スリランカ出身の移住労働者ムディダ・マノズさんに会ったのは昨年3月のことだった。2023年末に一般技能人材ビザ(E-7-3)で造船溶接工として韓国にやって来て、わずか1年あまりで追い出される羽目になっていた。表向きは「自発的退社」だが、それは明らかに何かの間違いのようにみえた。マノズさんが退職願いの理由欄に記した「転職」という単語のせいでだ。マノズさんのビザは会社が倒産しない限り原則的に転職は不可能なものであり、退社はすなわち出国を意味する。マノズさんを韓国に来させて働かせていた会社は、世界的な造船企業のHD現代重工業だ。
先月末の時点で同社の元請け労働者は1万8千人あまり、下請け労働者は2万7千人あまり。そのうち移住労働者は8千人あまりにのぼる。昨年1月時点の資料(HD現代尾浦を含む)と比べると、1年間で元請け労働者はそのままだが、下請け労働者は2千人以上、移住労働者は1千人近く増えている。超好況期の造船所の人手を下請けと移住労働者で埋めているということだ。
造船所の移住労働者の問題はしばしば浮上する。体調不良で3日間出勤できなかった移住労働者は退社を強要され、職場を移れるかのようにだまされて書かされた退職願は移住労働者を崖っぷちまで追いやる。最低水準の賃金さえも裏契約のせいで保障されない。
移住労働者に転職の自由はない。非専門就業ビザ(E-9)は事業主の同意を得れば3回まで可能だが、特定活動ビザ(E-7)はそれすらない。「安定的な人材供給」のためだという。「韓国で稼ぐためにはそれくらいは受け入れるべきだろう」。普遍的な共感は消え去り、暴力だけが残された言葉が居心地を悪くする。ゆがんだ構造はフォークリフトの先につるされた人権じゅうりんとしてあらわになる。
23日の蔚山(ウルサン)でのタウンホールミーティングで李在明(イ・ジェミョン)大統領が投げかけた疑問は、蔚山市が実施する造船業種広域型ビザ(E-7-3)だけの問題ではない。世界的な造船所が安価な労働力で埋めている雇用の構造全般に対する問題意識だ。韓国人労働者は、高強度の労働に低賃金が固定化した造船現場に見向きもしない。人手が貴重になればその価格が上がるのは当然だが、政策は移住労働者を増やすというものだった。法務部が造船企業のE-7ビザ移住労働者の割合の上限を20%から30%に上げたのが代表的な例だ。広域型ビザはさらに、移住労働者を地域にも縛りつける。蔚山広域型ビザを取得して入国した移住労働者が働けるのは、地域の唯一の造船所であるHD現代重工業のみだ。
タウンホールミーティングの3日後、キム・ドゥギョム蔚山市長は「広域型ビザは法務部の定めた上限を超えておらず、承認を受けた440人の中で入国したのはようやく88人」だとして、不満を表明した。最低賃金で働く移住労働者でなければ労働集約産業である造船の競争力は守れないとして、経済的論理で事案をみてほしいと述べた。企業の人件費負担にも懸念を示した。任期中ずっと企業寄りの姿勢を示してきた市長らしい発言の中でも、「働かせるに値すると思ったとたん、きついと言って逃げ出す」という一言は脳裏に突き刺さった。広域型ビザはただの足かせにすぎない。
現代自動車グループが今月初めのCES2026で初公開したヒューマノイド(人型)ロボット「アトラス」は、雇用論争を巻き起こした。高賃金労働者も低賃金労働者もヒューマノイドに代替されうるという時代的論争において、移住労働者は過渡期的な懸案なのかもしれない。方向性とスピードを決めるのは、結局は政策だ。
チュ・ソンミ|全国チーム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )