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[ハンギョレが会った人] ‘軍投票不正’暴露したイ・ジムン氏

登録:2013-03-17 21:14 修正:2013-03-18 05:57
"国家情報院 内部告発者だけ罷免…口を塞ぐ法制度直さなければ"
イ・ジムン ホルラカ財団常任理事はインタビューで 「軍の不在者投票不正を暴露する過程で良心的な態度を見せた中隊長に心の中で借金があった。 ところが3年前偶然に電話で話して楽しく過ごしているという話を聞いて心の借金の一部が解消された感じだった」と話した。 シン・ソヨン記者 viator@hani.co.kr

 最近発生した2つの事案は‘内部告発者問題’という話題を再び私たちの社会に投げかけている。 国家情報院職員コメント事件の内部告発者が罷免された事件と、最高裁が三星(サムスン)エックスファイル事件と関連してノ・フェチャン議員(進歩正義党)に有罪判決を下し議員職を剥奪した事件がそれだ。

 1992年3月、14代総選挙過程で行なわれた軍不在者投票の大規模不正選挙事実を暴露して大きな波紋を起こしたイ・ジムン(45・延世(ヨンセ)大国家管理研究院専門研究員)ホルラカ財団常任理事は「強盗がいると大声を張り上げる人だけが処罰を受けて、強盗は元気にしているのを見るようで恥ずかしい」と嘆いた。 イ・ムノク監査官、ユン・ソクヤン二等兵の良心宣言に続き、厳酷な時期に本当の力を明らかにすることによって営内投票廃止、腐敗防止法をはじめとする内部告発者保護法制定など制度改善を引き出すのに大きな力を加えた当事者の声には、逆行している世の中に対する強い憂慮と怒りが混じっていた。 一時政治に身を置きもした彼は2000年代初め以後、現実政治から手を引き興士団透明社会運動本部、公益情報提供者と共にする集いを経て、今年2月からはホルラカ財団で内部告発者保護市民運動に努めている。 「人間の顔をした暖かい正義主義者」は彼が夢見る自身の姿だ。 先月26日ハンギョレ新聞社で会った。

インタビュー/キム・ドヒョン経済・国際エディター aip209@hani.co.kr

裁判所 前向き態度 見えず
内部告発事件も国民参加裁判をすべき

-国家情報院は内部告発者が野党に情報提供したことについて、政治的意図があると主張している。

 "内部告発者が100%倫理的人間であってこそ正当で保護される価値があると考える人が多いのが現実だ。 ところで、そのような人々は内部告発者を支持しない人が大部分だ。 内部告発者は私を含めて平凡な小市民だ。 今回の国家情報院内部告発者も‘私たちがしていることは’という自己恥辱感、遺憾の発露で情報提供したと見える。 民主党に情報提供したということだけを問題にするならば、内部告発は誰にもできなくなる。 政治的意図が国家情報院で主張するようにたとえあるとしても、ありもしない事実を作って暴露したことではないではないか? 国家情報院女子職員1人の突出的行為ではないという点が言論の報道を通じて明らかになっている。 国家情報院次元の組織的行為だ。 米国ウォーターゲート事件の内部告発者も一部ではFBI(連邦捜査局)副局長が局長になれないから内部告発したという見解もあるが、盗聴をしなければ良いだけのことだ。"

-内部告発者が逆に被害を受けるのが現実であるようだ。

 "2年前の<ハンギョレ21>の記事によれば、1990年代以後の代表的公益申告事件36件を全数調査した結果、12件だけが不正容疑者が有罪判決を受けた反面、全く司法当局の捜査自体がなされなかった事件も10件にもなった。 行政府と立法府に比べて司法府の努力がむしろ劣っている。 法だけについてみれば米国には至らないものの、結構取りそろっている方だ。 腐敗防止法は市民団体の努力によって国会で作った成果であり、公益申告者保護法は政府が主導して作った。 ところで司法府が内部告発事件に対して前向きになれないのは残念なことだ。"

-腐敗防止法と公益申告者保護法など内部告発者に対する法的保護装置があるのではないか?

 "内部告発した国家情報院職員はこの二つの法でも保護を受けることができない。 この職員が告発したことは腐敗防止法上の腐敗行為対象であることには間違いないが、警察、検察、監査院、国民権益委員会、問題を起こした職員が属している機関(国家情報院)でもその機関を指導監督する機関に申告してこそ保護されうるためだ。 公益申告者保護法は民間人にのみ該当する。 秘密漏洩免責条項問題もある。 腐敗防止法によれば公共機関に告発する時は秘密漏洩免責になると見るが、市民団体や宗教団体、言論にだけ暴露すれば免責にならない。 このような法の盲点のために告発する人が多くない。 カナダも国家機関に申告するようにしているが、合理的理由がある時には大衆公開を認めている。 内部告発者を保護して腐敗を予防するということが法の趣旨であることを勘案すれば、とんでもない社会的波紋を起こした事件に対して機関に先に申告しなかったからと保護しないのは国家便宜主義的発想だ。"

-内部告発者支援団体であるホルラカ財団ではどんなことをしているのか?

