原文入力:2012/01/16 22:38(5812字)
ソン・ギョンファ記者、アン・スチャン記者
開かれた疎通の場ではあるが
自分と異なる意見に対しては攻撃的
法哲学と人権法を専攻したホン・ソンス淑明(スンミョン)女子大教授(法学)は‘ツイッター初歩者’だ。 去る7日夕、ホン教授はタイムライン(自身のアカウントに上がってきたツィット集合)で、時事評論家チン・ジュングォン氏と<ナコムス>の一部ファンの間に広がっている論争を発見した。 チョン・ボンジュ前議員に対する判決と関連して「ナコムスの主張と現実の間に乖離がある」という趣旨のチン氏の主張を巡り、反論・再反論が行き交っていた。
興味深く論争を見守ったホン教授はチン氏の文に概して同意したが、事実関係の誤りを発見した。ツィットを書いた。 "チン・ジュングォン氏が(BBK関連疑惑を)立証する責任はチョン・ボンジュ氏にあると言ったことは訴訟の性格を誤って理解されているようだ。 …虚偽事実流布罪で処罰しようとする刑事訴訟であったため、立証責任は検察にあります。"
以後、ホン教授は驚くべき経験をした。 彼の文はナコムスのファンを中心になんと256回リツィットされ、あっという間に広まった。 ホン教授を応援する文も秒単位で上がってきて、 "チン・ジュングォンが論破されたようだ" 、"ホン教授がチン・ジュングォンを制圧した" 等の反応もあった。 200人余りに過ぎなかったホン教授のフォロワー(追従者)は4日間で5000人余りになった。
"私がチン教授の論理に大変な弱点を(発見して)攻撃したとばかりにリツィットする方々もいるが、そのような趣旨では全くありません。 私はチン教授の問題提起に殆ど同意します。 ただし彼の主張にもいくつか誤りがあるということを指摘しただけです。" 慌てたホン教授は再びツィットを上げたがこれは16回リツィットされるに止まった。
イ・テクグァン慶煕(キョンヒ)大教授(英米文化)は最近‘キム・オジュン(タンジ日報総帥)の男性中心主義’、‘パク・ジョンクン(社会党党員)拘束事態に対するナコムス ファンたちの無関心’等を指摘する文をツイッターに継続的に上げている。 言論インタビューで 「‘表現の自由’を主張するナコムスが表現の自由を容認しない姿を示している」とも話した。イ教授に同意するツィットもあるが、反対のケースがより多い。 "言葉遊びに過ぎない"、"カッカ(閣下)が好きみたいだ" 等の人身攻撃性反応も横行した。
BBK疑惑を暴いているナコムスは新しい疎通・表現の場を開放した代案言論だ。 しかしナコムスに対する省察的問題提起がツイッター空間ですら辺境に追いやられる雰囲気に対して心配する人々もいる。 ツイッターの開放性・民主性を守ろうとする韓国ツイープル400万人全員に投げかけられた宿題だ。
ソン・ギョンファ記者 freehwa@hani.co.kr
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疎通の空間を塞ぐ‘排斥の暴力’、新しいメディアを揺さぶる‘古い権力’
理念対決・憎しみ煽る文だけを転送して扇動したり
極端な主張に同時多発攻撃
スパム・遮断設定‘アカウント爆破’も
取材たけなわだった昨年末、ハン・ワンサン前統一副総理に会った。 1960・70年代の反独裁闘争の主役だった彼はツイッター使用者らに対して「下から上がってきて水平的に拡散し、互いに顔も知らない人と疎通し、いつでも同志となって行動する‘ジュルシアル(綱種)’が人類歴史上初めて登場した」と語った。 民衆を‘シアル(種)’と呼んだ思想家ハム・ソコンの概念を援用し‘綱’(オンライン)を通じて連結されるツイッター使用者を‘ジュルシアル’と名付けたのだ。 彼は「ジュルシアルが主導する非常に重要な変革の時代がきた」と強調した。
変革を恐れる既成権力は‘怪談・デマの震源地’とツイッターを名指しし、その影響力を縮小させようとしている。 過去のオフライン政治の慣性に偏った現行法・制度もまた、ツイッターの自由と創意を固く締めつけている。 しかし最も大きな脅威はツイッター内部にある。 開放的疎通空間を極端政治対決の場に変質させることが頻繁に起きている。 既成権力・言論に対する不信から始まったツイッター政治談論自体がまた別の不信の対象になりうるという憂慮も提起されている。 ツイッターをするジュルシアル、ツイープルの間で起きていることだ。
←昨年12月20日夕、ソウル徳寿宮(トクスグン)大漢門前でBBK事件関連最高裁最終宣告を控えたチョン・ボンジュ前民主党議員応援映像録画行事を訪ねた市民がインターネット ポッドキャスト プログラム<ナコムス>出演陣の姿をスマートフォンなどを利用して撮影している。 キム・ジョンヒョ記者
フォロワー(追従者)4万5千人余りを率いたカン・ジェチョン民主化補償法改正推進本部長は保守ツイッター陣営で結構有名だ。 より多くの保守の人々がツイッターに参加し“従北、親北韓、ロウソク群衆を清算しなければならない”と粘り強く主張してきた。 彼のツイッターアカウントの初期画面には“スパイ・パルチザン・殺人犯・暴力犯などが民主化人士に化けている”という文が載っている。
攻撃的な彼の主張はたびたびまた別の攻撃に露出している。‘アカウント爆破’だ。 昨年夏、カン氏は韓進重工業関連‘希望のバス’に巨額の活動資金が投入されたという文をツイッターに上げた。 翌朝起きてみると彼のツイッターアカウントが消えていた。彼があげた文も全て消えた。 彼は「左派嘘つき勢力が真実勢力を追い出すために同時にスパム申告をした結果」と話した。
特定イシュー・商品を無差別に宣伝・広報し‘スパム ツィット’だけを上げるアカウントだと判断されれば、ツイッター使用者は‘遮断’をしたり‘スパム申告’をすることができる。 スパムと判断されれば、米国ツイッター本社はアカウントを強制的に削除できる。 ツイッター本社は多数が遮断したりスパムとして申告したケースをその判断基準の一つとして紹介している。 毎秒・毎分単位で似たような文を載せ、他の使用者に不快感を与える人はツイッターから追放されることになる。
韓国では親北勢力の清算を主張する強硬右派の人々のアカウントがこうしたことを体験している。 カン本部長は「2010年以後、今まで8回にわたりアカウントが消えた」と話した。 彼が主導するツイッター‘ダン’があるが、「加入者143人の中で19人がアカウント爆破を経験したことがある」とカン本部長は話した。 保守的ツイッター使用者の中には「カン本部長などを見ると‘爆破’が恐ろしくて意見を直接残すことができない」と話す人もいる。
該当文を見たくなければ‘アンフォロー’すれば良く、極端な主張であるほどツイッターの影響力が顕著に落ちるという点などを考慮すれば、あえて‘スパム’として申告することは自然ではない。 チャン・トクチン ソウル大教授(社会学)は「相手の話す権利を制限するという点で意図的アカウント爆破は望ましくない」と語った。
アカウント爆破が相手を排斥する暴力ならば、アカウント爆破を体験する強硬右派のツィットにも排斥の暴力がちらつく。 カン本部長をフォローする保守指向ツイッターアカウント4ヶを任意に選定し分析した結果、“‘従北左派ども’といえばカニの泡を吹き出す奴。彼は従北左派どもだ”、“北韓から金を受け取った運動圏出身政治家がいる”、“堂々としたアカと卑劣なアカ”等、大多数の文が理念対決・憎しみを煽る内容だった。
その中の一つのアカウントのタイムラインに去る11日一日に上がってきた24ヶのツィットを見れば、23ヶがチョ・カップジェ ドットコム・朝鮮ドットコム・リバティーヘラルド・ニュデイリーなど保守言論インターネット記事の題名をそのまま引用したものだった。 直接ツィットを書くよりは強行保守言論の‘理念報道’を転送することに注力したわけだ。 これら4ヶの保守指向アカウントで昨年1~11月に生成された1万9700件余りのツィットの80%程度は、お互いの文をリツィットしたものだった。 政治扇動のために特定記事だけを機械的に転送する強硬保守派のツイッター活動方式を垣間見ることができる。
反面、カン本部長は進歩陣営の組織的政治扇動を疑っている。“イ・ジョンヒ(統合進歩党)議員の文の50%は嘘なのに、それをリツィットしろと左派から指令が下されているようだ”と主張した。それに対抗しなければならないという使命感も強い。 “ツイッターは真実を伝えるために神が下さった贈り物であるから、偽り歪曲勢力の扇動を阻み、右派がより有効に活用しなければならない”と話した。 2012年総選挙・大統領選挙を控えてツイッターが政治疎通の空間として浮上しながらツイッターを‘掌握’しなければならないという強迫が高まっているわけだ。 掌握の強迫は強硬な排斥につながらざるを得ない。
強行保守の文は幅広く伝播せず自ずから選り分けられる。 しかし最近では広く伝播される文に対する問題提起もある。 時事評論家チン・ジュングォン氏のささいな誤りを指摘して<ナコムス>ファンたちの声援を受けたホン・ソンス淑明女子大教授は「このことでツイッターに対する経験をまともにした”と話した。 彼が見るにはツイッターは‘朝中東’フレームから自由で、誰でも平等に論争に参加できる長所を持っている。 しかし才覚ある短いツィットだけを好む雰囲気が、豊富で省察的な内容を交わす上で時には障害物になるというのが彼の考えだ。 その過程で“同じ側の人々どうしがフォローして、気に入らなければ遮断することになれば、自分と異なる考えは存在しないという錯覚に陥りかねない"と憂慮した。
言論学の理論の中に‘沈黙の螺旋理論’がある。 メディアが支配的意見を反復・持続的に提示すれば、自身の見解が少数と扱われた人々が社会的孤立を避けるために沈黙するという内容だ。 ツイッターが脚光を浴びるのは既成メディアによって沈黙させられた人々が新しいメディアで自由に疎通するためだと専門家たちは評価する。 そのようなツイッターがまた別の‘沈黙の螺旋’を形成するならば?
