原文入力:2012/08/23 22:52(1771字)
←22日午後7時30分、ソウル、永登浦(ヨンドンポ)警察署の警官らが汝矣島(ヨイド)無差別刃傷事件の被疑者キム・某(30)氏を永登浦区(ヨンドンポク)、汝矣島洞(ヨイドドン)のクレジットプラザ後方で取り押さえている。 ソウル地方警察庁提供
絶望殺人の時代
汝矣島(ヨイド)などで相次いだ‘無差別犯罪’
疎外階層が内面に怒りを蓄積
長期にわたり復讐心を燃やし事前計画
専門家 "経済的落伍者が限界状況"
去る22日キム・某(30)氏がソウル、汝矣島で行った刃傷事件は今まで国内で起きた通常の犯罪とは違う。 失業者である自身の境遇を悲観して前の職場の同僚に対する憎しみを抱いたキム氏は、事前に犯行を計画して罪のない通行人まで無差別攻撃した。 米国など欧米でたびたび起きる‘多重殺人’(Mass Murder)とそっくりだ。
米国などで多重殺人を犯す人々は解雇・失職など社会経済的困窮に処したケースが多い。 これ以上悪くなることがないという観念に陥った人々は犯行直後に自殺したり平気で逮捕されたりもする。
‘汝矣島(ヨイド)刃傷’事件をはじめとして最近国内で発生した一連の無差別凶器暴力事件も、被疑者が皆疎外・貧困階層であり逮捕・処罰を恐れない自暴自棄状態で犯行を犯したという共通点を持っている。 これに伴い、韓国でも‘絶望殺人’または‘絶望犯罪’が本格化したという診断が出てきている。 最近急激に進行された社会両極化の結果、限界状況に陥った人々が絶望的状況に対する怒りを特定集団・群衆を標的にして凶悪犯罪を通じて表出しているということだ。
警察による調査の結果、キム氏は前科がない平凡な事務職会社員だった。 大学中退後、契約職を転々としてカードローンで信用不良者になり、再就職の道も閉ざされてしまった。 自殺を考えた彼は‘一人で死ぬのはくやしい’と考え、前の職場同僚に対する復讐心を燃やした。 少なくとも数ヵ月前から犯行を計画して凶器として使う刃物を購入した。 キム氏は警察で「眠れない夜には刃物を砥石で研いでいた」と話した。
事件の2時間前に前もって現場に到着したキム氏は、別の昔の同僚と話を交わすほど冷静だった。 犯行対象として念頭に置いた職場同僚2人が現れるや、静かに後をついて行き凶器を振り回した。 以後は通りすがりの市民2人も刺した。 「会社の屋上に登って自殺するつもりだった」とキム氏は警察で打ち明けた。 考試院の地下部屋で暮らしていた彼は逮捕当時、現金200ウォンを持っていただけだった。 深刻な貧窮状態で緻密に犯行と自殺計画を立てたのだ。
イ・ウンヒョク警察大教授(犯罪心理学)は 「今回の事件は非常にアメリカ的」と話した。 2010年8月、米国、コネチカット州で流通企業で仕事をして解雇された黒人が 「自分を困らせた(職場内)人種主義者らを殺す」として、拳銃を乱射し8人を殺害する事件が起きた。 2009年4月ニューヨーク州では真空掃除機の工場で解雇されたベトナム系米国人が銃器を乱射して移民サービスセンター職員など13人が亡くなった。
自身の経済的貧窮を招来した思われる憎悪の対象を選び、実際の犯行ではその周辺の人々まで害したという点で‘汝矣島刃傷’事件は米国で発生したこれら銃器乱射事件と似ている。 銃ではなく刃物を使ったという点が違うだけだ。
絶望に基づいた多重殺人が韓国で更に増えると見る理由がある。 韓国の自殺率は世界最高水準だ。 専門家たちは高い自殺率がより多くの多重殺人、または絶望殺人に‘転換’する可能性が高いと指摘する。 臨床心理学者であるチョ・ヨンボム博士(心理学)は「国内自殺原因の70~80%が失職と借金など経済問題」として「今までは自身の絶望的状況を自ら叱責して自殺したとすれば、最近になってその怒りを外部に表出する様相が現れている」と指摘した。
ユ・シンジェ、キム・ジフン、オム・ジウォン記者 ohora@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/548471.html 訳J.S