化学事故の危険は有害化学物質を取り扱う産業施設の塀の中だけに留まらない。
昨年5月18日、京畿道(キョンギド)始興市(シフンシ)正往洞(チョンワンドン)のあるアパート前の道路を通過した貨物車に載っていたコンテナからフッ酸溶液40リットルが漏れ出した。 警察による調査の結果、この事故は運転者が事故地点で急に車両を右折したために落ちたコンテナの中にあったフッ酸溶液のドラム缶がこわれて起きたことが明らかになった。 有害化学物質中でも特に危険で、常に‘化学爆弾’になりうる '事故対備物質’でさえ化学物質専用輸送車ではない一般貨物車に粗雑に積まれて住居地域の道路を疾走しているわけだ。
環境部が集計した資料を見れば、2004年から昨年まで10年間に発生した化学物質事故66件が運搬車両で発生した。 事業場内の施設管理不十分で起きた事故(64件)より多い。
化学物質の運送現場関係者たちの話を聞いてみれば、有害化学物質を運ぶ一般貨物車にはセウォル号との類似点が少なくない。 車軸と積載箱などを改造した後、事故対備物質などを過剰積載して、ブレーキ力と安定性に問題があるトラックを、運搬物質の特性と漏出時応急措置教育をまともに受けなかった運転者一人で、経済協力開発機構(OECD)会員国の中で交通事故率1位の韓国の道路を、過労に苦しみながら時間に追われて走らせているからだ。
麗水(ヨス)産業団地で生産される事故対備物質の一つであるフェノールを、釜山(プサン)圏まで輸送している麗水貨物連帯所属のある組合員は13日「産業団地で有毒物を積載重量とおりに載せて出てきた後、他の荷主の一般貨物を追加で載せて過剰積載運行をしたり、ビール・麺・小麦粉などの食品を載せて麗水に来た貨物車が戻る時に運送費を稼ぐ目的で安い価格で化学物質を載せて行く事例もある」と打ち明けた。 この運送労働者は「有毒物専門輸送車両でなければ運転者安全教育と防毒マスク・安全靴・保安眼鏡・防湿布など応急対応装具が車中に備わっていない。 それだけに運行中に生じることがある小さな事故を大事故にしてしまう危険が高い」と指摘した。
有害化学物質運搬トラック運転者がほとんど車両持ち込みの個人事業者だという点も運送中の化学物質漏出事故危険を大きくしている要素だ。 これら個人事業者は車両維持費用を節約するため車両整備やタイヤをはじめとする部品交替時期を先送りするのが常だ。 また、応急状況対処に必要な補助運転者を同乗させることは夢にも見れない。 麗水貨物連帯のある組合員は「費用のために補助運転者を置けず、もしもの状況に備えて応急装具だけを2人分を載せて通う」として「高齢の運転者が有毒物車両を一人で走らせ、心臓に異常が起きて事故を起こしそうになったこともある」と話した。
各種の燃料用ガスとシアン化水素・ホスゲンなど毒性ガス設備の安全検査を受け持っている韓国ガス安全公社のイム・ウォンソプ労組委員長は「化学物質の安全で最も重要なのは物質を入れて運ぶ容器だ。 タンクローリーは消防当局が、ガス運搬容器は私たちが検査しているが、化学物質の運搬容器は死角地帯にあって検査さえ行われていない」として「このような点から見れば、韓国では移動中の化学物質管理はなされていないと見れば良い」と話した。
キム・ジョンス先任記者