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【クァク・ビョンチャン大記者が朴槿恵大統領に送る手紙 33】“スト撤回合意”、また別の詐欺にならないことを願って…

登録:2014-01-01 16:43 修正:2014-01-01 21:53
労働者は敵ではない、韓国経済を支える柱です
国民に向かって暴走せずに「人間の歌」を聞いてください
鉄道労組スト20日目の28日午後、ソウル広場で開かれた民主労総の全面スト決起大会参加者たちが大統領府側に向かい、世宗路交差点で警察の第1次車壁を抜けて道路を占拠しデモをしている。キム・チョンヒョ記者 hyopd@hani.co.kr

 1987年4月、日本の国鉄の分割民営化に前後して、国鉄労組員200人余が自殺しました。事業場で首をくくった若い労働者が相次ぐなど、労働者たちは秋風に散る木の葉のように倒れて行きました。その時、どうか死なないで、生きて、生きて闘おうと、切に願う歌がありました。

「深い傷抱いて生きる疲れた肩に/眼差し注ぐ友はいるか/苦痛の中に横たわり悲しく冷えていく/冷たい手を握ってくれる同志はいるか//~生きて、生きて生き抜いて/生きて生きて生き通して/私は歌う自由の歌を/一緒に歌おう人間の歌」

  去る11月末<ハンギョレ平和の木合唱団>の定期公演で初めて聴いた時にはまだ、「人間の歌」は誇張された悲壮感という印象でした。タイトルからして過度な感じを拭えませんでした。ところが、我が国で全く同じ暴力が行使され、同じような不幸が予告されて、私の見方がどれほど浅かったかを実感しました。日本の国鉄民営化前後に発生した悲劇は、まさに人間の悲劇でした。その悲劇を克服しようという凄絶な力、涙ぐましいあがきがその歌には染み込んでいました。

国鉄民営化による犠牲者は自ら命を絶った人たちだけではありません。民営化のわずか1年前には国鉄労組所属の組合員は16万人余りでした。日本政府と国鉄が民営化を宣言してから、組合を脱退しなければ民営化以後に再雇用しないと圧迫しました。全員解雇後の選別再雇用という悪辣かつ暴力的な方式を強行しました。 対抗して闘った組合執行部と組合員1047人は解雇されました。 わずか1年で12万人が組合から離脱しました。組合は少数者に転落し、民営化を止める力を喪失しました。その時に離脱した人たちも一生裏切り者という自責感をもって生きていかなければならなかったので、彼らもまた犠牲者でした。

 民営化以後、鉄道労働者は27万人から21万人に減りました。なんと6万人余が生業を失ってしまったのです。程度の差はあったけれども、残った者の悲惨もまた同様でした。会社側は業務を分割して下請け、孫請け、偽装請負などに割り当てました。そしてかつて正規職だった人々を全て業務に応じて子会社、協力会社もしくは派遣会社に分けました。20万人が非正規職に転落させられました。追い出された人も残った人も、安寧だった人は誰もいませんでした。それが、「人間の歌」が生まれ、また悲壮にならざるを得なかった理由なのです。

 それでは、政権の“ばら色の約束”のように、民営化以降、国民は料金も安くなり、また便利になったのでしょうか。日本の新幹線の中で最も遅い“こだま”の場合、われわれのKTXより3.5倍くらい高い料金です。民営化された英国の汽車料金(5倍水準)よりは少し安いですが、高いことには変わりありません。新幹線では事故が起きていませんが、他の低速列車や低速路線の場合「事故鉄」という汚名をそそげずにいます。鉄道は安全が生命ですが、費用削減のために人員を大幅に減らしたので、安全が犠牲にならざるを得なかったわけです。鉄道民営化が日本国民に与えたのは安寧と低コストではなく、不安と高コストです。 国鉄が一番先に民営化された英国では、事故が頻発するや、施設部門を再び公営化しました。当初から民営事業として出発した米国の鉄道は、事業性を失って国家により公営化されました。ニュージーランドは民営化した後、2倍の費用をかけて再び公営化しました。

烏飛梨落(訳注:烏飛びて梨落ちる、元々何の関係も無いことが偶然同じタイミングで起こり、まるで関係があるかのように疑われる時に言う)かもしれませんが、鉄道民営化以降1990年代から日本の経済は長期低迷に陥ります。「失われた10年」あるいは「失われた20年」と言われました。今もその悪夢のトンネルから抜け出せずにいます。 鉄道民営化と国鉄労組崩壊以後、日本労働組合総評議会(総評)は解散され、労働権は著しく弱体化されました。自民党政権の“政経複合体”は一層強固になり金持ちになりましたが、国民は貧しくなりました。“一生の職場”という概念は崩壊し、安定した仕事は大量に消え、社会は活力を失っていきました。次いで資産価値が暴落して、金融不良は大きくなりました。政府が金を与えて使うよう促しても、国民は金を使おうとしません。 使うことができないのです。 国民を貧しくしたので、国家が安寧なはずはありません。 自民党政権も結局、揺らいで野党に政権を奪われます。長期不況の出発点にあったのが、国鉄民営化でした。

 与野党が鉄道産業発展方案を推進することにして、今日(訳注:30日)労組がストを解くことにしました。さいわいです。しかし、今回の合意がまた別の“詐欺”にならないことを願います。労働者は敵ではありません。この国の国民であり、この国の経済体制を支える柱です。生産者であり、消費者であるとともに、資本の横暴を牽制する主体です。民主主義と正義、そして平和を守る力です。彼らを捨てないでください。これ以上国民に向かって暴走することを止め、“人間の歌”を踏みつけないでください。 不当な権力が頼るのは暴力です。反対に、ひたすら暴力に頼ったあげく、不当な権力として追放されることもあります。 歌の歌詞はこうです。その願いを吟味しながら読んでみてください。(市中にアルバムがなければ、<ハンギョレ平和の木合唱団>に問い合わせてください。)

深い傷抱いて生きる疲れた肩に/眼差し注ぐ友はいるか/苦痛の中に横たわり悲しく冷えていく/冷たい手を握ってくれる同志はいるか
希望の翼の下 暗い悲しみ閉じ込めて/忘れられた私たちの喜びを歌う/私は歌う 希望の歌を/共に歌おう人間の歌
くずおれた痛みを笑顔に包む/職場の仲間を信じているか/先に逝った仲間の思いを/胸熱く覚えて闘っているか
みんなが微笑み歌があふれる/美しい世の中をこの地に求めて/痛み分け合い喜び分かち/歩いてゆきたい人間らしく
生きる苦しさ翼に替えて/命の気高さ歌に託して/私は歌う平和の歌を/共に歌おう人間の歌
生きて生きて生き抜いて/生きて生きて生き通し/私は歌う自由の歌を/共に歌おう人間の歌
生きて生きて生き抜いて/生きて生きて生き通し/私は歌う人生の歌を/共に歌おう人間の歌/
共に歌おう人間の歌"

クァク・ビョンチャン大記者

https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/617583.html 韓国語原文入力:2013/12/30 14:09
訳A.K(2934字)

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