本文に移動

AIは福祉を解体するだろうか、それともさらに人間らしくするだろうか【寄稿】

登録:2026-01-30 06:31 修正:2026-01-31 09:15
イ・ヨンボム|建国大学対外副総長・世界行政学会副会長
李在明大統領が昨年12月16日、世宗市政府世宗コンベンションセンターで開かれた保健福祉部の業務報告で発言している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

  保健福祉部の2026年度の予算を見ると、李在明(イ・ジェミョン)政権が人工知能(AI)をどれほど重要な戦略と考えているのかが分かる。AI福祉・ケアの新規投資を含むAIを基盤とする保健・福祉およびバイオヘルス分野の研究開発(R&D)の予算が著しく増えた。AIを単なる行政の補助手段ではなく、福祉・行政全般を再構成する主な動力にするというメッセージが伝わる。データとデジタル技術を活用してそれぞれに合った福祉を提供し、危険をより早く捉え、行政の効率性まで共に高めるという構想は、急速な高齢化と財政圧迫という現実的な条件において十分に説得力を持つ選択肢でもある。

 しかし、同時に懸念も生じる。AI中心の投資拡大が、統合ケアや老人福祉のようなセーフティネットを相対的に疎かにするのではないかと懸念される。アルゴリズムに依存した意思決定が差別を強化したり、データ収集が脆弱階層に対する過度な監視につながりかねないという指摘も、軽く聞き流すわけにはいかない。技術を前面に打ち出した政策が、ややもすれば人間の尊厳と権利を後回しにしかねないという警告は今なお有効だ。

 今、韓国社会には高齢化と不平等の深刻化、ケア危機、財政圧迫という4つの問題が同時に押し寄せている。従来の福祉国家が築いてきた制度と財政だけでは、この複合危機に対応し切れないという声もますます高まっている。このような背景からAIとデータ技術が福祉の行政と現場に急速に浸透するのは自然な流れかもしれない。だが、まさにこの時点で私たちは問いかけなければならない。AIは福祉を解体する道具になるだろうか、それとも、福祉をより人間らしくする新しい基盤になるだろうか。

 AIは確かに可能性を持っている。危機世帯をより早く発見し、個人の状況に合わせた支援を設計し、デジタルケアや移動・コミュニケーション補助技術を通じて自立を助けることに役立つ。問題は技術そのものではなく、その技術がどんな基準と条件の中で機能するかだ。現場の専門家の判断よりもアルゴリズムの点数と確率が先行し始めれば、福祉は再び「条件を充足した人だけを選別する」制度へと後退する恐れが大きくなる。フランスでは、家族手当基金(CAF)が福祉の不正受給の危険性を点数化する方式で点検の対象を選別しており、この過程で一人親家庭や障害関連の給付受給者などの脆弱集団が不利に標的化されかねない、という懸念が市民社会を中心に高まってきた。児童福祉調査の必要性を計る「危険点数ツール」(AFST)を運用する米国ペンシルベニア州のアラゲニー郡では、貧困・障害と関連した行政データが点数算定に反映され、低所得・障害者家庭が実際の状況と関係なく、より頻繁に監視・調査の対象になり得るという批判が相次いだ。

 このような危険は「抽象的な可能性」にとどまらない。オランダの裁判所は「福祉の不正受給探知システム」(SyRI)が特定の地域を標的にする構造と透明性不足の問題を、人権・私生活侵害と判断し、ブレーキをかけた。「危険点数」が行政の効率を優先して拡張すればするほど、最も脆弱な人々が先に疑われ、先に監視される構造が固着しうるという警告を、私たちはすでに何度も目撃した。このような事例は、AIを活用した「効率」という名目が「正当性」を保障するわけではなく、設計の原則と統制装置がない場合は脆弱な人から先に揺さぶられる可能性があることを警告する。結局、同じAIでもどんなデータを使い、人間の判断をどこまで尊重するかによって、全く違う結果を生む可能性があるのだ。

 そのため、AI福祉国家は技術プロジェクトではなく、制度とガバナンスの問題だ。どんなデータを収集するのか、どこまで活用するのか、何を明確に禁止するのかを法律とルールに明確に刻まなければならない。公共データのインフラは効率ではなく権利を基準に設計しなければならず、民間の技術も公共の統制と責任構造の中で活用する必要がある。何よりも市民と当事者が意思決定の過程に参加するガバナンスが重要だ。技術のルールを少数の専門家と企業が定め、多数が従う構造は持続可能ではない。

 AIは恐怖の対象になることも、新しい連帯のインフラになることもあり得る。その違いを作り出すのは技術の性能ではなく、私たちがどんな原則を選択するかだ。AI時代にも人間の尊厳と権利、関係を守るという社会的約束を国家と地方政府、現場と市民が共に作っていってこそ、AIはさらに人間らしく生きる社会に出ていく心強い土台になるだろう。

//ハンギョレ新聞社
イ・ヨンボム|建国大学対外副総長・世界行政学会副会長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1242187.html韓国語原文入力:2026-01-28 20:08
訳H.J

関連記事