シン・ジンウク中央大教授(社会学)はポータル ダウムの‘アゴラ’に対して言及した。 2008年ロウソク集会の震源地であったディベートルーム アゴラが特定政治指向を帯びたいわゆる‘バイト’活動に汚染されながら公論の場としての機能を失うことになったということだ。 シン教授は「アゴラに比べてはるかに流動的・開放的なツイッターはその前轍を踏まないと思うが、最近<ナコムス>の限界を感じながらもそれをツイッター上であからさまに話すことができない雰囲気が形成されることには憂慮の恐れがある」と話した。 彼は「公論の場への参加者の同質性が高まるほど(異見に対する)排他性が強まることになり、そうなればツイッターで集団知性が具現されえなくなるだろう」と指摘した。
英国のシンクタンク‘デモス’は昨年7~9月ヨーロッパ全域の極右政党・団体会員を対象に調査を進めた。 調査の結果、これらの会員は△主流政治と司法体系を強く不信に思い△率直で直接的に内心を打ち明ける指導者を信頼し△国の未来を悲観するが投票を通じて政治を変えることができると考え△ツイッターなどソーシャルメディアで積極的に活動していた。 ツイッターが極端な政治空間に汚染される可能性もあるという意だ。
既成メディア権力批判しながら、また別の沈黙強要する矛盾
“同質性だけを追求し排他性が強まれば集団知性は具現されえないことに”
イ・テクグァン慶煕(キョンヒ)大教授(英米文化)は「現実政治が激化し反ハンナラ党情緒が過熱する中で(誹謗・悪口・攻撃中心の)インターネット掲示板コメント文化になじんだ人々がツイッターに大挙進入し、そのために他の意見をまんべんなく傾聴していたツイッターの既存秩序が動揺している」と指摘した。 イ教授は去る11日、ツイッターにあげた文でも“表現の自由を主張しながら異見にリンチを加え、疎通しない権力を批判しながら自身は疎通しない矛盾”が一部ツイッター使用者の間に広がっていると皮肉った。 彼は「ツイッターを疎通の場として見て他の意見を十分に尊重することをツイッター活動の最も重要な目的としなければならない」と話した。
政治思想家ハンナ アーレントは多様な意見に開放的であらねばならない理由を次のように説明した。“より多くの人々の見解が私の頭の中に入っていれば、私が彼らの状況に置かれた如く考える能力が強まり、私の最終結論がより妥当になる。”既成権力・言論に失望した人々がツイッターに駆せ参じた理由でもある。 その理由が失われれば新しいメディア ツイッターも古い権力になるだろう。
アン・スチャン、ソン・ギョンファ記者 ahn@hani.co.kr
ツイープルとは?
“私たちツイープル(Tweeple)はもう少し完ぺきな政府を構成し、もう少し完ぺきな疎通を確立し、もう少し完ぺきな透明性を増進させるためにツィットをする。”米国ツイッター使用者が作ったあるインターネット サイトの謳い文句だ。‘ツイッター’(Twitter)は鳥がしきりにさえずる声を意味する擬声語ツィート(tweet)から始まった社会関係網サービス(SNS)の名前だ。ツイッター使用者はひたすらしきりにさえずることでは満足せず、もう少し積極的な政治参加を企てている。 彼らは自らを‘ツイープル’(twitter+people)と呼ぶ。 ツイッターする民衆という意だ。
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/515067.html 訳J.S