 "内部告発者が訪ねてくればまず国民権益委に申告するように言う。 言論相手に講義をする時も‘記者たちが情報提供を受けたが、それが関連法に該当する事項であれば記事化する前に国民権益委にインターネット上で申告するように知らせてあげなさい’という。 情報提供者が保護されうる根拠ができるためだ。"

イ・ジムン中尉が1992年3月22日14代総選挙軍不在者投票で広範囲な不正行為が行われたと暴露している。 <ハンギョレ>資料写真

なぜ国家機関に先に申告しなかったのかと
暴露者を保護しないのは‘国家便宜主義’

-ノ・フェチャン前議員に対する最高裁の有罪判決をどのように見るか?

 "一種の公益的告発者だと見る。 国会議員の職務延長線上で仕事をしたわけだが、言論活動と同じように私たちの社会の腐敗行為に警鐘を鳴らしたためだ。 判決文を見直せば、私たちの社会の最高エリートと言われる最高裁判事が書いたものかと疑わしい。 記者会見の時に報道資料を配ったのは大丈夫で、これを自身のインターネット ホームページに上げたことはダメだと最高裁は判断した。 最高裁もホームページ空間に報道資料をすぐに上げているではないか? また、事件が8年が過ぎた時点で暴露したことには公益性がないと判断した根拠は何か? その時点でも経済・政治権力を支配する位置にある人もいたし、現職検事もいるという話だ。 内部告発事件も国民参加裁判の対象に拡大しなければならない。 裁判所でなく国民的常識的判断が必要だ。 裁判所が法の条文にぶらさがって判決することになれば生き残れる内部告発者はいない。 内部告発過程で秘密漏洩など実定法に反する可能性が高いためだ。"

-1992年現役将校(陸軍中尉)の身分で軍不在者投票の広範囲な不正を暴露した。

 "当時私は9師団の小隊長として勤めていたが、大隊長が職業下士官と将校を呼んで精神教育をした。 ‘大統領が属している与党に投票するのが軍人の道だと考える。 中隊長小隊長は自分の兵力に対して責任をもって教育しろ’という内容だった。 その後4月にある幹部の考課評価の時、自分の兵力の与党支持率が反映されるという噂が広がった。 甚だしいところでは中隊長の見る前で投票させた。 公開投票をしたわけだ。"

 記者会見直後、イ・ジムン中尉は首都防衛司令部憲兵に連行された。 虚偽事実流布による名誉毀損の疑いで調査を受けたが、事件の波紋を憂慮した軍当局は起訴猶予をする代わりに罷免処分して二等兵に降格させ不名誉除隊させることで事件を終結した。 その事件でその年の大統領選挙の時からは軍不在者投票制度が変わり、与野党参観人が参加する中で営外投票できるようになった。 軍の営倉から解放され列車の中で横に座った現役大隊長が彼を見つけて「ありがとう。 大統領選挙を控えてとても気が楽だ。 そうでなかったらやむを得ず部下に精神教育をしなければならなくて大変だったはずだ…」と話したという。

-そのまま目を瞑ってやりすごすこともできたはずなのに….

 "私は大学の時、学生運動をした人でもない。 ピョ・チャンウォン教授のように政治的には合理的保守側だった。 当時私たちの中隊長だけが唯一初めに中立を守った。 ‘なぜ軍人が選挙の時になれば政治に介入して悪口を飲み込むのか分からない。 私たちの中隊だけでも気楽に放っておきなさい’と言った。 ところが機務司が派遣した保安班長(大尉)と大隊長が圧力を加えると彼は所信をたたみこういう話をした。 ‘今この瞬間、君たちに恥ずかしい姿を見せて申し訳ない。 まだ心に決めていないなら1番(与党)を捺して上げれば良いだろう’として涙を流しながら出て行ったよ。"

 彼は中隊長の姿を見ながら自身が告発した場合、中隊長が受ける不利益ために人間的に悩んだし、イ・ムノク監査官とユン・ソクヤン二等兵が身分上の不利益を受けるのを見て1週間迷ったという。

92年将校の時、大隊長が "与党に投票しろ"
不正選挙武勇談聞いて 怒り・自己恥辱感

-どのように決行したか?

 "決行直前、部隊ROTCの集いがあった。 退役を控えた先輩の送別式をする席で中隊長が不正選挙について武勇談を打ち明けたよ。 酒を飲んで二次会で文山(ムンサン)のナイトクラブに行った。 将校が10才前後の子供がするショーを楽しむのを見ながら‘選挙不正をしてこのような席で忘れようとしている’姿を見て‘これは一体何か’という気がした。 25才の青年として若い将校として、怒りというか、自己恥辱感というか…。 私が言えないのは‘私が単に勇気が無いことだな’と考えた。 その日の夜すぐにハンギョレ新聞社を訪ねて行った。"

-後悔していないか?

 "一番たくさん受ける質問だ。 私も後悔する時がある。 去る20年、自分の生き様がおもしろいことばかりではなく、中間中間に苦しい時期があった。 罷免されて軍から出て5年間、再び公務員にはなれない規定があって公務員試験も受けられないで、軍入隊前に入社した三星(サムスン)への復職も取り消された。 しかし一方で多くの内部告発者の中で私は幸せなケースだと考える。 3年間の裁判を通じて罷免取消判決を受けて名誉回復したし、軍不在者投票制度も改善された。 内部告発成功の二つの基準、内部告発者保護と制度システム改善が私の場合には満たされたのだ。 社会の関心も受けた。 40代の家長身分で内部告発したイ・ムノク監査官のような方がより一層偉い。"

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/578386.html 韓国語原文入力:2013/03/17 19:35
訳J.S(4475字)

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