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[論争]‘李正姫防止法’どう見るべきか

登録:2012-12-13 21:42 修正:2012-12-14 00:20

 大統領候補討論会の参加資格を巡って論難が起きている。 今月初め、中央選挙管理委員会主催討論会で李正姫(イ・ジョンヒ)統合進歩党候補が朴槿恵セヌリ党候補に向かって「朴候補を落とすために出てきた」と無差別攻勢を浴びせたためだ。 これに対しセヌリ党は法定討論参加者の資格条件を強化する内容を盛り込んだ公職選挙法改正案を発議した。 いわゆる‘李正姫防止法’だ。 これに賛成する側は主要候補を厳密に検証するには当選可能性のない候補は排除することが正しいと主張する。 しかし、少数政治集団の発言権を制限することは民主主義を後退させる処置という反論もある。 両側の見解を聴いてみた。

ホン・ソンゴル国民大行政政策学部教授

主要候補検証強化ために必要

当選可能性のない候補の討論参与で
主要候補の政策・資質検証機会 失踪
群小候補討論は別に保障してある

 去る4日、第1次大統領候補討論会で縦横無尽の活躍をした李正姫(イ・ジョンヒ)統合進歩党候補のおかげで俗称‘李正姫防止法’論議が熱い。 国会議員5人以上を保有する政党の候補者に討論会参加資格を与えている公職選挙法第82条2項により支持率0.7%台の李正姫候補が討論会に参加し、 "失うものがない" という彼女の直接的話法と華麗な弁舌が討論会をおもしろい一つのドラマにした。

 李候補の放言と毒舌に胸がスッキリしたという人々もいるが、これは討論の質と密度を落とすことによって結果的に国民から主要候補らの政策や資質をきちんと検証できる機会を事実上奪ってしまった。 水準の高い討論が可能になるよう参加資格を国会交渉団体を構成した政党の候補者とか世論調査平均支持率15%以上の有力候補に制限しなければならないという声が出てくるのはこのような理由からだ。 人身攻撃性発言や根拠のない疑惑提起などに対する厳格な規則の適用と共に、討論の質を高めて国民の知る権利を保障するために機械的公平性を追求するよりは躍動的な反論と再反論を許容するべきだというのが大半の意見だ。

 3回の討論会で主な政策イシューを全て扱わなければならず、3人以上の候補が参加するならば候補者の発言時間と回数などを制限する以外に有効な方法がない。 万一、今回のように失うことがないという候補が腹を括って討論規則に従わないならば、討論会は本来の目的を達成できない。

 望ましい大統領候補討論会のためには何をどのようにするべきか? まず討論会だけをもってこの問題を改善しようとすれば限界に突き当たらざるを得ない。 国民の知る権利が大幅に制限されたことは、事実候補登録時まで大統領候補が確定しないところから始まったことが大きいので、大統領候補の確定や候補登録など全般的な問題をあわせて検討しなければならない。

 特に、唯一大統領候補討論会の参加資格だけが緩和されているが、これを国会交渉団体の構成や平均世論支持度15%以上に制限する必要がある。 大統領に当選する可能性が全くない候補によって、当選する可能性のある候補らの立場を国民が正しく理解できないということは公益に符合しない。 一部では討論会参加資格基準を高めることが群小候補の意見発表機会を過度に制限すると主張しているが、これは説得力がない。 今でも群小候補らに別途の討論会を保障しているからだ。

 討論方式も改善が必要だ。 主要候補間に討論が成り立つためには、与えられた主題に対する自由討論方式を採択する必要がある。 討論会を通じてすべての主題を一度に扱わなければならないという強迫観念を捨てて、大統領としての倫理とリーダーシップ、国家観などを検証できる主題を選定して集中討論することこそが国民の判断を助けられる。

