24日仁川(インチョン)国際空港ではウォン・セフン前国家情報院長の出国を阻止しようとする市民たちが直接監視活動を行う珍風景が繰り広げられた。 情報機関の首長が退任直後に“逃避性出国”を試みるのも異例なことだが、これを阻止しようと市民が空港に陣を敷いたことも前例のないことだった。
国家情報院の国内政治介入を指示したウォン・セフン前院長が米国に出国する予定という報道(△ウォン・セフン、24日米国行…逃避性出国の疑い)が出た23日夜から法務部がウォン前院長を出国禁止したというニュースが伝えられたが、「すでに出国したのではないか」「出国禁止報道を信じられない」という声があちこちから上がった。 民主統合党、統合進歩党、進歩正義党など野党圏は23日からいっせいに声明と論評で法務部に対し即刻出国禁止を要求した。
24日午後2時、仁川国際空港にはチン・ソンミ民主統合党議員と参加連帯の会員および一部市民が3階の国際線出国場に集まった。 「ウォン前院長が出国するというなら、からだを張ってでも阻止する」という意志の表現だった。 ウォン前院長が予約したとされる米国カリフォルニア行の航空機はこの日午後4時から5時の間に集中していた。
彼らはツイッターなどで空港の状況をリアルタイムで伝えながら、出国ゲート別に分かれて監視活動を行なった。 ウォン前院長の写真をタブレットPCに保存して仁川空港に出てきた市民ユン・スマン(40)氏は「ツイッターで今日ウォン前院長が出国するかもしれないという話を聞いて、逃避だけは阻止せねばと思って駆け付けた」と話した。
社会関係網サービス(SNS)をはじめとするオンライン空間では前院長に対する市民たちの“私製指名手配ビラ”が出回った。 あるツイッター使用者(@Bohemi****)は「米国に逃走せんとする前国家情報院長ウォン・セフンを探しています」と自身のツイッターに書いたあと、ウォン前院長の写真を掲げた。 この他に多くのネチズンが「ウォン前院長の姿を空港で見かけたら直ちに通報してください」という内容の文を載せた。
敏感な国家機密を取り扱う国家情報院の院長が退任直後に長期間国外に留まる計画を立てること自体が非常識だという指摘があふれている。 前職国家情報院高位関係者は「国家安保と関連した情報を扱う情報機関長が退任直後に出国を試みること自体が非常に不適切なことだ」と釘を刺した。 キム・グンシク慶南(キョンナム)大政治外交学科教授は「ウォン前院長の今回の試みは国の品格を落とす恥ずかしいことだ。 国家の情報を担当した首長が退任後に急いで国外に行くことになれば、国内の高級情報が流出する可能性が相当に高い」と指摘した。
ウォン前院長はこの日ついに空港に現れなかった。 世論の悪化と出国禁止措置のため、結局米国行きをあきらめたものと見られる。 ウォン前院長の行方は週末からずっと不明だった。 <ハンギョレ>が23日に訪ねたウォン前院長のソウル冠岳区(クァナック)ナムヒョン洞の自宅は門を堅く閉ざし静寂に包まれていた。 近所の住民たちは「もう先週のうちに、引越しの車が来て荷物をトラック数台で運んでいった」と話した。
出国禁止措置が下りたという事実はこの日午後遅くになって確認された。 ウォン・セフン前院長の行方を巡り週末から続いた糾弾と騒動は、国家情報院の異常な運営と不法行為が演出した悲しいコメディであった。
チョン・ファンボン、 チェ・ユビン 記者bonge@hani.co.kr