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国家と資本が結託した新たな軍事経済時代を憂慮する

登録:2026-01-21 02:46 修正:2026-01-21 11:12
専門家レポート - 国家主導の経済、資本主義はどこへ?
エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・フアンCEO(右)が昨年4月30日、米ワシントンのホワイトハウスで行われた「米国投資」イベントで発表する様子を、同国のトランプ大統領が見守っている=ワシントン/UPI・聯合ニュース

 米国のトランプ大統領はわずか1年の間に、それ以前の100年間で形成されてきた国際経済・政治秩序を根こそぎ揺るがしている。彼はすべての交易相手国に対して関税戦争を宣布することで任期を開始したかと思えば、自国の軍を送って独立国の大統領を拉致するという、猟奇的な立ち回りを繰り広げた。そんな中、世界は人工知能(AI)などの新技術の発達に歓喜している。各国政府はAI競争に死活をかけて莫大な資源を投入しており、ビックテック企業の株価は天井知らずだ。これらは明らかにこんにちの世界を特徴づける現象だが、互いの関係性が薄くも思える。

 まず関税戦争をみてみよう。トランプのやり方は独特ではあったが、それによって崩壊した自由主義の国際経済秩序は絶対的真理ではない。本来、資本主義は一つの「世界経済」として登場したが、同時に個別の国民国家単位で組織されて動いている。このような二重性に対する洞察はロシア革命に身を投じたブハーリンが発展させたが、実際の歴史においても、資本主義の「世界性」が肥大化する時期と「国民性」が強調される時期が交互に繰り返されてきた。1870年代~1910年代初頭、1980年代~2010年ごろが「グローバル化」の時代だったとすれば、その間の空白期、特に1940年代半ば~1970年代までは国家主導の内実固めと「国民性」が際立った時代だった。

 こうした繰り返しの意味するところは、資本の視点からみると明確になる。19~20世紀の転換期に諸大国は植民地確保をめぐる経済的角逐(帝国主義)を通じて肥え太ってゆき、そのような成長戦略が限界に達した時に第1次世界大戦が起きた。その後、2度の戦争と大不況で疲弊した国を再建し、経済の内実を固める期間がやって来たが、このモデルも1970年代の不況の壁にぶつかって終わりを告げた。資本は再び金融を武器にするとともに世界の開拓に乗り出したが、ここでは前の時代に各国が内的に蓄積した公的資産、そして以前は資本主義の外にあったものの新たに編入された旧社会主義圏などが主な「餌食」となった。近年のグローバル化からの2度目の「後退」は、このモデルの効力の満了を示唆する。実際に世界資本主義は2008年のグローバル金融危機以降、十数年間も長期停滞の沼でもがいているが、この間の通貨政策などの様々な市場中心の解決策は解決策たりえなかった。根本的な次元の突破口が必要なのだ。

 このような背景にあって、コロナ禍は世界経済にとっていくら沈滞してもいい口実となり、そうなることでむしろ世界各国に内部整備の機会を、資本に新たな成長の足がかりを提供するかのようだった。破壊された社会・経済インフラを再建するにしても、新たな技術(AI)と価値体系(エコロジカル)の基盤の上に築こうというわけだ。それは国家の支援なしには不可能で、米国のバイデン政権の「よりよい再建(BBB)」や韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の「韓国版ニューディール」がその例だ。このような内的調整は、かつての米国の「ニューディール」や西欧各国の福祉国家の発達と類似する。しかし上記のような機会は、パンデミックから回復する過程でいつの間にか消え去った。トランプの貿易戦争とそれによる保護主義への回帰は、その機会を奇怪なやり方で復旧しているわけだ。

 しかし各国にとって、グローバル化よりも自国の内実を固める方向へと向かうのは、80年前ほど容易ではない。まず、各国がグローバルな供給と金融のきめの細かい網の中で絡み合っているからだ。最強の大国である米国でさえ、もはや自国中心の発展戦略を自力で駆使するのは難しいほどだ。二つ目に、国内的に変化の支持勢力の動員が難しいからだ。今は戦後復興や反共などの前世紀中盤に社会を凝集した大義が不在で、労組などの社会勢力を代表する力が四分五裂しており、国民の利害関係も複雑多岐になっている。

 それでも国家の主導性は放棄できない。資本が沈滞から脱するためには新たな技術とエコパラダイムの潜在力が爆発しなければならないが、その実現のためには国家の助けが必要不可欠だからだ。代案は何だろうか。現在の新たな国家と資本の同盟はどこに向かっているのか。

 このことで私たちは、近年の経済と軍事の結託に注目しなければならない。かつてそれは「軍産複合体」と呼ばれた。軍産複合体とは、国家の軍事組織と巨大防衛産業、そしてそれを支える政治的利害が結びついて形成された巨大な権力ブロックを指す。それは単なる兵器生産にとどまらず、国家の資源配分の優先順位を定めるとともに、技術革新の方向性を統制する「制度化された戦争経済」の性格を帯びる。かつての冷戦期の軍産複合体は、恒常的な戦時状態を維持することで資本主義の過剰生産問題を解決したうえ、飛躍的な技術発展を遂げた。今、私たちはそのメカニズムの復活を目の当たりにしている。