 だが、何より重要なのは有権者の賢明な判断だ。 大統領候補討論会は有力候補のリーダーシップと疎通能力、政策とビジョンなどをイメージとともに伝達することによって有権者の選択を助けることにその目的がある。 討論会で些細な話術で国民をげん惑したり困難な質問に対する返事を回避する候補を選択するならば、その水準に符合する大統領が当選することになり、それにともなうすべての責任は結局そのような選択をした国民に帰るほかはないためだ。

ホン・ソンゴル国民大行政政策学部教授

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キム・ヒョンチョル聖公会(ソンゴンフェ)大民主主義研究所研究教授

国民の知る権利と公平性を害する処置

支持率の低い候補であっても
政見を知らせる機会を与えることが
民主主義の基本精神だ

 公職選挙法により12月4日と10日の2度にかけて大統領候補テレビ討論が実施された。 第18代大統領選挙を目前にして初めて実施されたためか4日に行われた初めての討論の視聴率は34.9%で、2002年大統領選挙時より高く、10日に開かれた第2次討論では34.7%で0.2%低くなったとはいえ高い視聴率だった。 このように高い視聴率は大統領候補らの政策と資質を検証しようとする国民の成熟した政治意識を反映するものと言える。

 しかし討論を視聴した国民の反応は満足できないと評価されている。 その理由の一つは討論進行方式が大統領候補らの政策と資質を検証するのに適合しなかったということであり、他の一つは候補らの政策内容と実現方法に対する検証よりは候補個人の過去事や前政府あるいは現政権の失政暴きにばかり汲々としたということだ。 特に、後者と関連して一部の国民とセヌリ党、巨大保守言論はその理由を李正姫(イ・ジョンヒ)統合進歩党候補に求めている。 すなわち当選可能性が皆無な大統領候補が出てきて当選可能性の高い候補らの政策検証時間を奪い、討論会を主導したということだ。

 このような立場を強力に表明したセヌリ党のファン・ヨンチョル議員は1次テレビ討論が終わった後、討論会で群小候補を排除する内容の法案を発議した。 その内容は中央選挙管理委員会が主管する大統領候補テレビ討論会の参加資格を‘国会交渉団体を構成した政党候補者’または‘世論調査結果を平均した支持率が15%以上である候補者’に制限しようということだ。 しかし、この法案は1997年に初めて導入された大統領候補テレビ討論の重要な立法趣旨の一つである‘国民の知る権利と選挙運動の公平性’を侵害するものだ。 そして国民が要求する‘既得権下ろし’という政治刷新の方向に逆行するものだ。

 大統領選挙政局の核心争点の一つである政治刷新は、特定集団と勢力に独占されていた権力アクセシビリティと機会をより多くの人々に公平に付与することだ。 当選可能性がない候補を排除し有力な候補だけのテレビ討論をしなければならないという主張は、国民が大統領候補らの政策と資質を検証できるよう討論の効率性を高められるという点で一面妥当だ。 しかし、当選可能性が高い候補らだけのテレビ討論は、既得権を解体する方向ではなく、むしろ既得権と既存政治勢力の権力独占性を強化することと言える。

 また、討論への参加制限は社会の多様な要求と利害を政治的に代表して明らかにすることができる機会を制約しかねないという点で、民主性が拡張されるよりは縮小されるという問題点を持つ。 むしろ当選可能性がない大統領候補とは言え、自分たちの政見と政策を知らせることができる機会を公平に与えられることが民主主義の原理に符合することだ。 このようなテレビ討論参加保障は政治的・経済的・社会的弱者の利害と要求を表出し、政治議題化できる機会を与えるという点で民主性の拡張にも肯定的な機能をするだろう。

 したがってテレビ討論は当選可能性がある候補らだけの競争の場ではなく、群小政党および競争力が低い候補らも参加して国民の多様な声が政治に反映されうる場として生まれかわらなければならないだろう。 それが国民の要求に応じるための政治刷新のもう一つの出発になるだろう。

キム・ヒョンチョル聖公会(ソンゴンフェ)大民主主義研究所研究教授

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/argument/565275.html 韓国語原文入力:2012/12/13 19:36
訳J.S(3390字)

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