職員らに陳述拒否を指示した国家情報院は、捜査対象であるにも拘らず職員名簿の提出すら拒否した。捜査チームは、連絡先が判明した一部職員の通話内容を分析して、かろうじて国家情報院職員を確認した。そのために100回余り令状を請求し、数百万件の通話内訳を分析した。捜査チームは6ヶ月に及ぶ追跡過程を経て、昨年10月にようやく国家情報院のツイッター担当要員を確認できた。
昨年10月17日以降、国家情報院は不承不承「捜査に協力する」として、安保第5チーム所属の職員のうち5~6人を検察に出頭させた。しかし、彼らは口を開かなかった。今回も「職務上の機密に関する事項を陳述するには、事前に院長の許可を受けなければならない」という国家情報院職員法を動員した。「国家情報院長は、国家の重大な利益を損ねたり軍事・外交・対北関係など国家の安全に重大な影響を及ぼす場合を除いては許可しなければならない」という条項もあったが、役に立たなかった。捜査チームは結局、10月17日に逮捕した3人のうちキム氏を除く2人から「確かに私が使用したツイッターアカウントだ」と確認の取れた100個余りのアカウントだけを、裁判に証拠として活用できることになった。
キム氏の電子メールにあった添付文書の証拠能力を認めない裁判所の決定は「キム氏を釈放せよ」と言っていた国家情報院と検察首脳部の指示がどれほど大きな捜査妨害だったかを示している。当時、検察首脳部の指示により、捜査チームは「添付文書は誰が書いたか分からない」と言い続けていたキム氏を釈放せざるを得なかった。キム氏は自分が“ミス”で残した添付文書のために安保第5チームの活動が全てあらわになる状況に直面するや、大いに慌てたという。
検察関係者は「当時、ユン チーム長を職務から外さずに調査を続けさせるべきだった。 きちんとした調査ができなかったために、キム氏が最後まで否定し、その嘘を裁判でも繰り返した。この論理を今回裁判所が受け入れたわけだ」と述べた。当時検察は、キム氏が添付文書を作成したと見ざるを得ない状況証拠をいくつも持っていた。通常の事件のように“正常に”調査が行なわれていれば、キム氏から「確かに私が作成したものだ」という供述を取り付けることができたはずだという話だ。 キム・ウォンチョル記者 wonchul@hani.co.kr