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陰謀論と韓国保守の政権獲得戦略【寄稿】

登録:2026-03-05 01:28 修正:2026-03-05 10:09
先月27日、改革新党のイ・ジュンソク代表と元韓国史講師の保守系ユーチューバー、チョン・ハンギル氏が、生配信で「不正選挙は陰謀論か」をテーマに討論している=ユーチューブチャンネル「ペン・アンド・マイクTV」より//ハンギョレ新聞社

 1969年の米航空宇宙局(NASA)によるアポロ11号の月面着陸は米国政府のねつ造だとする「月面着陸ねつ造陰謀論」、あるいは「アポロ計画陰謀論」を信じている米国人は、どれほどいるのだろうか。1999年の米国ギャラップの世論調査では、6%ほどがねつ造だと信じていた。2019年のサテライト・インターネット・ドットコムの調査では、約10%が信じていた。2021年に科学と陰謀論を扱った『極地・環境・科学調査』(POLES 2021)では、12%の米国人がNASAは月に人類を送っていないと答えた。

 2021年の調査結果は非常に興味深い。トランプを支持する回答者は、ワクチンを接種するとマイクロチップが埋め込まれるという陰謀論、地球は平らだという主張、月面着陸ねつ造論に同意する可能性が、トランプを支持しない人々よりも高かった。特にミレニアル世代(1981~1996年生まれ)は月面着陸陰謀論に24%が同調しており、上の世代よりも各種の陰謀論に傾倒していた。注目すべきは、ワクチンのマイクロチップ、月面着陸、地球の年齢に関する質問において、回答者の教育レベルによって回答に有意な差がなかったことだ。

 人類はすでに月に行ったことがある。月面着陸ねつ造論者たちが答えなければならないのは、1969年から1972年にかけてNASAの宇宙飛行士たちが月から持ち帰った382キロの月の岩石は世界中の研究所に渡り、数十年にわたって研究されてきたのに、なぜ誰もねつ造だと言わないのか、ということだ(月には大気がないため、月が誕生して間もない頃の痕跡がそのまま残っている)。宇宙飛行士たちが当時月面に設置したレーザー反射鏡に世界中の科学者たちがレーザーを照射して月との距離を測定しているが、それを誰が設置したのか答えるべきだ。また、世界中の高解像度の月面写真に、宇宙船の着陸の痕跡や宇宙飛行士が立てた星条旗が写っているのはどういうことなのか、答えるべきだ。

 月面着陸ねつ造論は間違っているという証拠は次々と明らかになっているが、この陰謀論を信じる人が徐々に増えている理由は2つあると推測される。1つ目はインターネットやユーチューブの発達。これによって陰謀論に接する人が次第に増えているのだ。2つ目は、政治家やインフルエンサーなどの世論に影響力を持つ人々が大っぴらに陰謀論を支持しているからだ。前述の研究が示すように、陰謀論は学歴とは無関係だ。

 不正選挙陰謀論も同様だ。先日、改革新党のイ・ジュンソク代表と、ユーチューバーのチョン・ハンギル氏をはじめとする複数の人物が、韓国の不正選挙についてオンライン討論をおこなった。不正選挙陰謀論者は、金大中(キム・デジュン)政権時代から数十年にわたって不正選挙プロジェクトが進められてきたと主張する。最高裁判所もすでに不正選挙に加担しており、中国政府が韓国の選挙に介入しているうえ、誰にも知られることなく親中政治家が当選しているため、中国政府の同調勢力が増えているという。いずれも立証できない妄想に過ぎない。

 今や不正選挙陰謀論者たちは答えなければならない。2025年6月3日に行われた第21代大統領選挙では、全国に3568カ所の事前投票所と1万4295カ所の本投票所、254カ所の開票所が設置された。投票と開票の過程は、不正選挙や選挙でのミスを監視する各党の参観人たちが目を光らせて見守っていた。事前投票箱は24時間CCTV(監視カメラ)で撮影されていたし、映像は外部に公開されている。月に人を送ることなく世界中の科学者をだます方が月に人を送るよりも難しいのと同様に、選挙当日に開票を見守る数十万の人々をだまして不正選挙を行うというのは、一生懸命に選挙運動をして票を得るよりもはるかに難しいことだ。

 このように親切に説明しても、不正選挙を信じる人々は信じ続けるだろうし、その数も増えるだろう。その理由は政治にある。野党第一党である「国民の力」のチャン・ドンヒョク代表は、この討論に感銘を受けたと述べて、不正選挙を監視する組織を作ると語った。2024年9月の米国ギャラップの世論調査では、開票の正確さに対する信頼度は共和党支持者が29%で、民主党支持者の85%とは対照的だった。不正選挙を主張するドナルド・トランプのせいだ。ファン・ギョアンからはじまり、尹錫悦(ユン・ソクヨル)を経てチャン・ドンヒョクへと受け継がれる大韓民国保守陣営の不正選挙陰謀論は、抜け出せない沼となってしまっている。韓国保守が錯覚すべきでないのは、トランプは不正選挙を主張したから当選したわけではないということだ。大韓民国保守は不正選挙陰謀論ではなく、政権を取るための何らかのプランを持っているのだろうか。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジュニル|時事評論家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1247512.html韓国語原文入力:2026-03-03 20:08
訳D.K

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