 すでに世界各地の紛争は、大国が直接介入するかたちで激化している。最近の米国のベネズエラ侵攻は、地政学的秩序が一種の決定的な「敷居」を越えたことを示唆する。米国が「世界の警察」の地位を降りたものだから、あらゆる国が自力救済のために国防に金をつぎ込んでいる。ドイツのような戦犯国ですら、再武装の道に足を踏み入れることが自然に容認される雰囲気だ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、実際に世界の軍事費支出は10年連続で増加し、2024年には史上最高の年間2兆7180億ドルを突破した。マドゥロ大統領拉致直後の8日にトランプ大統領が来年度の国防予算を現在の1.5倍水準の1兆5000億ドルに増額することを要求したのは、偶然ではない。

 軍事概念を拡張すると「安全保障(Security)」になる。だが、こんにちにおいて安全保障は国の内外はもちろん、政治と経済を行ったり来たりしつつ無限に広がっており、米中対立であらわになっているように、AIや半導体のような新技術と密接につながりつつある。軍事、経済、テクノロジーが一つに溶け合うこの時代は、第2次軍産複合体時代と呼んでもよいのではないか。英国ロンドン大学クイーン・メアリー校のエルケ・シュワルツ教授は、米国において2019~2022年の間に軍事技術関連のスタートアップに対するベンチャー資本の投資が倍に膨らんだこと、2021年以降に1300億ドルのベンチャー資本が国防技術分野に投入されたことをあげつつ、このことを「ベンチャー資本・軍・シリコンバレーの連携」と呼んだ。その経済的意義を要約すると、次のようになる。

 第1に、停滞している経済に強力な有効需要を創出する。安全保障という商品の必要性は客観的な定義が難しい。敵の実体が不明確でも大衆が脅威を確信すれば、その敵は実体を持つことになる。AIとデータの覇権で安保概念が広がり、軍の「テックウォッシング」が進み、そして安全保障の社会的受容性が高まる。必要性が高いため、政府と企業が毎年数百兆ウォンを安全保障に投入しても誰も文句を言わない。今の安保競争が後に非生産的な「無駄」だったと判明することになってもだ。

 第2に、国家の積極的な支援の下、企業が公的資源を合法的に私有化する機会となる。技術を実際の生産に用いて利潤を創出することが難しい現実において、安全保障は最も確実で安定した市場となる。安全保障の地位が高まれば高まるほど、市民の血税によって企業の不確実で危険千万な技術開発を補助するという国家の行為は強い正当性を得る。同時に失敗のコストは社会全体が負い、利益は資本が独占するという構造が常態化する。

 第3に、この過程は結果的に技術革新を加速させ、有用な副産物を生む。マリアナ・マッツカートが「国家の成功例」と称賛したiPhoneの核心技術やアポロ計画の成果をみるとよい。実はそれらは、それ自体が国家が経済的な目的で開発を主導した「成功例」だったというより、国防と安全保障という多分に遺憾な「ミッション」を遂行した戦争経済の副産物だった。当面は戦争と統制のために開発されるAI技術が、逆説的に遠い将来に人類に役立つ無害な道具へと変貌するというのは、珍しいことではない。

 これは杞憂(きゆう)だろうか。現在の新技術の展開のあり方は、こうした懸念に実証的な根拠を与える。最終的には、AIは産業現場を革命的に変えるだろうが、雇用減少と労働の解体に市民が反発するため、その実現には相当な時間がかかると予想される。経済学者の多くもAIの「生産性の逆説」に注目しつつ、技術への投資が実際の生産性の向上につながっていないと指摘している。

 一方、AIが最も威力を発揮する分野は、市民に対する監視と統制だ。また、自国の外の敵を相手にするだとか、国家的生存を担保するという大義名分の下では、果敢な技術的実験が安全保障の名の下に躊躇(ちゅうちょ)なく行われるだろう。すでに莫大な水準となっている米国の国防費は、ロッキード・マーティンのような伝統的な軍需企業よりも、パランティアのようなシリコンバレーのテック企業との契約の方に次第に使われるようになるだろう。

 私たちは一時代を風靡(ふうび)した「グローバル資本主義」の理想からは遠ざかる代わりに、国家単位でインフラを再整備し、内部の力量を結集する局面に足を踏み入れつつある。しかしその様相は、国内の社会勢力同士の協約にもとづいた「ニューディール」ではなく、国家と資本の結託を通じた新たな軍事経済というかたちで具体化しつつあるようだ。この過程が国家、特に米国などの大国の政府によって主導されていることが、警戒心を高めている。

キム・ゴンフェ|慶尚大学教授(経済学) (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1240754.html韓国語原文入力:2026-01-20 18:03
訳D.K

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